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【イベントレポート】エネルギーの未来〜日本の動向とトレンド〜

こんにちは、Plug and Play Japan Energy Program Managerのアルダウシです。

先日開催されたEnergyプログラムのIndustry eventについてご紹介いたします。2021年6月24日に「エネルギーの未来〜日本の動向とトレンド〜」をテーマに、基調講演及びパネルディスカッション形式の招待制イベントを実施し、約85名の企業やスタートアップの方々にご参加いただきました。ご視聴いただきました皆様、ありがとうございました。

背景

前回のNoteではEnergyプログラムについてご紹介いたしました。

Energyプログラムでは定期的にテーマ別のイベントを開催していきます。日本のエネルギー業界でイノベーションを活発化させるためには、まず現状を認識することが重要であるため、本イベントは、エネルギー業界での取り組み状況、課題、規制について意見/情報の共有をおこない、そしてこれから期待される取り組みや出てくるトレンドについてのインサイトをお届けするという目的で開催しました。

イベント登壇者

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本イベントでは、4名のエキスパートをお招きしました。エネルギー・環境政策に幅広く提言活動をおこなっている竹内純子氏、環境エネルギー分野に特化したVCのパイオニアである河村修一郎氏、エネルギー領域イノベーションの交流・普及を支援している岩田紘宜氏、そしてエネルギーの規制などに詳しいスタートアップEnerbankのCEO村中健一氏という、豪華なゲストにご登壇いただきました。また、パネルのモデレーターはEnergyプログラムのVenture Analystである松谷翼がつとめました。

基調講演セッション

基調講演セッションでは、竹内純子氏から「エネルギースタートアップを取り巻く日本の現状と期待される取り組み」というテーマについてお話いただきました。

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画像:エネルギースタートアップの課題意識に関するスライド資料(イベントより一部抜粋)

日本のエネルギー業界は、多種多様なプレーヤーの協創による分散型産業モデル(Utility 3.0)に変化していく方向にあり、エネルギースタートアップに対する期待が高まっています。しかし現状エネルギー領域におけるスタートアップ・エコシステムは成熟しておらず、IPOするスタートアップや起業家が少ない状況です。その要因の一つは、VCやアナリスト等のプレーヤーの数が依然として少ない(限定的なエコシステム)ことが挙げられます。エネルギー業界を変えていくためには、エコシステムを広げることが必要不可欠で、プレーヤーである私達も実践者として自らを変え続けて、新しいプレーヤー(スタートアップ/起業家)を誘い込むことが行動範囲の一つだ、と述べられました。

パネルセッション

Question 1:現在日本のエネルギースタートアップがビジネス展開をするときに、規制はどれぐらいネックになっていますか?

村中:エネルギー分野では、誰でもビジネスを考えられるかというと、やっていいこととやってはいけないことを区別するのに知識がないと、やはりできないです。考えたサービスがルールや規制の範囲に当てはまるか分からない、業界の人たちとのコミュニケーションの場になかなか入れない、といった業界特有の課題があると思います。

Question 2:これまでどのように規制と付き合ってきたのか、また今後のビジネス展開における規制とのかかわり方について教えてください。

村中:コミュニケーションが大事だと考えています。より最新の情報収集をするために中心的なプレイヤーと会話をさせていただいたり、特に最近検討会というのがアップデートされていくのでそのようなところを追いかけたりしながら自分のビジネスに落としていく、というようなコミュニケーションをしています。

河村:短期的には細かい規制ルールを理解してそれを乗り越えることがエネルギー業界のスタートアップにとって必要ですが、長期的に見たときには多分ルールもどんどん変わっていくと思います。なのでやはりルールがあってそこから商売ができるというよりは、最終的にお客さんのニーズがどのようになっていてどのような市場ができて、それに対応するルールがどのように変わっていくだろうかというところを見ていかないといけないと思います。また、日本は海外と比較すると、マーケット背景やニーズ背景が違うので、日本に合ったルールが徐々に出来上がって変わっていくと考えた方が良いと思います。海外と同じような商売ができるのか、日本独自の商売があるのか、よく見極めていくのが大切なのかなと思います。

Question 3:規制に準じてスタートアップが出てくるのか、それとも、新しいスタートアップが出てきてそこから規制が変わっていくのか、これから日本はどのような流れになると思いますか。

竹内:ケースバイケースです。規制には規制の意味があって、これまでのシステムを守るためにあるので、新しいテクノロジーやソリューションがどれほど社会に価値を提供できるか、どれぐらいのスケール感とスピード感ができるのか次第で変わると思います。難しいところでもありますし、スタートアップにサポート役やガイド役ができることが必要です。規制だけでなく、日本では情報開示がもっと進むといいと思います。スタートアップが必要な情報に対するアクセスが広がると、ビジネスに関する意思決定を容易に実行できるようになると思います。

岩田:一般論として、特にエネルギービジネスというのはその安全性・信頼性を要求される面で非常に政策の影響が大きく、差別化も難しい特殊性のあるビジネスかつ資本集約的(キャピタルインテンシブ)なビジネスだと思っています。そういった面で海外と比較してみると、海外のスタートアップはニーズ起点のビジネスから政策が変わるというケースは実はあまりなく、どっちかというと政策起点のビジネスが生まれているというようなケースが多い気がしています。海外エネルギースタートアップから見ると、日本の市場は魅力的に映っていて、今日いらっしゃる大手企業と一緒にうまく市場参入するケースもこれから出てくるかなと思っています。

Question 4:日本のエネルギー業界におけるオープンイノベーションの動向についてお話いただけますか。

岩田:オープンイノベーションのイベントを通じて、やはりエネルギービジネス全体の上流の資源のところから下流の販売のところまで、エネルギーインフラをスタートアップが全部やるのは比較的難しいのかなと思っています。そういう意味では、例えばVPPシステムの領域やハード機器等、ある程度尖った要素を提供するスタートアップが大手企業と一緒に組んで日本での展開を目指すケースが多いと思っています。単なるベンダーではなく互いにwin-winのビジネスを創出するケースが最近の動向かなと思っています。

Question 5:スタートアップと大手企業の連携について、課題だと感じることがあれば教えてください。

村中:竹内さんのプレゼンテーション*の中にもあったんですけど、「エネルギーwithX」の世界をつくっていくっていうのが非常に脱炭素と相性がいいなと思いました。これまでのエネルギーセクターでは業界の中でのシェア争いが中心だったかと思いますが、脱炭素は産業全体もしくは国家戦略としてやっていかなければいけないということになっています。業界の大手企業が他の領域のテクノロジースタートアップと組むという掛け算を考えていくと思いますし、我々みたいな業界側のスタートアップも業界外の大手企業と「withX」をつくることを今後チャレンジしていきたいなと思っています。例えば、不動産、金融、自動車等の業界の方とテクノロジーベースで会話していくというところにチャレンジしていけるんじゃないかなと思っています。

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*画像:「エネルギーwithX」の世界に関するスライド資料(イベントより一部抜粋)

河村:連携は結構難しいですね。スタートアップ側が大手企業にお願いして寄っていくみたいなケースは実はあまりうまくいっていないです。逆に、大企業がスタートアップ側に寄っていくぐらい、ものすごくニッチでいいからこの分野なら絶対誰にも負けないというスタートアップ、この分野でハートをつかむようなテクノロジーを持っているスタートアップが多分一番上手くいった例です。エネルギーは結構資金力が必要になってくるので、シグニフィカント・マイノリティで資金調達ができた信用力のあるスタートアップであれば前にうまく進んでいけると思います。

竹内:大手企業としてはスタートアップが存分に暴れられるだけのフィールドを提供する・守ってあげることが必要です。河村さんも出資する側として非常に難しい立場だと思いますが、かなりスタートアップサイドに立っていろいろものを見たりされているんじゃないかなと推察いたします。

Question 6:今後注目されるエネルギースタートアップのトレンドについてお聞かせください。

岩田:エネルギー以外の文脈も含めてどうすれば脱炭素に貢献できるか、かなりダイナミックに大きく変わっていくかと思います。今年から来年にかけて大きい動きとして「climatetech・気候変動」みたいところはより盛り上がってくるんじゃないかなと思っております。

河村:再生可能エネルギーをみんなでありとあらゆるところで作っていかないといけないっていうのは目先の事業として出てくると思いますね。自家消費型も普及しつつあるのでそこからのコーポレートPPAみたいな流れも出てきているように思います。これらが復旧すればするほど、Utility3.0の世界に一歩近づくと思います。

村中:色々なプレイヤーが出てきますが、海外ではカーボンオフセットのようなところが本当にデータやデジタル技術の面からこのマーケットを攻めています。インターネットプレイヤーとか小売とかECとか、APIをつないで商品をカーボンオフセットにした状態で購入できるシンプルな購買システムみたいな、あまり業界の今までの文脈にはまらない新機能や、いろんなパターンが出てくると面白いかなと思っています。

竹内:最近いろいろなエネルギー環境周りのスタートアップの皆さんとお話する機会が多いんですけど、強烈な社会課題意識を持って起業されている方が非常に多いですね。ただ、徹底的に悩んでちゃんと価値を可視化した上で消費者に提供しなければいけないと考えるとき、エネルギーだけだとコスト競争になってしまいます。やはり他の産業との掛け算を悩み抜いてビジネスモデルにしたところに解があるんだろうなと思うので、一緒に悩ませていただければなと思っています。

最後に

最後に、登壇者のみなさまから一言コメントをいただきました。

竹内:エネルギーは非常に難しさがありますが、それだけに意義を感じて関心を持ってくださる人が増えればいいなと思います。

河村:スタートアップを起業して頑張っておられる方が一人でも多く出てくるようにPlug and Playに大きく期待していますし、EEIともコラボしていければと思います。

村中:エネルギー領域は長期目線で戦っていかなければいけないので、その覚悟としぶとい粘り強さが重要かと思います。今後色々業界の変動が出てくると思いますが、スタートアップとして折れずに頑張っていきたいと思います。

岩田:Energy Tech Meetupもスタートアップや大企業の参加者も増えてきているので、Plug and Playと本日参加者の皆様とも一緒にエネルギー業界を盛り上げて、イノベーションを起こしていきたいと思います。

Special Thanks

Special thanks to:
・竹内純子 氏
国際環境経済研究所理事/U3InnovationsLLC共同創業者・代表取締役

・岩田紘宜 氏
Energy Tech Meetup - Communication Director

・河村修一郎 氏
株式会社環境エネルギー投資 代表取締役社長

・村中健一 氏
株式会社 エナーバンク 代表取締役

・イベントの準備/運営にご尽力いただいた方々

今後も、エネルギー業界を盛り上げるためにこのようなテーマ別のイベントを開催していく予定ですので、ぜひお楽しみに!

Summitのご案内

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Tokyo 9/2 - 9/3, Kyoto 9/14に、3ヶ月間のアクセラレータープログラムの成果を発表する場、Summitを開催いたします。Energyプログラムは9/3 12:00-14:30の枠となりますので、ぜひお見逃しなく!

Summit 無料招待枠への申し込み: こちら

登壇スタートアップ等の詳細:こちら

参加登録:こちら

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