【剣闘日記】本質を見て涙めしそう
「そう言えばこの前ラブミーティアスのカードを入手したけど一度も使ったことないな」
これのことだ。
背面はこうなっている。プレミアム感……そして数値が半端ない。Nカードの三倍以上ある。
おれは台の前でピンク調のカードを選択して即座にコーデを組んだ。この四枚だ。
曲はBelive it、難易度はVery hardにした。この舞台ならラブミーティアスの性能がさらにブーストされる。さて、いかなるものか。
-ローマ-
「いいなこれ、軽い」
控室にて、この前工房合作売店で運よく「涙目で愛するアナタを引き裂く団」のプリムス・ピウス(首席百人隊長)二人組も愛用していた装備の脚部アーマーを手に入れた。
「シュッシュッ、シュー!」小躍りからの三連回し蹴り、脚部アーマーはまるで自部の増生した皮膚のように足にフィットしている。
「あいつら、こんないいモンを使いやがって……」
頭の中に二人の高慢な顔が浮かべる。この間の認定大会で一度だけ会ったが、それはまた別の話だ。
「さて、上半身と下半身は……これでいいか」
自分が持っているAmorの中で色合いが近い奴を選択して着込んだ。いつも「剣闘は戦闘でありショーである。ショーの成功は即ち富を意味する。常に舞台効果に気遣うべし」と言っているストラウベリーもこれで文句ないはずだ。
「ドゥーム、出番だ」
「おう」
衛兵に導かれ、ドゥームはアリーナに入場した。
-現実-
(おいおいおい……まじかよ)
アクセサリーカードをスキャンして赤ボタンを押し、新作ボーナスなど色々出た結果。Appealポイントは個人剣闘史上初の3000台まで上がった。
(一枚のカードでこんなに差が……おれは今まで地味にカード集めて練習するのは一体……)
ゲームの本質が見えて、無限に広がる暗黒に触れた気がした。
(いや……違う。おれの剣闘道はトレードなど小細工が要らない、装備面が不足でも、技術で勝つ!そう決めたんだ!)
実際おれは技術面も大したことなく、なんとかして激ムズレベルでフルコンボできる程度だ。この間はほぼすべての曲を全パーフェクト判定できる少年剣闘士を見て絶望しかかった。これはまた別の話。
画面中DOOMはヨガーボールを踏んで飛び上がり、三枚のカードをゴースルーしてスーパーヒーロー着地をきめた。気を引き締めて行こう。おれは画面に集中した。
-ローマ-
「涙目で愛するアナタを引き裂く団のすね当てがなんだ!別に羨ましくないからな!」
「よっと!」
ポセイドンの力を封じ込んだといわれるバールシェル一式を固めた対戦相手のレイメが繰り出すトライデント突きをバックステップで飛び下がって回避!
「これじゃ避けられないだろうーッ!」
相手は当時にトライデントを肩の上に構え、着地の瞬間を狙って投擲!
「(トッタリー!)
これほど近距離での全力投擲だ、避けられるはずなし、たとえ死ななくても致命傷。レイメは自分の勝利を確信した。
しかしドゥームは足が地面に触れた瞬間、背、腹部、臀部、太腿、脛、コアマッスルより力が送り込まれ、地面の固い黄土が爆ぜるほどに地面を蹴り、爆発の推進力でダッシュした。額が土に擦るほどの低姿勢。ビュン、トライデントは上に空を切って後方へ飛んだ。
「バカなっ」
それがレイメの最後のセリフとなった。通り抜けさま、勢い付けたドゥームの大鎌めいた飛びまわし蹴りが顔面にクリーンヒットし、そのまま彼女の首を刎ねた。そう、首を蹴り跳ねったのである!
ぐるぐる回転しながら放物線を描く剣闘士の首を観客席の少年がキャッチした同時に、切断面から血が噴き出しながら、首なし死体が血に膝ついた。
「「「「ウオオオオオオオー!!!」」」」
観客のなかに青ざめる者、手で口を覆う者、気を失う者のいるが、歓声を上げてドゥームの勝利を祝福する者が最も多かった。
「おいおい、また終わって……終わってる!?」
振り返り、未だに断面から血が湧き出るレイメの死体を目にしたドゥームは逆に訝しんだ。あの蹴りで首がちぎれると予想しなかったからだ。
「「「ドゥーム!ドゥーム!ドゥーム!ドゥーム!」」」
「あはは……」
自分の名前を呼んでいる観客に、ドゥームは笑顔をつくり手を振った。少年は驚愕の表情に凍りついたままのなま首を高く掲げている。
「これは、ちと強すぎたか」
ドゥームはすね当てを見て呟いた。
-現実-
(マジかよ)
GoodとVery goodもたくさん出た、いつものプレイにもかかわらず、二回目のスペシャルアピールで採点バーがすでに頂上にまで登った。
(ヌルゲーになってる)
ボタンを連打して5000点のFEVER BONUSを稼ぐ。終了スコアは簡単にも一万超えた。
レリックカードでは全Perfectでもない限り到達できない数字だ。芸能人はカードが命、か。とりあえず今は久しぶりの高得点に喜ぶとしよう。
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