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考察「人事評価の季節に考える、価格形成メカニズム」

およそどこの会社でもやっている人事評価。世の中では、人事制度、評価制度に関するたくさんの書籍が出版され、新たな方法論が開発され、それでもなお、人事担当者は常に悩み、会社員は一喜一憂しています。特に、評価そのものの正当性担保の難しさに加えて、先行き見えにくい経済環境にあっては、評価と給与を連動させる(要は昇給減給する)ための算定ロジックも難易度を増しています。そして、排除しきれない公平性、客観性。積もっていくスタッフの不満、奢り。溜まっていく人事担当者の自責、ストレス・・・。ホラーストーリーのように書きましたが、視点を変えると冷静になれることに気付きました。

給与はコストか、投資か

給与の上がる下がるに大きく関係している人、そうです、上司です。まずは、上司の観点から考えてみます。部下の給与を考えるときに、人件費をコストと捉えるか、投資と捉えるかでだいぶ変わってきます。前者だとなるべく経費はかけずに今のパフォーマンスをあげてもらうことが正義なわけで、減給モチベーションこそあれど、昇給モチベーションは基本ありません。同じサービスならなるべく安い方がよいと思うのと一緒です。一方投資だと思うと、いま買っておけば大きくりそう、とか、ずっと持ってると損しそう、という発想になりますし、その投資対象の適正価格はいくらなのか、とか、成長が見込めるのであればプレミアム乗せてでも獲得したい保持したい、というモチベーションが生まれます。部署によって給与があがりやすいまたはあがりにくい、という現象があるとしたら、その背景のひとつには上司の捉え方の違いがありそうです。

評価も給与も公平公正なものではないことを知る

次に本人の観点から考えます。およそほとんどの会社員は、目標設定してその達成に向けた日々邁進します。で、半期とか通期とかでその目標の達成度合いに応じて評価されます。目標を達成したら給与があがり、達成しなかったらさがる、というのが一番シンプルな考え方で、ここに、外部環境を考慮に入れたり、KPI至上主義と化すを回避するために行動目標をおいたり、目標が安易になりすぎないように等級を導入して基準を設けたりと、いろいろな工夫がなされます。それらの工夫はいずれも公平性、公正性を担保するために導入されるものですが、たいがい、目標達成度合いと昇給減給がダイレクトに繋がることはありません。なんでこんなに頑張ったのに上がらないんだ!いうやつです。先述の通り、給与をコストとしてみちゃう上司(または会社)にあっては、あげない理由を見つけることに長けていますし、ついでに大幅な減給でハレーション起こすことも望んでませんから、結局プラスマイナス数%しか動かないということになります。結果、不公平だ!ということになって社内が不穏な空気に包まれていきます。

様々は公平性のための仕組みがあることによって、給与はなんらか算出ロジックにしたがって公正に決定されるものと思い込んでおり、ストレスがたまるのではないでしょうか。皮肉なものです。こうなったら視点を変えましょう。がんばるべきは投資的発想で考える上司の場合です。給与をある種の商品価格と考えれば、そこには必ず適正価格があります。そう考えれば公平公正なんてないと悟れるのではないでしょうか。

価格形成のファクター

どんな要素によって適正価格が形成されるか考えてみます。経済額の基礎として、価格は需要曲線と供給曲線の交差点だというのを習ったと思います。給与において需給をマーケット的に考えると、転職市場だったり、その会社全体の給与水準だったりの要素が意識されます。「この社員のケイパビリティで転職したらxx円になりそう。」とか「ウチでこのくらいの成果はxx円くらいのレンジだね。」とかいう発想です。

もう一つ不動産的に価格形成されるパターンもありそうです。給与でいえば、「あの人にハマる」パターンです。駅から遠かったり築年数古かったりしても、たったひとりに気に入ってもらえればいい値段がつく不動産のように、裁量権のある人にフィットすると、いろいろなアラがあっても給与は安泰です。

いずれにせよ結局は価格なので、需給の問題です。そして価格形成に関わる人は誰なのかが大事です。とある企業では、給与改変を行う際、転職エージェントに転職時の想定給与を算出してもらうらしいです。この取り組みは価格形成への関与者を増やしている例といえます。

実績と信頼

最後に。注意しなきゃいけないのは、そうはいってもファンダメンタルズが大事だと思います。相場や不合理な需給は当然あるのだけれど、基本的には、実績とそれに裏打ちされた信頼がないとどうにもならないと思います。計画を立てて、うまく行っていることもそうでないこともきちんとホウレンソウし、約束した数字をきちんとやる、それを積み重ねることで信頼を獲得し、信頼を獲得しているからこそ「次はこれをやりたい!」にチャンレジする機会につながり、、、という循環が生まれます。IRと一緒です。報酬は、経済的報酬だけじゃなく、社会的報酬もあれば、心理的報酬もあるんだと思います。そう考えると仕事への取り組み方も変わりそうな、晴れやかな気持ちになる、そんな季節です。(おわり)

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