見出し画像

誘われる、閉塞的4人

空は抜けるほど澄んでいたが、寒さは愛想もなく昼時に停留していた。
正午前。閉館した高円寺ストリートを横目に村松と待ち合わせる。
駅前の喫煙所で一服。
震えながら吐き出した煙が、呆気なく冷たい空気に飲まれていく。それをただ見送る。

今起きたような顔でもう一度フィルターを咥える村松。
その薄着な身なりは、この辺りでとれたばかりの物のようであった。
吉田拓郎と同じくらい、「高円寺じゃないよね」と聞きたくなる。

劇場近くの喫煙所でまた一服。
颯爽と現れた矢崎は頼もしく煙を吐き出す。
気が付くと、「張り込み」というネタの荻野の立ち位置に自分が存在していた。

楽屋で身支度などを整えて束の間の休憩。
屋外の澄んだ空気に触れて清々しそうな表情のこてつさんと桃沢さん。のろのろと喫煙所へ誘われる。
忙しなく進む初日のタイムスケジュールを縫ってゆっくりと流れる唯一の時間。

本番が近付くと、ネタの話やセリフの確認もしつつ、より一服を味わう。
定められた場所の中での閉塞感が奇妙な連帯感を生み、弱々しく結びついていく。
その空間から一歩外へ出ると、するすると解けていく。脆くて軽薄だが、ぼんやりと繋ぎ止められている糸。
その共通項の中でまた火を点ける。

本番を観る。座・高円寺2。
3年前の今頃。養成所の対抗戦にてトリオを組み立てで、まだゼンモンキーという名前でなかった3人がこの舞台に立っていた姿が頭に浮かんだ。
出場するメンバーに選ばれて「おめでとう」とLINEしたことを思い出した。今だったら多分できない。
荻野は今も変わらずパーカーを着ていた。

本番終わり。
解散して駅前の喫煙所でまた一服。
気兼ねなく会話できるこの時間を再び楽しむためかのようにこの場を去っていく。
4人各々の背中。

帰りの電車が同じだった村松とまた2人。
「疲れた」とこぼして、そのために空いていたであろう席に腰を置く。
レールを鳴らす鈍い音と共に、高円寺から離れていく。

最後まで読んでいただきありがとうございます。 お気持ちのほど、サポートしていただけたらありがたいです。 YouTubeの企画での飲み・食事代、出ていただいた方のタバコ代、その他編集などの経費に充てさせていただきます。 恥ずかしながら、企画継続のためどうかよろしくお願いいたします。