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花相の読書紀行№42『無明の蝶』

古書店に潜む日常の恐怖

【無明の蝶】/出久根達郎
<あらすじ>
蔵書を値踏みする商売は、書物を愛した人の精神と人生の裏模様まで見透かすことになる…。閑を売っている古書店主の周囲に集まるのは、贋作者やホモなど奇妙な人びとと、棟方志功の肉筆や得体の知れない猫。不思議な味わいを達意の文章で織り出して一躍注目された、古書店主兼直木賞作家の、傑作小説集。

★感想
期待無く手にした本が実はめちゃくちゃ面白かったとき、すごく得した気分になり幸福感に満たされるのが単純な私の性格です。
今回がまさにそれでした。
主人公の古書店主が、店客たちと織りなす人間模様を描いた七つの短編は、会社のお昼休みや家事仕事の合間に読める程よい長さ‥‥が、皆さん侮ってはいけません。そこには日常に潜む不思議が、落語を聴くように楽しめます。
起承転結の中にドキリとさせる文章の運びが巧みで、犯罪小説やホラー小説でもないのに、何故かゆるりと背筋が寒くなる恐怖があります。
特に“四人め”は、2019年のドラマ「あなたの番です」に出てくるストーカーを思わせ、人間の思い込みって怖~。


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