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ヘッドスキン4

前回

久々のシャバの空気はおいしかったし、久しぶりのお母さんが作ったごはんは今まで食べたどの料理よりも美味かった。ダニのにおいがしないベッドでレイプや暴行に恐れることなく朝までぐっすり眠れて、私は自由の大切さを噛み締めました。

けれどいつまでも自由のままではいられません、いい歳の大人が働きもせず両親に養われわけにはいかないし、何よりまた見ぬスキンヘッドと出会いたいのです。私は履歴書を作成し、クローゼットの奥からスーツを引きずり出し、首のハーケンクロイツのタトゥーを湿布で覆い隠してハローワークに赴きました。

「単刀直入に言います、てめえみたいな犯罪者の屑にやらせる仕事はこの街にはねえ」

と強面の職員さんが言いました。よく見たら彼は耳がわいて、拳が丸くなっています。格闘技を打ち込んでいるようです。どうりで前科持ちに対して強気でいられます。もし私がムショ経験がなければ彼に怖気づいたところでしょう。

「犯罪者は皆うそつきだ。おもては後悔しているふりをして大人しくしいても、頭の中は常に悪いことばかり考えている。これは偏見ではなく、経験だ。善良な雇用主にお前のような悪人を遣るわけにはいかない。溝鼠のように日が届かないところで卑しく生きることだな」

なんてひどいことを言うんですか!しかし頭の中は常に悪いことばかり考えているところだけは認めましょう。面談中はずっと彼の角刈り頭をスキンヘッドにするのを想像してました。

こうして就活に挫折した私は未来とスキンヘッドのこと考えつつ、帰路につきました。その途中で小さな理髪店を見かけました。サインポールが潤滑が不足でぎこーきこーと鳴りながら回っている。店内は空間が狭く、バーバーチェア2つしかない。店主らしき初老の男が奥の席に座って新聞紙を読んでいる。、どいう意味がわからないがなかなかいい味を出しています、と思って私は自分の頭を撫でました。昨日自分でバリカンで刈ったばかりで髪の毛がほんの少ししかないが、まあいいでしょう。私は店のドアを押して中に入りました。

「いらっしゃいま……せ?」

スキンヘッドの私を見て、店主が困惑の様子でした。丸刈りにしてくださいと言うと、さらに困惑しました。

「お客さんは髪の毛が十分短いけど、それでも刈るのかい?正常料金をいただくよ?はぁ、わかりましたよ。全くわざわざ店でやるもんかね……」

店主は愚痴りながら私にケープを巻きつけ、頭にホットタオルを1分間被せたあと、頭皮全体にシェービングクリームを塗りました。

2分間を経てそろそろ皮膚がクリームに馴染んだところ、店主はエブロンから一枚刃のカミソリを取り出しました。柄は光沢のある黒色のなかに白い線が入っている水牛角製。職人が道具を洒落るのは反対しないけど、初手で一枚刃を使うのはかなり強気です。ちょっと頭皮の安否が心配になってきました。

「心配なさんな、お客さん。必ず傷ひとつのないツルピカになって帰っていただくよ。ほら、じっとしてな……」

店主はそう言い、カミソリの刃を私の頭皮に当てました。これが今までに最高の理髪体験になることを、私は思いもしませんでした。

(続く)

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