戦前浅草小学校教員だった祖父の教え〜現代のリーダー育成にも通じる3つの要素
「失われた20年」と言われた日本経済においてイノベーションが渇望されるようになって久しい。イノベーションを生み出すべく日本企業が様々な手法、考え方を取り入れ、今も「リーンスタートアップ」や「アジャイル開発」、「両利きの経営」といったマネジメントや事業開発手法を用いて試行錯誤している。
また個人レベルの思考方法としても「ロジカルシンキング」に始まり「デザイン思考」や最近の「アート思考」さらにはそれらの統合的な思考も注目されている。
企業経営や人事コンサルティングに携わる人間として日頃から関心を持ってはいるが、4月から次男が中学に進学するにあたり、親としてもこれからどのような教育が必要になるのか、改めて考えさせられる。
そんな折に、ふと久しぶりに開いた本がある。戦前、浅草小学校の教員をしていた私の祖父が書いた「教えの心」という書籍だ。昭和11年(1936年)、今から85年前に書かれたものだ。久しぶりに開いてみて、大変興味深いことを再発見した。
本の中で、祖父は子供の教育に置いて大事な領域として次の5つを挙げている。
(1)科学的陶冶
(2)道徳的陶冶
(3)芸術的陶冶
(4)宗教的陶冶
(5)職業的陶冶
(6)身体的陶冶
意外に思われないだろうか?85年前、戦前の小学生の教育において、大事にしていた上位3つが「科学」「道徳」「芸術」だったのだ。「道徳」「宗教」は戦前の教育を考えれば、想像に難くない。しかし、「科学」と「芸術」はどうだろう?まさに現代のVUCAの時代に必要とされる「アート」と「サイエンス」だ。そしてそれに加えて「道徳」となると、経営者に求められる「インテグリティ」にも通じる。
戦後、日本では数多くのイノベーションが生まれた。新幹線やスーパーカブ、小型自動車、さらには電気炊飯器やファスナー、などなど。そしてソニーやホンダなど、名だたる日本企業とその経営者がこの時代に登場した。
これらのイノベーションが生み出された背景に、戦前の日本の初等教育の影響も少なからずあったのではないかと考えるのは短絡的すぎだろうか。
現在は、STEM教育(Science、Technology、Engineering、Mathematics)あるいはそれにLiberal Artを加えたSTEAM教育が注目されてはいる。しかし、その原型となる考え方は既に戦前の日本の教育にあったのではないだろうか。
そのように懐古してみたところで「失われた20年」が取り返せる訳ではない。次代を担う息子たちが、次代を担うにふさわしい教育をうけ、成長してくれることを願うばかりだ。
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