なぜ花粉症の薬は、発症前から服用した方が良いのか?

花粉症の薬(抗ヒスタミン剤)は、発症してから服用を開始するのではなく、発症前から服用を開始した方が効果的とされています。
その理由について解説します。

一般的に、受容体というものは、アゴニストが結合してはじめて、シグナル伝達が生じ,情報が伝わるものと考えられいます。
しかしながら、ヒスタミン受容体の場合、アゴニストであるヒスタミンが存在しなくても、ヒスタミン受容体が多く発現している状況下では、反応が伝わることが明らかとなっています。
このように、ヒスタミン存在していないにもかかわらず、ヒスタミン受容体が活性化する状態を「構成的活性」と言います。

そして、抗ヒスタミン剤は、ヒスタミン受容体の構成的活性化状態では,インバース・アゴニストとして薬理作用を発揮します。
インバース・アゴニストとは、受容体に作動薬と同様に結合するのですが、作動薬とは反対の作用を及ぼす医薬品の総称です。
遮断薬は受容体に結合するが何の作用も及ぼさないことから、インバース・アゴニストとは区別されます。
このように構成的活性化状態において、抗ヒスタミン剤はヒスタミン受容体を活性化状態から非活性化状態へ抑制するのです。

アレルギー状態の人は肥満細胞からのヒスタミン遊離がなくても反応が伝わります。
そのため,花粉症シーズン前に抗ヒスタミン剤を投与する初期療法は、ヒスタミン作用の直接の遮断ではなく,構成的活性の抑制によるアレルギー反応抑制を期待して行われているのです。
このような観点からも,非鎮静性抗ヒスタミン薬は1カ月単位の長期使用が望ましいとされています。

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