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「タッカーカールソンとの対談に於ける用語の問題」

アレクサンドル・ドゥーギン

タッカー・カールソンへのインタビューは、急いでロシア語に翻訳された為、全てが正確ではありませんでした。全体的には理解可能ですが、いくつかのニュアンスがあります。私はアメリカ人と対話しており、主にアメリカの視聴者に向けて話しをしています。何千ものコメントから判断すると、彼らは私の言っていることを完全に理解しています。

例えば、現代アメリカの政治用語には「woke」「wokeism」のような用語がありますが、これは我々が使用しないものです。これは、LGBT(ロシアでは禁止されている)や批判的人種理論(これも説明が必要ですが、それはまた別の機会に)と異なる立場の人々、国際主義やグローバリズムを問題視し、不法移民やあらゆる移民の保護の必要性に疑問を持つ人々に対して、リベラルたちが直ちに告発するように呼びかける性質のものです。彼らは愛国者や保守派(現代のものも歴史的なものも)を「ファシズム」と非難し、誹謗中傷する必要があります。どうやら、wokeismは今、ロシア正教青年団の若い世代に積極的に受け入れられているようですが、私は彼らに対応しているわけではありません。

その論理は、左翼リベラルが保守派をターゲットにして一連の告発を行い、YouTubeや(ロシアでは禁止されている)Instagramでビデオを作成し、フラッシュモブを組織するなどして、その後に職場での調査、尋問のような偏見を持ったインタビューやオーダーされた記事などによって、最終的には解雇・社会的排斥・ソーシャルネットワークでの検索結果の低下・財務調査・融資の禁止・アカウントの停止・最悪の場合は殺害(本人または家族)に至るまでの一連の「キャンセル」が行われます。これは左翼リベラルが行う恐怖政治の、完全なサイクルです。歴史的人物に対しても同様のことが行われ、その遺産が検閲されたり、禁止されたりします。検索エンジンではクエリのランキングが大幅に低下し、ウィキペディアには削除不可能な誹謗中傷のセクションが追加されます。これにはダンテ、ドストエフスキー、ローリング、聖書(政治的に正しくないと判断された場合)などに影響を受与える可能性があります。

そのため、私が「woke」と発言すると、アメリカではすぐに理解されますが、ロシアでは説明や事例を含む記事を掲載しなければならないかもしれません。そうすることで、ロシアの多くの左翼や左派リベラルは恥じることになるでしょう

(彼らに良心があればの話ですが、それはまだ証明されていません)。

アメリカでは「進歩派」と「保守派」の間で真の戦争が繰り広げられています。この戦いは不平等で、「保守派」は「進歩派」は間違っているが存在する権利があると考えていますが、「進歩派」は全ての「保守派」を「ファシスト」であると烙印を押し、彼らには生存権も自らの考えを持つ権利もないと主張しています。彼らはカール・ポパーの言う「開かれた社会の敵」であり、その社会が破壊される前に消滅させなければならないと考えられています。この場合の「進歩派」とは覚醒とキャンセリングを行う者たちです。「進歩派」の核心にはトロツキストが存在し、それは民主党左翼や、ネオコンになった者たち(例えば、ロバート・ケーガン、ウィリアム・クリストル、ヴィクトリア・ヌーランドなど)によって形成されており、これら「進歩派」の本質はリベラルでグローバリスト的な世界革命とジャコバン恐怖政治の支持者です。

そして、最も定義が難しい言葉である「リベラル」、「liberals」について、現代アメリカの政治用語ではこの言葉が同時に複数の意味を持っています。

1-アメリカの政治システム全体は、資本主義の正当性と優位性を認めることから、リベラリズムと呼ぶことができます。この意味では、アメリカにおける「リベラル」は、左派リベラル(民主党)と右派リベラル(共和党)の両方を含みます。前者は移民の自由、多様なライフスタイルの受容、覚醒主義(wokeism)を支持し、後者はフラットタックスと大企業を支持しています。

2-狭義において、そして二大政党の議論において、「リベラル」と通常称されるのは、「左翼リベラル」のことを指します。これは、woke主義やキャンセルカルチャーを支持し、「進歩的」であると自認する人々です。時には「本物のファシストである彼ら」が「反ファシスト」として振る舞うこともあります。彼らの論理は次の通りです。「ファシズムの疑いを持つ者を事前に強制収容所に送らなければ、彼らが私たちを送ることになる。」このような「リベラル」は、共和党員、特にその保守的な派閥であるトランプ支持者を投獄すべきであり、場合によっては排除すべきだと考えています。そして再び—彼らがまず行動する前に行動を起こすべきです(新しい映画「市民戦争」はこのことについて述べており、アメリカの左翼リベラルの思考形式を正確に表しています)。

3-まったく異なる文脈に於いて、タッカー・カールソン自身のような「リベラル」(これはますます一般的ではありませんが)を「古いリベラル」と呼ぶことができ、それらを区別するために「リバタリアン」という用語が使われることがあります。

彼らは左派ではなく右派のアナーキストによく似ており、「進歩主義者」は、左翼リベラル派自身とは全く異なる方法で「自由主義」を扱います。その為左翼リベラルは、左翼リベラルではない人を「ファシスト」扱いし、「排除」されるべきであると主張します。

リバタリアンのリベラル派は、一律所得税または無所得税を提唱し、州と政府の経済への関与に反対すると共に、武器(憲法修正第2条)の所持と自身が望むことを行い、望むことを言い、望む人の為の「完全かつ無制限の自由」をを支持しています。そのような「古いリベラル派」は「新しいリベラル派」(目覚めた、LGBT、「進歩的」、国際主義者)が連邦政府で権力を掌握し、米国に「企業国家」または「共産主義」を構築すると事を考えていると信じています。

タッカー・カールソンとリベラリズムについて話す際、この用語の3つの意味すべてを考慮する必要があり、更にそのコメント内容から判断すると、アメリカの視聴者は私の話を完全に理解していたようです。もしもっと詳しく説明していたら、タッカー・カールソンは実際にミームのように老け込んでしまったかもしれませんが、ロシアの視聴者に対しては、リベラリズム・その歴史・起源・変異(右派のハイエクから左派のソロスまでの最終段階に至るまで)・"現在のアメリカにおける政治的意味合い"についての講座を設け、その全てに対して説明する必要がありました。リベラリズムは、私たちに何の関係もないことを示す別の講座を開催すると、第一の講座の意味を問う人も出てくるでしょう。私はこれをモスクワ大学の保守研究センター、ツァルグラード研究所、イリイン高等政治学校、数え切れない講義やビデオ、教科書、モノグラフを通じて何度も行ってきました。

比較的にアメリカの視聴者は私の考えに多少なりとも慣れており、私の全面的な中傷キャンペーンでは、グローバリストや左翼リベラルが群がり、時にはトランプを貶めやすくするために、私は「トランプのアドバイザー」と呼ばれることもありました。つまり「進歩主義者」や「覚醒主義者」「リベラル」にとっての私は、世界的な「悪の博士」であり、「世界で最も危険な哲学者」です。
同時に卓越した政治評論家の息子でアメリカ育ちのディミトリー・サイムズ・ジュニアは、私の著作(少なくとも10冊が英語でアメリカで出版されています)を学校で初めて接したと言っています。彼の同級生たちが、床下から「地政学」や「多極世界論」を取り出して反体制文献へのアクセスを自慢したのですが、それが「覚醒した」アフリカ系アメリカ人やレズビアンに気付かれ、彼は避けられない退学処分を受けました。

私はタッカー・カールソンとのインタビューのような形でアメリカ人に話す機会はほとんどなく、特に私たちの大統領、ウラジーミル・プーチンがこの世界一のジャーナリストに行った歴史的で驚異的なインタビューの後に、私にはそのような場所がありませんでした。グローバリズムを標榜するメディアは、自分たちに有利な内容のみを放送し、私が述べたことは彼らにとって決して有益ではないため、彼らは私の名を騙り作り話やばかげたことを言っています。また、私が時折出演するアメリカの代替メディアでは、アレックス・ジョーンズやラリー・ジョンソンなどの、独立精神旺盛なジャーナリスト達と同様に、広範囲に報道を行うことがなく、自ら半合法的な状態です。彼と彼の番組は例外であり、タッカー・カールソンの番組は依然としてアメリカの主流派を形成しています。彼の視点は「進歩主義者」や「覚醒者」と「リベラル」・「反ファシスト」と称する「ファシスト」的な支配層と完全に対立しています。


翻訳:林田一博

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