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【イベントレポート】『日本を支える大企業に聞いてみた。 御社のDX推進、ぶっちゃけどうなの?』-パネルディスカッション(前編)-

2024年5月10日にWeWork神谷町トラストタワー23階で開催されたプライベートイベント「未来を創るDX人材:社会基盤を最適化するDX人材戦略」について、シリーズでレポートをしていきます!最後までお付き合いください。

背景

DXを推進する上で『DX人材』不足は課題の一つとして挙げられています。このイベントでは、「優秀な人材を採用できない」や「育成にコストがかかる」、「育成方法が分からない」という問題の他に、「DX人材不足の問題点」が浮き彫りになりました。
皆さんは、『DX人材』というとどんな人を思い浮かべますか?
その答えを考えながら読み進めて頂けると嬉しいです。

会場からの景色

イベント概要

タイトル:『未来を創るDX人材:社会基盤を最適化するDX人材戦略』
日程:2024年 5月 10日(金)17:00-19:30
場所:WeWork 神谷町トラストタワー 23F
内容:
基調講演1
デジタル庁参事官 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長
須賀 千鶴氏
基調講演2
東京大学未来ビジョン研究センター 客員教授 株式会社ALGO ARTIS 顧問 
西山 圭太氏
ライトニングトーク&パネルディスカッション
株式会社ダイセル 三好 史浩 氏
株式会社日本触媒 大田 晋一 氏
三菱電機株式会社 朝日 宣雄 氏
横河電機株式会社 高山 久 氏
ネットワーキング

本日は『パネルディスカッション』にフォーカスを当て、レポートを展開していきます。パネリストの皆様は、自社のDX推進に関わる方々です。
題して、

パネルディスカッション:日本を支える大企業に聞いてみた。 御社のDX推進、ぶっちゃけどうなの?(前編)

パネリスト4名とモデレーターのご紹介


パネリスト
パネリスト
モデレーター

では、早速『パネルディスカッション(前編)』スタート!

質問1 : DXを進める上で困ったことやチャレンジとは?

西山:DXを厳密に定義することはやめて、みなさんがDXっぽい仕事をされてきた中で、一番困ったことや、いろんな意味でちょっとチャレンジだなと思われたことは何でしょうか?

三好:最初困ったのは、上司にDXをやれと言われたのですが、何をやって欲しいのか分からなかったことです。好きなことをやって良いというのですが、それが良くわからなくって。それで私がやったことは社長が何を考えているのか読み解いていくということでした。

右:質問に答える株式会社ダイセル 三好 史浩氏
左:質問をする西山 圭太氏

大田:一番困っていてどうしようかなと思っているのは、我々は製造業なので工場とか研究とかは、「改善活動」というのがあり、その延長線上でDX、デジタル化みたいなことがあるので、比較的取り組みやすいのですが、本社や営業というのは、そういう経験をしていない人が多いので、この人達の熱をどうやってあげたらいいかなというのが、かれこれ2年やってきて困っています。温度差がどんどん広がっていってるので、どう埋めようかなというのが一番の悩みです。

西山:こんなことを言うのも何ですが、営業って何か改善もしないの?毎日?って思いませんでしたか?

大田:弊社の言い方で言うと、まずモノを売るのがゴールの仕事。その人の仕事の中身をどうこうするっていうのは、売れた後にすることという考え方なんです。
そこをどう変えていくのか、管理部門もそうなんですけど、仕事のやり方を変えようとするムードがあまりないので、そこをどうしようかどうやって火をつけようかなっていうのが今、悩んでいることではあります。

西山:なるほど。ちょっと硬い言葉ですけど、ALGO ARTIS流にいうと、ある種の属人化ですよね。俺流のやり方でやっているんだから、やり方を聞くなという。
朝日さんはどうですか?

朝日:うちの会社だけじゃない話ですが、日本人全般、真面目すぎるのだと思いますね。
何かやろうとするときにルールがないと何もできない。ルールがないのだったら自由にやればいいじゃないかと思うんですけどね。ルールをまず作ってから仕事をしようとしがちです。もしくは、一生懸命類似したケースを探して、無理やりそのルールを適用できるんじゃないかと解釈して対応しようとします。適用するルールがないと何もできない。
適用できるルールがないと責任の所在がはっきりできないので、やらない理由を探し出します。とにかくDXって楽をする技術なので、真面目に仕事をしない人の方が向いています。

西山:それは素晴らしいご意見ですね。でもどうして会社ってそういう人を採用しちゃうんでしょうか。

朝日:おそらく、日本人全体が、そういう教育を受けてきた人が多いのだろうと思います。会社に入るとやっぱり若い頃にこれがルールだと教え込まれるので、私は36年いても染まらなかったのですが(それが自慢でもあるんですけど)、大体が染まっていって、それが当たり前になってしまうのですね。日常生活の中で何も疑問を持たなくなってしまう。

高山:朝日さんと似ているところがあるのですが、日本人は真面目だけど、勉強はしない。インド人が技術的に協力してDXを進めているところはあるのですが、開発などは日本人がやることがあるので、日本人のDX化には課題があります。

西山:今のお話しで勉強しない日本人と言うのは、たとえばどんなことをしないんですか?

高山:例えば、AI、Pythonを勉強することに対して、インド人はそれを経歴書に書けると言うことで前向きです。日本人も経歴書に書けるんですけど、そういう意識ではない。それで例えば自分の給料が上がるとか、プロモーションがあるとか、そういう方向に意識が向かないっていうのが大きいなと思います。

西山:今の話だと、給料を上げたら勉強するってことですか?上がらないから勉強しないんですか?

高山:それも鶏卵のところがあるかもしれないですね。

右:質問に答える横河電機株式会社 高山 久氏
左:三菱電機株式会社 朝日 宣雄氏

質問2: DX推進をする社内で凄いと思う人。その特徴は?


西山:DX人材の定義は一旦忘れて頂いて、みなさんの会社の中で『この人凄いな』『こう言う人がこんな役割を果たしたぜ!』という人を具体的に思い浮かべていただいて、特徴を教えてください。

高山:横河デジタルの社長の鹿子木さん(鹿子木 宏明 Kakonogi Hiroaki)は結構技術者としてもトップクラスの方で、それでビジネスをやろうとしているってところが凄いと思っています。このDXの話というのは技術のことだけではないのですが、技術を理解している人がトップにいると言うのは大きいなと思います。

西山:他の人になくて、鹿子木さんにあることって何かありますか?実例でも良いのですが。

高山:やっぱりデジタルやAIを実装しようとなった時に、一貫してどういう世界観にしたいのか、ビジョンを描けるところでしょうか。

西山:朝日さんはいかがでしょう。

朝日:総じてみんな素晴らしいのですが、一番大事なのは、オープンイノベーションをやりたいという話になったときに、データサイエンティストが大事ですという意見もでますが、同時にドメイン知識を持った人がいないとデータサイエンティストだけでは、分析結果が分からないんですよね。
そうすると、その製品を担当している人と、データを分析する人が上手く話せないと何も起きない。やっぱり話して分かりあえるのが非常に大事です。我々は今、データ分析の部隊をビジネスインテリジェンスと名付けて、人脈から得られる情報も分析に活用しているんです。そうする自然に議論進み、結果的にDXの開発に上手く取り組むことができると思っています。

西山:今せっかく朝日さんも言って頂いたので、付け加えるとDXの質問は2つしかない。一つは「仕事は何をしているのですか?」ともう一つは「デジタルツールは何に使えるんですか?」
その2つの質問をするとなかなか成り立たないのはなぜかっていうと、ドメイン知識は確かに必要なんですが、ドメイン知識を翻訳してくれないと理解できない。相手の知識においてそのまま説明されるなら、本を買って読めばいい話。

今日私が使っている言い方で言うと「デジタルツールって、解き方を解いている」ので、解き方そのものを説明されてもあんまり役に立たない。
問いてるのは確かにそうなんですが。でもその解くために、どうしてそういう解き方をするかっていうことを説明できないと、よく分からないままになってしまう。

もう一つは、これはお互い様で、デジタルやAIエンジニアの専門家もそのツールをそのまま説明されたら、それは別にあなたに聞かなくても良いとなる。仕様書と一緒。
それってもうちょっと言い換えると、まさに課題が解けることに使えるものなのかっていう、多分それだと思うんですよね。
だから、ちょっと勝手に膨らませると、知識が深い人や知識の細かさ、得意ゾーンみたいなものってあんまり期待されていなくて、それは別にそれこそ検索すれば分かるので。

私なりに言うとまさに「言い換え」です。普通は専門語で説明するとこう言うんだけど、もうちょっと骨組みだけを取り出して、例えて言うとこんな感じと言える人がやっぱり必要ですね。
別のものに例えて言い換えるとどうなりますか?ていうのもDXにはすごく必要で、データって結局「言い換えを何回もするからレイヤーになっているのであって、言い替えられないと繋がらないですよ、次に。」このデジタルの非常に大きな特徴だと思います。
大田さんはどうでしょうか?

大田:東京事務所の人間なのですが、課題感や将来のリスクに対して意識を持ってらっしゃる方です。先日、自分の部署のメンバーに対して、「あなた方って、そんな単純作業やるだけの人間になっていいんですか?」「そうならないためにどうしたらいいですか?」と話していました。先ほど朝日さんと西山さんがおっしゃったコミュニケーションをちゃんと取って、伝えたいことを伝えられる人であって、そのためにどうしたらいいですかっていう方策をある程度出してあげる人です。こういう人が増えてくるとうちもだいぶ変わってくるのかなっていうのはすごく感じました。
例えて言う能力とか、もう一つ言うとシステム屋さんが言う言葉を理解して現場に通訳できる人。コミュニケーション能力の高い人ですね。

左:質問に答える株式会社日本触媒 大田 晋一氏

三好:西山さんの話に繋がるなと思うのですが、「シンプルにする人」ですね。よくデジタルツールをいっぱい使い、いかにもデジタル人財ですという人がいますが、実際はいろいろ複雑にしている人がいるんですけど、僕が凄いなと思うのはそういう人じゃなくて、むしろ、物事をシンプルに捉えて、どんどん減らしていく人。そういう人は凄いなと思います。

西山:会社だから仕方ないのですが、DXするとどうなるのかを考えるとき、「お客さんの経験を改善」しようとするんですね。
行政で言うと、市民をどうこうしようとする。その前にやることがあると思っています。つまり、まずは自分たちが便利になっていること。自分たちが働いてる環境が便利にもなってないのに、その先の人も便利にしようってそんな人、普通いないですよね。自分でやったこともないし便利でもないんだけど、その先の人を便利にする人を私は見たことがない。

これ、すごい大事だと思っています。この領域はALGO ARTISが得意だとは思いますが、今まで10時間かけてやっている仕事が、デジタルツールをうまく使うと5%楽になりますという世界観ではないと思うんですよ。
100分の1で終わりましたとか、1ヶ月かけていたものが4分で終わる。その種の話を多分しているはずです。そうしないと、ずっと3%減るものをたくさんやって、結果、残業が増えましたというと、一体何のためにやっているのかよく分からなくなる。

自分たちでデジタルツールを使って自分たちの仕事を「最適化」して便利だなと感じることが、他の人にとってもデジタルを取り入れてみようという大きなきっかけになると思うんですよ。
「最適化」についてどう思いますか?

質問3: 最適化とは?


三好:最適って僕は自分で言った時点で最適化しないと言い聞かせています。
何かの範囲で全体最適とよく言いますけど、これが全体最適であるといった時点で部分最適になっている気がするので、そもそも最適って何なのか?と、ちょっと良く分からなくなるんですよね。なので、最適という議論自体がめちゃくちゃ難しいなというのが私の答えです。

西山:みなさん答えにくそうだなと思うので、今日私が使った言葉で言うと、デジタルツールって基本的にずーっと探索してるんですよ。より良いものがあるのか、ないのかっていうのをずっと探している。すごく狭い範囲だと最適って言ってるんだけど、広げると当然また違う良いものが見つかり、もっと広げると更に新しいものが見つかる。
厳密に言うと「最適化」という言葉は間違っているかもしれないのですが、それを避けるといい言葉が出てこない。より良いってことを言おうとしたときに、わかりやすいから最適化を使っていて、「今までよりちょっと・かなりいいぜ」みたいなものですね。

大田:そういう意味で言うと、 ALGO ARTISの宣伝ではないのですが、弊社がALGO ARTISさんにやっていただいた生産計画を策定するところは、ALGO ARTISのAIを使ってまさに最適化しました。お客さんからどんどん注文が入ってきて、途中で日程を変更することが頻繁に起こるので、その度に生産計画を変えないといけない。
ただ、生産ラインごとに、Aのラインで作れる製品は、例えば1と2です。Bのラインでは2と3ですみたいなことがあるので、その制約状況をいかにクリアしながら一番最適な生産計画を立てるかみたいなところを、職人技でやり続けていたのですが、ALGO ARTISのAIを使うことで、今まで3日4日も掛かっていたものが、30分でできるようになった。そういう意味では、その部分を最適化できているのかなというふうに思ってるんですけどね。

西山:そういえば、先ほどの営業を説得できないお話しがありましたが、この最適化〇〇を数学的に最初に考えた人たちは、「セールスマン問題」と言っていたはずですよ。
要するにお客さんをどうやって効率的に回るといいんだろうという話。ぜひ、営業の人を説得してください。これは「セールスマン問題」で、生産部門でやってくれって言われているのは、元々理屈があってないんですけどって。半分冗談ですが。

『パネルディスカッション(後編)』に続く。

本日はここまで。次回もお見逃しなく。


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