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花相の読書紀行№.107『アキレウスの背中』

アキレウスの背中、君は見えたか?

【アキレウスの背中】/長浦 京
<あらすじ>
公営ギャンブル対象のマラソンレースで、世界記録を狙うトップランナーに脅迫状が!
国際テロリスト集団が、襲撃を仕掛けてきた。
標的は日本人最速ランナーと、ランニングギアの開発をめぐる機密情報。
警視庁は極秘に、特別編成の組織横断チームMITを立ち上げた。
MITを率いる女性刑事は、ランナーを守れるか?
直木賞候補作『アンダードッグス』の著者による圧巻のノンストップ・サスペンス。

★感想
近未来の日本の起こる国際テロを描いていますが、そこにはスポーツを利用した国際的な公営ギャンブルの利権、加速する競技用装具の開発競争、実際に起こると思わせるくらい迫真に迫った内容でした。

国際テロ集団と対峙するのは、警視庁特別チームMIT、そして生え抜きのエリート刑事たちを率いるのが主人公の若き女刑事“下水流悠宇”。
実に生身の人間として描きながら、時として見せる無鉄砲さに芯の強さと、優しさを持たせています。
これまで様々な女性刑事ものを読みましたが、フェンシングのトップ選手の過去を持ち、それが故に足に障害を抱えている、実は日本舞踊の師範でもあると言うのは初めてでした。
とっても魅力的なヒロインです。
 
表題にある“アキレウス”は、その名の通りギリシャ神話に登場する「駿足のアキレウス」で、踵のアキレス腱の名称は、皆さんもご承知の通りと思います。
日本が世界で初めて国際的な公営ギャンブルを行うための国際マラソン、そのアキレス腱がトップランナー“嶺川蒼”です。
 
マラソンのトップランナーが、己の限界粋を超えたときに見えると言われる“アキレウスの背中”。狙われたトップランナー“嶺川蒼”と主人公の関わりの中、そしてラストの展開で、表題の意味がもう一つ分かります。
 
これ映画化されても良いかもしれませんね。

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