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夢のホストクラブデビュー☆

大学入学を機に上京し早10年、ずっと行ってみたかったけど行けなかった場所・・・

ホストクラブである。

映画もカラオケもバーも、行きたいと思うところは一人で行けた。でもホストクラブだけはやっぱり行けなかった。人生経験として、どんな世界が広がっているか見てみたかったし、ホストってどんな人達なのだろうという好奇心があった。もちろん純粋にイケメンと話してみたいという欲望もあった。でも、歌舞伎町を通りかかるたびに、派手なスーツに身を包み金髪&長めの前髪に遊ばせまくった髪形、さきっちょの尖った靴を履きこなすホストらしき人達を見て、私には似つかわしくない場所であると怖気づいてしまっていたのだ。

しかし先日、ついにホストクラブデビューを果たすことが出来た。というのも、たまたまホスト街の近くで知り合いと飲み会があり、その帰りに友達と駅に向かってるところキャッチに声を掛けられ、飲み会帰りで酔っぱらっていたこともあり、そして心の奥の欲望がうずいたこともあり、「行っちゃう?」となったのである。

酔っぱらっていたと言っても、友人も私も根は超真面目で疑い深いため、そのキャッチが初回1000円と言うのが信じられず、何度も何度もぼったくりじゃない旨を問いただし、挙句の果てにその子の身分証を見せてもらった。なんと青学に通う現役大学生。社会勉強のためにこのような仕事をしているという。あっぱれである。

青学というネームバリューにすっかり安心した私たちは、その子に案内されたホストクラブに足を踏み入れた。

店内は黒を基調としたシックな雰囲気。金持ちが来る場所というイメージが合ったのだが、テーブルやソファは割とどこにでもありそうな家具で、チープな印象受けた。プロジェクターでお店の宣伝VTRのようなものが壁に写し出されていた。スーツ姿に身を包んだホスト達が歌舞伎町をキメ顔をしながら歩いている映像だった。

席に着くと、案内役の男性からタブレットを渡され、まずは2人選んでくださいと言われた。タブレットの画面には所属するホスト20名くらいの宣材写真が載っていた。みんな各々のキメ顔でポージングを取った気合いの入った一枚であるようだ。正直どれも同じ顔に見えたが、優しそうな人が良いと思い、あまり派手な感じではない雰囲気の2人を選んだ。

案内人が去ると、入れ替わりにさっそく2人のホストがやってきた。私の目の前に座った子は、金髪でいかにもホストみたいな見た目の子。友達の前に座ったのが、黒髪でその辺の大学生みたいな子だった。話を聞くと金髪の子は18歳らしい。ホストを始めてまだ2週間そこそこらしく、確かにかなりあどけない感じがした。となりの黒髪の先輩に促されながら、慣れない手つきで私のグラスに鏡月を注いでくれたが、18歳に酒を注がせていることに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

世間話をしながら10分くらいたつと、時間なので、と言ってどこかへ行ってしまった。

どうやら10分ずつ交代でいろいろなホストと話せるシステムらしい。最初に選んだ二人は一体何だったのだろう···

新たな二人のホストが来た。さっきよりも経験値がありそうなホストだった。友達の前に座ったホストが攻め気味のトークをしてきて友達と会話を始めてしまい、私は私の前のホストと会話をしなければならなくなった。私は一対一で話すのが苦手だ。さっきまで4人で会話をしていたのに、今度は一対一で話さねばならなくなった。私の前の子は金髪でベージュのスーツを着た細見の男の子だった。とりあえず、何歳?いつからホストしてるの?などのつまらなすぎる質問でその場をしのいだ。何歳?とかは普通の飲み会じゃ聞けないけれど、とりあえずホストだし良いかと思って失礼を承知で聞いた。友達が整形してるかどうかを質問しているのが聞こえてきてぶっこむなぁ、と思った。友達とホストはとても盛り上がっていた。「目を逸らしたら負けのゲームね!」「いいよ!よーいスタート!」「・・・あ、逸らしたー!私の勝ちー!飲んでー!」

うわぁ、なんかホストクラブっぽいなぁ・・・と横で聞きながら、私は目の前のホストが初めて行ったカキのお店でカキにあたって嫌いになったという話を笑顔で聞くことに徹していた。

となりのホストと友達は盛り上がったようで、LINEを交換していた。それを横目で見た私の前のホストも焦ったのか、気まずそうに私にLINEを聞いてきた。

それ以降も、私たちは4人席に座っているのに、ホスト達は一対一の会話に持ち込もうとした。友達は会話上手で毎回盛り上がっていたけど、私は本当に苦手だった。ホスト=コミュニケーションの達人みたいなイメージで、こっちが黙っていても面白トークで勝手に盛り上がってくれるみたいな想像をしていたのだが、ホストもただの人間である。こちらが能動的に話しかけなければ盛り上がる会話も盛り上がらない。真面目なために、かわいく酔っぱらうことも甘えることも、突っ込むこともできず、ただただまじめな世間話で終始した。グラスが空くとすかさず鏡月とオレンジジュースを注いでくれ、グラスの周りに付いた水滴も拭いてくれた。そのたびに私は「そこまでしなくても良いのに・・・」と自己肯定感の低さが邪魔をした。

後で思ったが、ホストが一対一の会話に持ち込もうとするのはやっぱり自分を指名してもらうためには一人との仲を深めることが大切だからだろう。4人で会話して4人で仲良くLINE交換してもあまり意味がないのだろうと思った。

1時間で5人くらいのホストと会話をした。お会計は初回料金ということできっちり1000円だった。本当に初回は安いのだ!

初回ホストクラブの感想は、想像していたよりも普通のメンズだったということだ。その辺にいそうな男性がメイクして髪の毛セットして、頑張ってマナーを身に付けてホストをやっているという印象を受けた。

そして、失礼な話ではあるが、顔も想像していたほど良くはなかった。歌舞伎町を走る宣伝車とか、巨大広告とかを見ると「うわぁ~イケメンだなぁ~」と思うのだが、あれらはかなり修正されていて、実物を見てみるとメイクを頑張っていたり明らかな整形顔だったりしてナチュラルボーンビューティーではないのだな、ということが明らかであった。そうすると、「痛かっただろうな・・・」とか、「辛い思いをしたのかな・・・」と、いらん同情心が湧いてきてしまった。整形した顔は整ってはいるけれども、明らかに人工物といったかんじで、彼らにとってはそれが「イケメン」なのだろうが、それは私の好みとは合わなかった。整形してません、と言っていた子もいて、そういう子の方が安心して会話できる気がした。ホスト界隈では整形がここまで当たり前にされているということを知れたことは新発見だった。

そんな感じで、「ホストクラブって案外普通だったわ~」みたいに余裕かましつつ帰宅した。私はお酒が好きなのだが、ホストクラブはお酒をがばがば飲む場所と言うよりは、やはりホストとのトークを楽しむ場所と言う感じで(もちろん金持ちであれば両方できると思うが)、とにかく安酒を飲みたい貧乏な私には向いていないかなと思った。とはいえ、LINEに届くホストからの甘いメッセージには、営業トークと分かりつつ、ついついにやけてしまう。

俄然ホスト業界に興味がわいた私は、自分が行ったホストクラブや接客してくれたホストについてググってみた。「え、あの子がNo1!?」という驚きの発見もあって、NO1といえど割と普通な感じだったなぁなどと思った。
ホストについて調査を続けると、「HOST TV」というYouTubeチャンネルを見つけた。

これを見て、私の体験したホストクラブなんてあの世界のほんの0.5%くらいだったのではないかと思った。私は「送り」(店を出るときに見送りしてもらうホストを選ぶこと)という文化も、同伴で何がされるかも知らなかった。

このチャンネルを観ていたら、同伴というのは、普通に体の関係を含むことなのだと知って驚愕だった。金を積んだ女には手厚いサービス(デートは当たり前、体の関係も!!)がされる、女は自分が一番好かれたくてどんどん金を積んで、いわゆるホスト狂いになる。指名してるホストが他の女とデートやイチャイチャをしていると知ると、「私のこと一番じゃないの!?」と発狂しホストに頭から酒をぶっかける、ホストは怒らずその女を優しく抱きしめる、などの映像があった。ホストの営業手法にもいろいろあり、恋愛系とか友達系(でも体の関係あり)とか中には結婚詐欺まがいの人もいるみたいだった。

もしかして、私が会話をしたあの「その辺にいそうな大学生」みたいなホスト達も、指名を勝ち取るために女の子にせっせとLINEして、指名をとるためなら誰彼構わずおせっせして、明らかに理不尽な理由で女の子にブチ切れられても怒らずに静かに抱きしめてチューする、みたいなことをしているのか・・・!?

私は営業トークLINEにニヤニヤしていたけれど、金を落とさないと分かればすぐに彼らは態度を一変させるのだろうか・・・。

ホストクラブ、やはり恐ろしい世界である。

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