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野村證券のエリートから、投資家と向き合い続けるCFOへ━━仕掛けるは、唯一無二のスタートアップファイナンス

「ペットは大切な家族」。そう考える人が増える一方で、獣医療の現場には課題が山積しています。医療の質の向上、獣医師不足、デジタル化の遅れ......そうした課題に真正面から立ち向かい、ペットとオーナーの幸せな未来を実現しようとしているのが、日本とアジア諸国で事業を展開するA'ALDA Pte Ltd,.(以下、A'ALDA。読み方、アルダ)です。

A'ALDAで、CFO(最高財務責任者)を務めるのが大沼篤。野村證券で15年のキャリアを積んだ後、2020年にA'ALDAに参画しました。A'ALDAのCEOを務める奥田昌道も、一時期、野村證券に在籍していたことから縁があります。「奥田の事業構想の先見性に惹かれたのはもちろん、何よりもペットと人を幸せにするという志の高さに共感した」と大沼。

大沼自身にとって初のCFOのポジションでしたが、持ち前の誠実さと行動力を武器に、難しいと思われた資金調達の壁をクリア。大企業との事業提携の可能性も視野に入れ、トップ営業に余念がありません。ただ、規模の拡大だけを目的化するのではなく、あくまでミッションの実現が原動力になるのです。

A'ALDAという企業への期待を、「投資」という形で結実させてきた大沼が、その魅力を語ります。

私のモットーは「泣けるほどの熱い人生を送ること」

私は以前、野村證券で15年間、営業に携わってきました。常に競合他社やライバルがいる中で、一番になるために全力を尽くす。そんな気概を持って仕事に励んでいました。“The Third Door”という言葉があります。これは他の人が開けられないようなドアを開けていこうという志のもと、やるからにはトップを目指す。そんなマインドを大切にしてきました。

私自身のバックグラウンドをお話しすると、幼少期をアメリカのロサンゼルスで過ごしました。ロスはアメリカでも特徴的なエリアで、「人種のるつぼ」ともいわれますが、オープンマインドで多様性を受け入れる文化があります。ここで育った経験は、後にA'ALDAで働く上でも活きています。

もともとCEOの奥田とは野村證券時代の同じチームで、私がチームリーダー、彼が新人という関係でした。「なぜ元部下のもとで働けるのか」とよく聞かれるのですが、私はそういったことは全く気にしません。年齢も国籍も性別も関係ない。ただただ、優秀な人材と一緒に働きたい。その一心でA'ALDAの門を叩きました。

私自身、学生時代も社会人になってからも、スポーツに打ち込んできました。特にラクロスには社会人になってからもずっと関わり、今でも大きな存在です。学生時代の経験が示すように、私のモットーは「泣けるほどの熱い人生を送ること」。

学生時代・卒業後もスポーツに情熱的に打ち込む大沼

実際、野村證券に就職する際にもリクルーターに「泣けるような熱い人生を送れますか?」と質問したものです。当時の採用担当から「お前なら絶対にうちで活躍できる。顧客からも好かれるはずだ」と太鼓判を押されたことを覚えています。可能性を感じたあの瞬間の高揚感は、今も忘れられません。

だからこそ、A'ALDAでの採用面接でも同じことを伝えるようにしています。自信のある子もいれば、ない子もいる。でも、誰しも無限の可能性を秘めている。「自分で自分の可能性を限定するな。とんでもない世界が待っているかもしれない。そんな世界を一緒に作っていこう」と。

振り返れば、私の人生も紆余曲折の連続でした。入社2年目に最愛の母を亡くし、人生の目標を完全に見失ってしまった時期もありました。でも、だからこそ「このまま終わるのは嫌だ」と奮起できたのだと思います。「やらないで後悔するぐらいなら、思い切ってチャレンジしよう」というマインドだけは持ち続けています。

自身の可能性を、再び拡げるためのキャリアチェンジ

そんなマインドもあって、自分の人生を自分でコントロールしたいと考えていました。野村證券からA'ALDAへ転身したのも、社内でキャリアのステップを踏むほどに、反比例するように自分自身のオポチュニティや可能性が限定的になっていくのを感じていたからです。

「会社員としては順調にきているかもしれない。ただ、このままでは自分の市場価値自体は下がってしまうのでは」と30代に入った時から危機感を覚えていました。証券業界自体も変革期です。年々新規企業が参入し、多くの商品・サービスの手数料無料化の波が押し寄せ、差別化が難しくなっています。同時に国内外の資本移動の規制強化がされており、自分が想像していた以上にローカルビジネス化が進んでいました。

野村證券時代の大沼       

そんな時に、当時25歳だった奥田から声をかけてもらいました。最初は、ペットよりも「インド」に惹かれましたね。インドは人口が多く、平均年齢も若く、IT産業も盛ん。将来は世界一のマーケットになる可能性を秘めています。ペット市場の将来性も高いが、比較可能な競合他社も見当たらない空白地帯。リスクはあるけれど、アップサイドも大きい。奥田の構想は面白かったし、事業に投資価値がある。証券マンの目線から見てもとても魅力的に映りました。

奥田からは投資価値について色々と説明を受けましたが、私が感心したのは、その戦略の裏付けとなるリサーチの深さでした。私は勢いでいくタイプですが、奥田は違う。勝ち筋が見えるまで徹底的に調べ、納得してから全力で実行する。そのアプローチは私の共感を呼びました。それこそ、4年後にインドの首相に20代の若者である彼が面会をしている姿にも心打たれるものがありました。

正直、奥田が野村證券を3ヶ月で辞めたことについては、当時あまり印象に残っていませんでした。でも、退職後に創業時のメンバーとして参画したPECO社を一気に1,000万人級のペットメディアにスケールさせた姿を見て、わずか3年でこれほどまでに成長するのか、と衝撃を受けたんですよね。スタートアップの世界では、そんな急成長があり得るんだと。投資家との交渉の場で見せる姿は、以前とは比べ物にならないほど頼もしく、わずか数年でここまで「戦闘能力」を身につけたのかと感心させられました。

最初はA'ALDAへ個人的に出資するだけでもいいか、と考えていました。でも奥田は、私にCFOになってほしいと言ってくれたんです。ベンチャーファイナンスは難しい領域で、金融のプロとしての知見が欠かせません。私なら人脈もありますし、「経験がなくてもアジャストできる可能性がある」と奥田は言いました。能力やスキルよりも、誠実さと全力で頑張る姿勢を評価してくれました。投資家と対等に渡り合え、自分たちの理想を実現できる資金調達ができるはずだと。

日本の金融機関経験者で、実際のベンチャーファイナンスに関わった経験のある人間、そして創業から大成功まで導いた人間は、意外と少ないという事実もわかってきました。私個人としても、CFOとしてA'ALDAに参画すれば、将来のキャリアの選択肢も広がるはずだと考えました。

 ワクワクこそが投資の原動力。A'ALDAが目指す「共感の輪」

現在、A'ALDAには多くの国内外を代表する企業の創業者や経営者、並びに優良企業の株主がいます。ベンチャー企業の中では日本屈指の株主応援団であり、唯一無二だと自負しています。今ではこれだけ多くの方にご支援していただいていますが、創業まもないころはかなり資金調達で苦戦していました。ベンチャーキャピタルに相談することが一般的なスタートアップにとって定石ですが、私たちが当初ターゲットにしたのは、長期的な目線で投資いただける個人投資家の方々でした。

しかし、想像以上に厳しい戦いでした。起業した直後に非常事態宣言・ロックダウンと世界的に大混乱した状態が長く続きました。コロナ渦で9週間連続、ゼロ回答が続いた時期がありました。それでも何とか多くのチャンスをいただきましたが、想像を絶する世界的な不透明感からそのほとんどから断られつづけ、資金調達には途方もない労力を要しました。

あまり人には見せていませんでしたが内心、何回も心が折れそうになりました。

転機が訪れたのは、ある投資家候補から1億円の出資を得られた時でした。それまで100万円の出資を得るのも一苦労だったことを考えると、信じられない金額です。

「なぜうちに投資してくれるのですか?私達は安くないし、時間がかかる戦いになります。それでも本当に良いんですか?」と尋ねると、「こういう企業を待っていたんだ」という答えが返ってきました。事業の将来性はもちろん、圧倒的なスケール感を評価してくれたのです。

「発想が日本国内に留まっていて、ささやかなIPOを目指すのはだめ。対してA'ALDAは、グローバルな市場を見据え、思い切りのいい挑戦をしている。そんな君達を今、この環境だからこそ応援したい。長く時間がかかってもいい、大きくなる事を目指して欲しい。君たちが創る世界を見てみたいんだ」とその方はおっしゃいました。

その時、人目はばからず涙を流したことは、今でも鮮明に覚えています。

こうした経験から学んだのは、ベンチャー投資において重要なのは「ワクワク」だということです。だからこそ私も、「前例のない挑戦をしているからこそ面白い」と共感してくれる投資家を探すようにしています。リスクを懸念するのではなく、実現した暁にはどんな世界が待っているのか、そのワクワク感を一緒に味わってくれる人を大切にしているのです。

そして創業以来、苦しい時には、数え切れない程、応援団である株主やアドバイザーの方々に支えてきていただきました。何でここまでしてくれるのだろう?と思うぐらい熱い方々ばかりです。今、我々がここまで来れたのもその方々のおかげであると言っても過言ではありません。だからこそ必ず大きく成長して、結果と感動で恩返しをしたいと強く思っています。

2020年創業時、タイのルーフトップバーで語り合うメンバー

これは採用でも同じことが言えます。奥田もよく言っていますが、A'ALDAでは「論破も説得もしない」というのがモットーの一つ。無理に口説いてでも入社してもらうよりも、私たちのビジョンに心から共感し、ワクワクしてくれる人材を求めているのです。

とはいえ、ここまで聞くと奥田はカッコよすぎるかもしれません(笑)。実は彼、投資を断られるのが大嫌いなんです(笑)。口では「論破しない」と言いつつ、実際の投資家対応のフロント部分は、ほぼ私が対応してきました。「社長が来ないと決まらないだろう!」とよく奥田に文句を言わせてもらっていた時期もあります。

でも、そこは奥田らしいといえば、らしいのかもしれません。「CFOは社長の代わりにクロージングまでできるレベルじゃないと価値がない」というのは、ある意味で正論です。結果として、泥臭い仕事を数多くこなす中で私自身の「戦闘能力」も大きく上がりましたし、奥田の工数を減らすことで、他社にはない強みにもなっているのかなと思います。

巨大な動物病院グループをM&Aせよ!2022年、ゲームチェンジャーとなる勝負

A'ALDAにとっての大きな転機となったエピソードをお話ししましょう。2022年8月、売上がまだ数億円だった時期に、日本最大規模の動物病院グループからM&Aの話が舞い込んだのです。日本に33院、ベトナムに2院を展開する業界大手。もしM&Aが実現すれば、売上は一気に数十億円規模にジャンプアップし、店舗数も日本一になる。それだけの大チャンスでした。

そのディールには賛否両論様々な意見が集められていましたが、最終的にはCEOの奥田が「絶対に行くべきだ。大沼さんが資金調達を成功させるはず。いけますよね(笑)?」と意思決定を下しました。

ただ、数か月後に過去最大の資金を用意しなければならず、2022年に世界的なベンチャーファイナンスバブルが弾けた直後、ファイナンスには大苦戦が予想されました。「逃したら次のチャンスは巡ってこない」という覚悟を持って臨みましたが、プレッシャーは正直ありましたね。

その際、ご紹介されたあるプロの投資家の方からは、「絶対に無理だよ。このベンチャー不況の中ではあまりにも無謀すぎる。君達の募集株価を遥かに大きく下げて、プロのベンチャーキャピタルを入れない限り無理だね。厳しい事を言うと、君みたいなアマチュアCFOでは一層、無理だからプロの経営者を雇った方がいいよ」と言われたのをハッキリと覚えています。これには闘志が燃えましたね(笑)。

この頃、よく面談時以外はサングラスをかけていたんです。誰かと目が合うとそれだけエネルギーが吸われてしまう感じがして……思い出してもヒリヒリするような日々でした。

結果的に、ギリギリのタイミングにはなりましたが、無事に大型資金調達を達成でき、M&Aを成立させることができました。

そしてその舞台裏には、当社のコーポレート責任者の会計士兼獣医師の長尾やM&A責任者の田中率いるチームの大活躍や、金融機関のサポートがありました。

シンガポール籍ベンチャーである我々に対してほとんどの大手金融機関からは様々な理由でNO/NGとお断りをいただきました。しかし、みずほ銀行さんだけは異例となるようなベンチャーへの大型LBOファイナンスを実現いただきました。我々をご担当いただいた方は25歳の若手行員さんでした。彼やそのチームの熱意が巨大金融機関を動かしてくれたのでしょう。

自分達の夢と挑戦に対して全力で応援して下さる方々に結果と感動で恩返しをしたい、そう改めて決意する事例となりました。

このM&Aを機に、A'ALDAを取り巻く環境は一変しました。他の動物病院グループからもM&Aの話が舞い込むようになったことに加え、「戦略的に協業したい」と、本気でA'ALDAの将来性を評価してくれる企業が現れはじめたのです。

事業面でも、まさにゲームチェンジャーとなる出来事でした。2024年1月からは、これまで地道に開発を進めてきたテクノロジー事業も本格始動。優秀な人材の採用も加速し、新たな局面を迎えています。

このディールで学んだ事は、どれだけ世間一般的にベンチャーについて綺麗な形で書かれていたり、評論をする人がいたとしても、実際の現場は恥ずかしいぐらい泥臭い。一番大切な事は、「自分で自分の未来を切り開くんだ、という強い意志を持てるかどうか。そして、絶対に最後まで諦めずに全力を尽くしてやり切れるかどうか」という事でした。

業界最大手の一角、野村不動産との資本業務提携調印式  

大型M&Aによって描けるようになった、3つの成長ストーリー

日本最大規模の動物病院グループのM&A以降、私たちのエクイティストーリーは力強くなり、そして実現性を増しています。

1つ目は、アジアNo.1の動物病院グループの形成です。日本だけでなく海外でも、スターバックスのようにリアルの病院を広げていく。特に日本では、85%以上の動物病院が1-2人以下の獣医師で経営していると言われ、過剰労働や採用難で大きく課題を抱える環境下の中、今後10年で1万近い動物病院が事業承継の問題を抱えると言われています。

海外に目を向ければ、アメリカの動物病院チェーンが1兆円で買収された事例もあります。誇張表現だと思われがちですが、動物病院への投資はすでにグローバルな競争になっている。そして日本とアジアには、まだこうした大型のプレイヤーが不在です。私たちはこの地域で「グローバル」「デジタル」「グループ」をキーワードにアジアNo.1のポジションを確立したいのです。

今後、熱意ある優秀な獣医師のメンバー達と共に日本を中心にロールアップを加速させ、5年後にアジアで200店舗以上の展開を目指します。

2つ目は、デジタル領域の強化です。断片化・アナログ化されているこの業界において今後、アジアNo.1の動物病院向け電子カルテ(All-In-One SaaS)の展開と、ペットオーナー向けPHR(Personal Health Record)の展開を目指しています。

我々の強みの一つとして、アジア最大規模の動物病院グループを経営しながら、共同創業者のCOO権がインドで創り上げた数十人を超える自社エンジニアチームがいることです。このリアルな病院グループ基盤とIT開発基盤を持つ企業は世界的に見ても唯一無二の存在です。

今後5年間で5,000病院へのサービス導入とARPU(年間売上金額)の最大化を目指し、更には電子カルテから取得できるデータを基に、商品開発・プロモーションが実施できるプラットフォームを構築していきます。

そして3つ目として、共に世界を変えるようなパートナーとの出会いです。世界を大きく変える為には、自社単独では難しく、世界的大企業との協業・共創は欠かせません。現在すでに多くの世界的大企業との協議が開始しており、我々が将来的に得られるであろうアジア全域のペットヘルスケアデータやプラットフォーム経済圏について強い関心を持っていただいています。

そして何よりも大切なのは、ここから5〜10年後の世界を劇的に変えていく為に、自身の大企業でのキャリアを賭けて共に戦ってくれる、大企業のネクストジェネレーション社員達の存在です。その彼らと夢を語り合いながら、巨大企業の経営トップも巻き込む。そんな「大企業ハック」とも呼べる日々を、私たちは心から楽しんでいます。

彼は今日も情熱的に投資家と向き合い続ける

ペットと人の幸せのために──それがA'ALDAの存在意義

CFOの立場としてさまざまなビジネス面からアルダをご紹介しましたが、A'ALDAの魅力はそれだけでは語れません。何よりも「ペットと共に幸せに暮らせる世界に。家族の一員から社会の一員へ」というビジョンの尊さは代え難いものがある。これこそ、A'ALDAの一丁目一番地です。

事業が成長すればするほど、より多くのペットとその飼い主を幸せにできる。それがA'ALDAのビジネスの本質です。私自身、この会社を選んだ大きな理由の一つでもあります。あくまでもペットとオーナー、そして獣医療従事者の幸せを追求する会社。こんなにピュアな志を持つ企業は、そうそうないのではないでしょうか。

誰もが見て「素晴らしいビジネスをしている」と思えるような業種は限られています。しかもそれが、生命を預かるヘルスケア領域だと考えると、その希少性はより際立つはず。
もちろん金銭的なリターンも魅力ですが、それ以上に大きいのは「ペットを幸せにしている」という感覚。そんな非金銭的な報酬を、数多く得られる環境がここにはあります。

野村證券にいたときから、私はよく「世界一を取るぞ」と口にしていました。でも、内心では「何のために」が見えていなかったんです。でも、今は違います。ペットと飼い主の幸せのために、獣医療に革新を起こすために、私たちは「世界で一番影響力のある会社になる」事を目指すのだと。その思いを胸に、これからもA'ALDAの成長を金銭面、戦略面の両軸から支えていく覚悟です。

そのためには、優秀な人材の確保が最重要テーマの一つとなります。絵空事でなく、現実として世界の動物業界を変えていくには心から信頼できるメンバーたちの存在が欠かせません。すでに現場で成果を出している社員もいますし、さらに拡大していくでしょう。

A'ALDAのカルチャーがわかるスライドはこちら
全方位で、新たな仲間との出会いを心待ちにしています!

(文・構成/長谷川賢人)

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