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履歴書に「配偶者」欄、「扶養義務」欄があるのはなぜか?

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 Twitterのタイムラインに以下のTweetが流れてきた。

採用活動をしていて思うこと
1)配偶者の欄っている?これから結婚するかもしれないし、離婚だってするかもしれない。それが書類審査に影響する会社ってあるの?
2)配偶者の扶養義務の欄っている?所得税とか健康保険の提出のためというけど、そんなの入社時の手続きでいいのでは?
教えて詳しい人

 私も、採用活動の経験も幾ばくかあるが、確かに不思議だ。
 その欄を見て、「ああ独身なんだ」「若いのに結婚してるんだ」などの、感想程度のことは考えたことはあるが、基本的に、「独身だから」または「既婚だから」で、選考のステップや、採用に影響した経験は無いと思うし、また、(少なくとも建前上は)それらをパラメータに採用の可否を決めるのはよろしくないと思っている。

 でな、なんでそんな項目が存在するのだろうか。各社の履歴書フォーマットを眺めてみた。

  すると、各社共通するのは「JIS規格」対応、という文言があることに気づく。

 「ははぁん。これは、JIS(日本産業規格)で決められてるんだな!」

 そこで、「JIS規格」を所管する、は日本産業標準調査会(JISC)に問い合わせてみた。

 一般財団法人日本規格協会
 規格問い合せ窓口 御中

 JIS規格の履歴書のといわれているものが市販されておりますが、
なぜ、「配偶者の欄」というのがあるのですか?
 これから結婚する可能性や、離婚する可能性もあり、
 それが書類審査に影響する会社は、建前上、存在するのが適切とは思えません。
 また、扶養家族の人数や配偶者の扶養の有無などもございますが、上記と同様と考えます。
 所得税や健康保険の提出のためかとも考えましたが、これは入社時の手続きで取得すれば足りると思います。
 以上よろしくご回答くださると幸いです。

 上記のメールを送ったのがとある火曜日の19時まえ。そして、翌日の水曜日の朝10時前に返信が届いた。(仕事が早い!!)

 一般財団法人日本規格協会様からの返信の要旨は以下の通りである。(全文引用は控えます)

現在確認できる範囲ということで回答する。
・確かに履歴書を印刷販売されている事業者は、「JIS規格の履歴書」といった表記をしている。
・しかし、該当するJIS Z 8303(帳票の設計基準)という規格では、規格の「規定」として履歴書の様式を記載しているわけではない
・この規格は、昭和28年に制定された規格だが、当時から、この規格の本体の後に、別に「解説」が付けられており、この規格で規定している帳票類の様式例として、見積書、注文書、伝言票、納品書、請求書など様々な帳票の様式例が示されており、その一つの例として履歴書の様式も記載されている
・よって、JISとして、履歴書の様式を規定として定めているという位置づけのものではない
・履歴書の製造販売メーカーでは、JISの解説に記載されている例に合った様式ということで「JISの履歴書」といった表記をされているようだ。

 なぜ「配偶者の欄」があるかは、先に記載したように、この規格は昭和28年に制定とかなり昔のことで、想像だが、その当時に多く使用されていた履歴書の様式を集めて、当時、各事業者さんで社員を募集する際に必要な情報を盛り込んだ様式について話し合われてまとめられた一例であるかと思う。
 指摘のように、配偶者や扶養家族の記載にいては、入社後に把握すればよいということも考えられるが、上記のようないきさつで記載されているという状況。

 なるほど、確かに「JIS Z 8303(帳票の設計基準)」を調べてみると、帳票の設計に際して考慮すべき仕上寸法、用紙及び印刷インキの色、文体及び書き方、用字及び用語、項目の配置、注意事項、記入欄の大きさ及び余白、文字及びけい、製本及びとじ穴についての一般的事項を規定しているもので、項目の内容を規定しているものではないのは確認できた。

 上記は簡易版なのでフル版が存在すると思われるがネットでは調べられなかった。メール文にある、帳票類の様式例を確認することはできなかった。

 では、履歴書様式を販売している、文具メーカーはどのようにかんがえてるのだろうか?

 こちらも問合せてみた。

 貴社にて販売してます、履歴書用紙について、なぜ、「配偶者の欄」というのがあるのですか?
 これから結婚する可能性や、離婚する可能性もあり、
 また、それが書類審査に影響する会社は、数苦なくとも建前上、存在するのが適切とは思えません。
 また、扶養家族の人数や配偶者の扶養の有無などもございますが、上記と同様と考えます。所得税や健康保険の提出のためかとも考えましたが、これは入社時の手続きで取得すれば足りると思います。貴社において、「配偶者欄」「扶養者欄」の必要性においてどのようにお考えですか。
 なお、JIS様式というのは、JIS Z 8303(帳票の設計基準)という規格に準じているとの認識です。
ですが、この規格は「主な帳票の仕上寸法及び紙の用い方」を示してるに過ぎず、項目の内容を定めてはいないと認識しています。

 あえて、なお書きで、該当のJIS Z 8303は記載項目を定めていないというととを伝えています。

 まずは、コクヨ。

お問い合わせ頂きました件、帳票のJIS規格に帳票の様式例があり、
その中の履歴書の様式例を参考にしてさせて頂いております。

 あっさりと、様式例があるので参考にしたとのこと。特に、「配偶者」欄や「扶養者」欄の意義については該当はなかった。

 次に、日本法令。以下要旨のみです。

 履歴書の様式については、JIS Z8303「帳票の設計基準」に記載があり、その規格に沿った書式が一般的に標準とされている。
 JIS Z8303は設計の基準であり、履歴書について示されたのは様式の参考例で、項目の内容などの厳密な決まりには及んでいません。
 一方、求人募集に「履歴書はJIS規格準拠」という条件がある場合がる。
 一般的にJIS規格の履歴書というと本来の意味でのJIS規格ではなく、前述のJISの中で示された「標準的参考例」の様式のものを指すことが多い
 このような社会情勢において、弊社ではこの参考例に準じた配偶者欄が記載された商品をJIS規格の履歴書としています。
 これからも弊社商品をご利用いただけますようお願い申し上げます。

 日本法令は、JIS規格が履歴書の記載内容を定めたものでないことは承知している模様。ただ、世間が記載例の内容を指しているという、やや言い訳をしているように感じる。(私の主観)

 最後に日本ノート株式会社(旧アピカ)

 ご質問の履歴書ですが、発売当時から環境変化もある中で
 この仕様で永きにわたりお客様へご販売させていただいている。
 弊社においてはこの項目の記載を必要以上に求めている事ではなく、採用側様、応募者側様 皆様が使いやすい製品として構成させて頂いる。
 今後について、ご提案頂きました事をしっかり受け止め開発の参考させて頂く。ご提案いただき ありがとうございました。

 唯一、日本ノート社は、前向きな回答があった。

 「JIS Z 8303:2008 帳票の設計基準」のフル版を読んでいないので、断定できないが、様式例として参考に載せたものが、デファクトスタンダードになっているようだ。繰り返すが、この規格は「主な帳票の仕上寸法及び紙の用い方」などを定めているため、JIS規格で「配偶者」や「扶養者」の記載を規定しているわけではない。ただし、言い方の違いはあれど、帳票例としてサンプルがあるため、各社は、その欄を現在も残しているとのことだ。

(以下有料記事。短いです。)

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