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冬ドラマ横断レビュー NHK編

【麒麟がくる】(日曜 20:00-20:45 第2回1月26日)

長谷川博己が主演を務める今年の大河は明智光秀の一生がテーマだ。まずメインビジュアルに注目してほしい。アートディレクションは新進気鋭の写真家、奥山由之が担当している。

何より色彩が綺麗だ。ファーストカットである「明智荘」の引き画からフルスルットルで綺麗だ。というのも、この大河ドラマは大河史上はじめて4Kカメラを使用している。

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そのため、「色」でわかりやすく演出を行う。

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光秀の叔父が飼っているのはメジロ。光秀の装束と色を同じくする。叔父は、自分の言うことを聞くメジロを可愛がり、反発する光秀を疎ましく思う。非常にわかりやすい演出である。公式サイト曰く、この大河は「はじめて大河ドラマを見る人でも楽しめる」ようにつくられたらしいが、それを体現している。

『いだてん』はご存知のように、過去のサブカルチャーからのサンプリングの妙を楽しむ演出だったが、今回の『麒麟がくる』は極めてオーソドックスで、楽しむための敷居が低い演出になっている。

そして、そんな中でも特に注目してほしいのが「円」を用いた演出である。

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珊瑚(現代の真珠)、鉄砲玉、掌、これらは第1話の要所で出現する。そしてこれらはどれも「円」い。これは明智光秀が各戦国大名の間を取持ち、その絶妙なバランスでもって平和を築こうとしたことともちろん繋がってくるだろう。

【心の傷を癒すということ】土曜21:00-21:45(全4回 第3回2月1日)

すごいドラマがはじまった。阪神大震災の際に、被災者の方々の心のケアに奮闘した精神科医を描いたドラマ。第一話では主人公の出自が語られる。

「丁寧に自分の心が代弁されている……」と思わされるがあまり、次のセリフが待てなくなる。そんなドラマだ。特に素晴らしかったものを引用したい。

主人公(安和隆)が憧れの大学教授(永野)とはじめて言葉を交わすシーンから。

安:永野先生…… !!

永野:はい。

安:質問があります。

永野:どうぞ。

安:寂しくないですか?

永野:寂しい?

安:先生が書かれた本を読みましたが、並外れた知性がゆえに、普通の人とは違うものを見ておられるようです。例えば……誰もが朝日に目を奪われているときに先生はその光が決して届かない海底の魚をご覧になっている。先生が魚について誰かと議論したいと思ってもその魚を見えている者は他にはいません。自分を……自分の考えを誰もわかってくれないというのはどのような孤独でしょうか。 

永野:どうも、過大な評価をもらったようだね。君、名前は。

安:……安、と言います。

永野:アン??

安:不安、の、安です。

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主人公は映画、文芸、漫画を好み、それらの作品に癒される。劇中内の彼のように、この作品を観る私たちは確かな温かみを感じることだできる。この構造は、青年期に「在日韓国人」という出自に悩んだ彼が、悩みを抱える精神疾患に寄り添うという構造と相似している。この構造は、人がいかに支えあいながら生きているかを画面を超えて伝えてくる。

【伝説のお母さん】土曜23:30~24:00(全8回 初回2月1日)

昨年、『腐女子、うっかりゲイに告る。』『だから、私は推しました』など先進的なテーマが話題になったよるドラマ枠。この枠のプロデューサーである上田明子は先々週のananの「新時代のエンタメの創り手たち」という特集で取り上げられている。

『伝説のお母さん』は2月1日からだが、すでに期待度は高い。共同脚本を劇団・玉田企画の玉田真也が務める。主演は、「女性のリアリティ」を描かせたら右に出る者はいない前田敦子。

今年もNHKのドラマから目が離せない。


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