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QPLOが自主企画「NOQ Radio Vol.1」で奏でた「2人連れのグルーヴ」

今年4月に1st EP『Spaceship』をリリースし、活動を開始したKosuke Someya(Gt)とRio Tokue(DJ)による二人組バンドQPLO。

ジャンル、時代、国境を超えた「サウンド・トラベル・ミュージック」を掲げる彼らが、10月24日(土)に初のオンライン企画「NOQ Radio Vol.1」を下北沢Basement Barで開催した。

対バン相手にプロデューサーユニットZattaを迎え、自身も11月下旬にリリースする2nd EP『Parallel Voyage!』の全曲をバンドセット披露するという趣旨で行われたこのイベントだが、配信ならではの一風変わった工夫が凝らしてある。

それは、タイトル通り「ラジオ」形式のライブになっているということだ。

DJが曲を流した後に曲にまつわるトークをするように、あるいはゲストミュージシャンの新曲を聴きながら制作秘話やバンドヒストリーを訊くように、QPLOはステージとラジオブースを行き来しながら、Zattaやフィーチャリングアーティストを迎えながらトークを繰り広げた。

「配信ライブならではの試みをしたい」という2人の発案で行われたこの自主企画は、QPLOというバンドのコンセプトを伝えるための「番組」になった。

番組はQPLOの2人によるオープニング・トークと、Zattaのライブからスタート。2年ぶり2枚目のアルバム『Zatta2』の収録曲を中心に、ボーカルとギターのKeach Arimoto、ベースのTaishi Satoが、それぞれサンプラーを操りながら展開されていった。

ハードなビートの上にKeachのブルージーなギターが響く「Can You See The Miracle」から始まり、ハッピーなダンスホール風のビートにTaishiのベースが響く「Clap or Clip」。そして2人のサンプラー・セッションから演奏になだれ込む「Night Call」で熱演を繰り広げたと思えば、「HIRAME」ではたゆたうようなグルーヴを鳴らし、たった2人だけで多彩な音像を作り上げていく。

現行のアンビエントR&Bやヒップホップを基調としながらもインディ・ロックやブルース、フォークの叙情性が入り混じったZattaの音楽は、QPLOが掲げる「サウンド・トラベル・ミュージック」とも通じるものがあるのである。

Keachがオートチューンをかけた声でエモーショナルに歌い上げた「(Non)Satisfaction」と、ギターとベースのシンプルな編成で届けた「雲」は、そんな彼らの魅力を凝縮したような演奏であった。

番組の後半戦はSomeyaとRioのトーク、そしてベース、ドラム、キーボードを5人編成でのライブが繰り広げられた。

今回のライブで初披露となった2nd EP『Parallel Voyage!』の収録曲たちはQPLOの2人が、謎の惑星を旅しながら見た風景を音として再現したものである。

アルバムのオープニングを飾る「Landing」と「The View In Parallel Voyage」は、彼らが惑星へと飛び立ち降り立つまでの風景を描いたインスト曲。まだ全貌が見えない惑星の靄がかかった空気を表現したアンビエンスなシンセのフレーズと、大地を踏みしめていくようなベースとドラムが印象的だ。

この2曲から間髪入れずに演奏されたのが「Rainbow Camera Jungle」。South PenguinのボーカルであるAkatsukaが、「虹色のカメラのジャングル」や「喋りだすフルーツ」に魅了されながら冒険していく様子を歌いあげる。彼の艶のあるメランコリックな声が、怪奇かつ幻想的な世界を目の前に現前させていく。

4曲目の「Flow Of Time」はジャングルの先に抜けた先にあった重力がなくなる大河についての楽曲。なんでもその川は、水の上を歩くことができ、時間の感覚もなくなっていくという。

スペイシーなシンセのフレーズと様々な声が入り混じっていくサンプリング・フレーズの隙間を縫うように鳴り響くエモーショナルなギターは、映画『インターステラー』(2013年、クリストファー・ノーラン)で描かれた四次元空間を想起させる。

「Windy Dog From This Planet」では、いままでの浮遊感のある演奏とは打って変わり、力強いドラムビートと這うようなベース・ラインとともに静かに暴れまわるようなギターフレーズが繰り返される。

それもそのはず。この楽曲はQPLOが惑星で見たバンド「Windy Dog」の演奏を記憶を辿りカバーしたものなのだから。ただカバーだからこそ、QPLOバンドの強靭なグルーヴが際立って聴こえた。

ラストトラックの「Shinig Fog Bar」になだれ込むと、5人の演奏はより熱を帯びていく。

2人が作り出したディスコ・ハウス・トラック、グルーヴィーなベース&ドラム、ジャジーなキーボード、そしてナイル・ロジャースさながらのギター・カッティングが重なり合いなり、享楽的なダンス・トラックが鳴らされる。

そして5人の演奏をドライヴさせるかのように、ラップを繰り出していくのはDos MonosのTaiTanだ。3分間のなかに3回のブレイクを挟む構成もさることながら、1人のMCとバンドの演奏がそれぞれの熱を高め合っていくステージは確実にこの番組のハイライトであった。

バンドメンバー、フィーチャリング・ゲストのAkatsukaとTaiTan、そしてZattaと、演奏やトークで様々なグルーヴを生んでいったQPLOは、最後に1st EPのタイトル曲「Spaceship」をプレイ。

Rioがこの日のために作り上げたミックスとSomeyaのカッティングは、バンド・セットとも異なる不思議なグルーヴを生み出していた。

思えば、2人は番組のオンエアー中、ほぼ出ずっばりで話し、演奏してきた。「NOQ Radio」にはRioとSomeyaが結成以来2人で探究してきた言葉と音が、ずっと通奏低音のように流れていたのである。

そんな他の誰にも再現できない「2人連れのグルーヴ」の魅力を、向かい合って演奏していた「Spaceship」から感じ取らずにはいられなかった。

(ボブ)

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