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【寄稿】ロンドン246日目 12月1日

 友達とサンデーローストを食べに行った。これはブリティッシュの伝統的なお料理。名前の通りローストしたお肉(ビーフ、チキン、ポーク、ラムなど)がメイン。今回のお店ではその他にヨークシャープディングと呼ばれるパンとパイの間みたいなもの、ニンジン、グリーンピース、ブロッコリーなどの野菜が焼かれたり茹でられたりしたもの、マッシュポテト、ベイクドポテト、ポテトとチーズの何かというポテトづくし、それらにグレービーソースをかけて提供してくれた。ロンドンでヘルシー志向やベジタリアン、ビーガンが増える中、このメニューの人気は根強く、いたるパブやレストランで見かける。今回選んだ店はロンドンの中心部から離れたところにあるGanley’s Irish bar。授業中にもかかわらず、先生が紹介しはじめた彼女のお気に入りのパブのひとつだ。大好きだから教えないでくれ、と売れ始めのアーティストに対する自称古参のくそファンみたいなことを言われたが素晴らしいものは共有したい。

 よく、「イギリスの料理はまずい」という話を聞くがこれは判定しにくい。なぜならこちらの人は基本的な味付けをしないためまずいという意見すらできないからだ。素材の味にいちゃもんをつけられるほど私は大人ではない。ホームステイをしていた際、ブリティッシュが作る料理を3か月ほど食べていたが、まずいと感じたことは一度もなかった(私が味に対し寛容であるのも理由の1つにありそうだが)。しかし味を付けたのか?とは6割5分の確率で思っていた。これは3打数2安打とほぼ同じ。そのかわりマヨネーズ、酢、オリーブオイル、塩コショウ、タバスコなどの調味料とチーズなどが料理と一緒に卓の上に並べられる。それを各自でかけたりかけなかったりして味のカスタムをする。好きなようにできるためまずくなりようがないのだ。失礼な話、食材を熱しただけの料理と呼べるか怪しいものはたくさんあった。しかし味の話でいえばまずいことはなかった。ホストファミリーに恵まれていたのももちろんある。とはいえ、スーパーに並ぶ安い総菜やカップ麺など、まずいものも事実としてある。しかしこれらはまずいカウントには入れていない。なぜならこちらの食事はなんでも高い、そのため安く手に入るだけありがたいのだ。腹にたまれば味は後だ。学生としてそれに従っている。

 イギリス料理としてはじめに紹介されるのはフィッシュ&チップスではないだろうか。イメージ通りこちらではかなりポピュラーだが、実際あれに「うめ~!」とはなったことがない。しかし、2か月に1回くらいで食べたくなる。先日、ジャンクフードを求めて冷凍ものを買ってあたため食べていたら、ホストマザーに「フィッシュアンドチップスだね」と言われ、気づかぬうちにそれを選んでいたということがあった。それから3日連続で食べた。とにかくそういう類いのものだ。特別うまいわけではない(これにはブリティッシュの賛同も得ている)。

 しかし!サンデーローストはうまい。もちろん慎重な店選びは必須だ(家で作る場合もある)。グーグルのレビューに関してはブリティッシュの舌があてにならないため大して参考にならない(嘘です)。当事者からのレビューとその熱量が店選びの大きなポイントとなる。今回選んだ店は先述した通り、先生の紹介だ。中心部からは遠いけどあそこは一番おいしかったよと鼻の穴を膨らませながら教えてくれたのでこれは当たりだろうと決めた。そして、本当に大正解だった。値段は全く可愛くないものの大大大満足だった。ちなみに通ぶってラムを選んだ。食べたことないのに。ちょっと臭かった。あれがラムなんだ。とにかくむちゃくちゃにうまかった。感動すらした。店員さんの愛想も良く、店の雰囲気も素敵だった。それも相まって、ロンドンへ来て一番の食事だった。

ちなみに一緒に行った子は“大食らいのポリー”。最後に2人でビールを飲み、パブを後にした。いかにお腹いっぱいかという話をしながら駅までゆっくり歩いた。そしてバイバイをした1時間後にチーズがかかったフライドポテトとアイスの画像が送られてきた。彼女はまた食べていた。私は横になることしかできなかったのに。食事は素晴らしい。こんなことをロンドンで思えるとは。

【テーマ「#3食べたことない」】

【寄稿者紹介】
福田ハナ
和光大学休学中/ロンドン留学中
第一詩集『おひろめ』発売中。第二詩集は来年3月に発売予定。
・IG@suicaoisi ・MAIL: 27umare@gmail.com

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