ユニフォームフォント統一に見るJリーグの「過去と未来」
昨日、Jリーグが出した1つのリリースがJリーグ各クラブのサポーターの間で論争を巻き起こした。
リリースのタイトルにもあるように、Jリーグは来シーズンからの公式戦において選手が着用するユニフォームのオフィシャルネーム&ナンバーの書体統一を決定した。
この決定に至った背景としてJリーグは、以下のように述べている。
これまでのネーム&ナンバーのデザイン選定には視認性を確保するための基準などが明確に定められておらず、観戦・視聴環境によっては背番号の視認が困難なケースも見受けられました。この度、ユニバーサルデザインを取り入れた統一デザインを採用し、使用するネーム&ナンバーとユニフォームとのカラーコントラストにも一定の基準を設けるなどの取り組みによって、」リーグ公式試合全体の観戦・視聴環境の向上につなげていきたいと考えています。
つまり、今回のオフィシャルネーム&ナンバーの書体統一は、観戦・視聴環境の向上のための「視認性の向上」が目的とされている。
Jリーグの説明にあるように、試合観戦においてファンが選手を覚えるきっかけともなるユニフォームのネーム&ナンバーの視認性を高めるというのは至極当然のことのように思われる。
では、何がサポーターの間で論争を巻き起こしているのか。
その理由の1つは、カラーの少なさである。
現段階では「白・青・赤・黒・黄」の5色が使用カラーとされているが、各クラブのクラブカラーというものはあまり重視されていないように感じるカラーリングである。
多様なデザイン、カラーを持つ各クラブのユニフォームに対してネーム&ナンバーのカラーがたった5色というのはさすがに物足りなさを感じざるを得ない。
また、クラブによってはクラブカラーを明確に設定しているケースもある。
代表的な例として、近年大幅なクラブのリブランディングを行った清水エスパルスと東京ヴェルディが挙げられる。
この両クラブはリブランディングに際して、上記のカラーだけでなくクラブで使用するフォントも独自に設定しており、ネーム&ナンバーの書式統一という今回の決定によって大きな影響を受けたクラブの一例だと言える。
ネーム&ナンバーのフォントという所に関して言うと、ジェフユナイテッド千葉も影響を受けているクラブのひとつだ。
ジェフユナイテッド千葉はJリーグ発足時からネーム&ナンバーのフォントを一度も変えることなく使い続けている。
どれだけ年月が経って、所属選手が替わっても、カテゴリーが変わっても、クラブとして変わらないもののひとつとしてネーム&ナンバーのフォントを維持してきたクラブにとって、今回の決定を受け入れることは容易ではなかったと想像できる。
ここまでネーム&ナンバーのフォントとカラーをリーグで統一することに対して否定的な見方をしてきたが、世界的には珍しい話ではない。
プレミアリーグをはじめ、リーガエスパニョーラやリーグ・アンなどネーム&ナンバーのフォントを統一しているリーグは既にいくつもある。
ただ、Jリーグは上記のリーグと比べてクラブオリジナルフォントの入ったユニフォームを着用できる機会が特に少ないのである。
例えば、プレミアリーグに所属するリバプールFCがリーグ戦で着用するユニフォームにはリーグ統一フォントが使用されているが、UEFAが主催するカップ戦などで着用するユニフォームには下記のようなクラブオリジナルのフォントが使用されている。
そのため、リーグでネーム&ナンバーのフォントとカラーが統一されているものの、リーグ戦以外でユニフォームを着るタイミングでクラブ独自の「色」を出すことができている。
Jリーグでもこれができればまだ良いのだが、現時点でクラブ独自のネーム&ナンバーが入ったユニフォームを着用できるタイミングは天皇杯とACL(アジアチャンピオンズリーグ)の2大会のみとかなり限られているため、J1クラブはともかく、J2、J3クラブがわざわざリーグ戦のユニフォームとは別タイプのユニフォームを制作する可能性は極めて低いのではないかと感じる。
たかがフォント、されどフォント。
各クラブオリジナルのデザインやカラー、フォントを採用することが多くなってきたこのタイミングで出されたリーグのルールに対して、Jリーグ各クラブがどのように対応し、今後どんな方法でクラブのブランドアイデンティティを発信していくのかという所に注目していきたい。
誠ボランチ
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