akyu_2022

名前は「あきゅう」と読みます。 詩やら短編やら小説やらを書いてます。 https:/…

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名前は「あきゅう」と読みます。 詩やら短編やら小説やらを書いてます。 https://ncode.syosetu.com/n4629hp/

マガジン

最近の記事

心傷

気持ちはないのかもと 感じた瞬間 怪我した鳥のように 動けなくなる 傷が癒えるのを待つように うずくまって ただただ あなたからの言葉を待つだけの 飛べない鳥になってしまった でもきっといつか 風はやってくる その風に乗って どこか遠くへ行こう あなたも届かない高くて遠い所へ

    • 眠らない魚は海の中を泳ぎ続ける。 ずっと、ずっと泳ぎ続ける。そして。 ふと、思う。 魚は自らの意志で泳いでいるのか、潮に流されているだけなのか。 泳いでいるのだと信じたいけど。 時には流れに身を任せるのも悪くない。 うまく潮の流れに乗って、また泳ぎ出せばいい。

      • 人魚姫

        泡になって消える人魚姫。「本当は一緒にいたかった」そう望んでも、人を想う気持ちは、泡のように消されてしまった。どうせ消えてしまう想いなら、最初から持つまいと決めたのに。生まれ変わるたび、泡のような想いがあふれだす。今度こそ消えることなく、いられたら。

        • 【短編】蓮の花

          気づいたら大きな湖のほとりにいた。湖には蓮のつぼみが浮かんでいる。実物の蓮の花は想像していたより大きくて、そのフォルムの美しさと相まってゾッとするような存在感があった。 湖の向こう側に目をやると、ハッキリとは見えないが幾人かの人影が見える。 湖の向こうからは楽しそうな声が聞こえてきた。そして、誰かが私の名前を呼んでいる。  私もそちらに行きたい。 だけどまだ蓮の花はつぼみなんだ。そう、湖に浮かんでいる蓮の花は皆んなまだ、つぼみのままだ。 だから、もうちょっと待っていて。蓮の花

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        • 小説
          34本

        記事

          すてる

          『捨てる』 捨てるってどうも罪な感じだ 物も人も もったいない、かわいそう 捨てる人間は悪い人 だったら言い方を変えて そっとはなれる 丁寧にお別れ そう言うことにする 断ち切ってこそ、わかることもある

          冒険

          穏やかな村を出て 不可解で居心地の悪い山をこえると そこには美しい草原が広がっている 傷を癒す泉があって 活力の湧く果物がなっている 小鳥が歌って 蝶が舞う 僕はそこに行ってみようと思う 行ってみようと決断するから そこに辿り着けるんだ

          【短編】ヒーロー誕生

          昔、僕はヒーローになりたかった。 なぜヒーローになりたかったのかというと、悪いやつをやっつける!正義の味方!になりたかったわけじゃない。 僕がヒーローに憧れたのは、ヒーローが唯一無二の存在だったからだ。 ヒーローには代わりはいなくて、すごい必殺技を繰り出せるのも、とてつもない魔法を使えるのも、ヒーローだけだった。物語の中に、ヒーローにとって代われるやつは出てこない。どれだけ強い敵も、裏切り者の仲間も、詐欺師のような商人も、物語に出てくる悪者はみんな嫌なやつだけど、ヒーローの

          【短編】ヒーロー誕生

          灰色

          人は灰色を恐れる。 白にも黒にもならない灰色を。 白は一点の曇りも赦さず、 黒は薄まることを拒む。 永遠に白でいて、果てしなく黒である。 固く、変わらず、確実な、白と黒を人は好む。 人は灰色な恐怖に耐えられない。 柔く、変わりゆく、不確かな、灰色を人は憎む。 だけど、僕は灰色を愛そう。 みんなに嫌われても、 ゆらめく灰色に恋い焦がれて。

          忘れないで

          忘れないで、山の向こうには人がいることを。 忘れないで、消えたのはあなたと同じ人だったというこを。 でもきっと忘れてしまった。 忘れてしまったから、鬼になったんだ。 殺戮と蹂躙しか知らない鬼に。 鬼は人の皮を被っているけれど、もう人には戻れない。 鬼はおのれを鬼だと思っていない。 鬼は人を鬼だと思っている。 だから人の皮を被って人を滅する。 恐ろしい鬼を退治すると言いながら。 でも忘れないで。 あなたが下した決断で、多くの人が犠牲になったことを。 忘れない

          忘れないで

          『河童奇譚』第一話 邂逅

          「ああやばい。また怒られるー!」 葵は駅へと続く坂道を転がるように爆走している。その走りっぷりはゴミ出しに出ていたおばさんが思わず一歩引いてしまうほどだ。 村山葵、26歳。文系の大学を出てから、食品関係の会社で事務員として働いている。 正直、今の仕事は楽しいとはいえない。毎日、上司の無茶振りに耐えながら、理不尽なクレームの対応に追われ、お局さんのご機嫌を伺う日々。 つまらない仕事だと思いながらも葵は、これが社会人というものだと自分に言い聞かせ自分なりに真面目に頑張っている

          『河童奇譚』第一話 邂逅

          高いところへ

          あなたは果ての見えない階段を、一段、一段、昇っていく 風が邪魔をしても、雨に捉えられようと 一段、一段、踏みしめて、その足取りは揺るがない いつもあなたは、真っ直ぐ高いところだけを見ている だから僕は、同じ階段を登ることにしたんだ あなたとは違う登り方で あなたよりずっと不器用かもしれない つまずくし、滑るし、何段か落ちてしまうこともあるよ でも時には三段跳びなんかして、あなたを驚かせる そんな時あなたは、とても楽しそうに笑うんだ だから、たとえ高さに足が

          高いところへ

          ことば

          のみこんだ ことばは 腹の底にたまって 細胞を 侵す まっくろな かたまり 再生し続ける かたまり ことばの かたまり こころに付着した ことばは 心臓に こびりついて 筋を 破壊する なんども刷り込んだ ことばは 肌を 溶かして 骨を 粉する ただしい ことばで ひとを 笑う 楽しい ことばが だれかを 悲しませる 嘘の ことばは ひとを 苛む ことばは ひとの 肉体を 侵食する 美しい声が ひとの 肉体を 裁断する ことばは 見えないと だれが いったの

          『河童奇譚』第五話 狸回廊

          川から屋敷に戻ると、玄関にお酒や野菜・果物やお菓子など、食べ物がたくさん置いてあった。 「なにこれ?誰かからの贈り物?」 葵が聞いた。 「供え物が届いたんだ」 さすが神様。でもいったいどこから届くのだろう。 瑞穂はお供え物をかかえてそそくさと中に入っていってしまった。 葵も屋敷に上がろうとしていると、 「今日から風呂沸かすの交代制な」 とゴンに言われた。 竈と同じように、この屋敷では風呂も薪で沸かしている。 昨日ゴンに竈で薪に火をつける方法を教えてもらったので、風呂を沸

          『河童奇譚』第五話 狸回廊

          少女の ゆめ

          少女は ゆめをみる まぶたの裏には 少女のゆめが広がっている 果てしなくひろがる世界に 少女をつなぎとめるものはなくて 自由に 伸びやかに ゆめを広げてく こわいことが起こっても かなしいことがやって来ても 少女のゆめは留まることをしらない 天から降る星が少女を祝福し 海を泳ぐ魚が少女を励ます たとえ大人が 少女を笑っても ゆめの中では邪魔されない やがて 少女は気づくのだ ひとみを開いて ゆめが見られることを 夢は現実《ゆめ》になることを

          少女の ゆめ

          おっさん はしる

          おっさんは走る、腹を揺らして。 おっさんは走る、髪を散らして。 おっさんは走る、臭いを撒いて。 おっさんは走る、どこまでも。 おっさんは嫌われる、愛した妻に。 おっさんは嫌われる、可愛かった娘に。 おっさんは嫌われる、愛想のいい後輩に。 おっさんは走る、どこまでも。 おっさんは疲れる、長い居残りで。 おっさんは疲れる、嫌な酒で。 おっさんは疲れる、健康診断で。 だけど、おっさんは走る、どこまでも。 明日、誰かを笑顔にすると信じて。 いつか、この汗が世

          おっさん はしる

          くよくよ

          くよくよしたってしかたない。 くよくよしたって得はない。 くよくよしている自分にくよくよする。 くよくよは巡り巡ってやってくる。 月をまわってやってくる。 ぼくは満月がくるたびに、 くよくよと戦う。 くよくよと、 死んだ魚の目の間を、 ゆらゆら泳ぐ。 くよくよは、 なかなか帰ってくれない。 くよくよは死んだ魚の目をつれてくる。 だけど知ってるんだ。 死んだ魚の目に、 また魂がやどる方法を。 だからくよくよしたって、 また進めるんだ。

          くよくよ