I became SAGA in 佐賀
潮風。有明海。泥の上に跳ねるムツゴロウ。大きなハサミを振ってアピールするシオマネキ。
「ウボァァァァ……」
そしてそれらの生き物を捕食しようとしている泥にまみれたゾンビ。泥に足を取られ、躓きながら魚とカニに近づくも、その鈍い動きが干潟に適応した動物に気づかれて、一目散された。「ウボァッ!」ゾンビが顔を下に向けてボチャンと泥の中に倒れた。その哀れな後頭部に狙い定めようと努めた。
リアサイト、フロントサイトを一直線に、距離を考慮しエイムちょっと上にずらして、息を止めて、トリガー。
BLAM!爆裂音と共に肩に強い衝撃。弾がゾンビの頭上を切って飛んでいき、泥をわずかに撥ね上げた。
BLAM!すぐ隣となりからも銃声。銃弾が正確にゾンビの頭をぶち抜いて、赤黒い腐敗液が噴きあがった。
「ウォーフー!ブルズアイ!」隣ブロックにいる豹頭の男が上機嫌に宣告した。
「やりますなタイラダさん。ヒットマンでもやっていけそうなナイショッでしたね」
「元軍人に褒めて頂いて光栄です。一応佐賀県民なのでこれぐらいできないとヤバイすよ」
「まじか!?佐賀県民こえー。僕は一発も当たってないから佐賀じゃあやってけないなぁ~アーミーなのに情けない」
「ふはは。アクズメさんって確か装甲車の運転手でしたっけ。轢だって立派な殺し方ですよ」
「そうなると洗車が大変なのでNG」
この後しばらく撃ち続けた。命中率が上がる様子が見れない僕はやけになって3点バーストに切り替えてバンバン撃って、ガンガン外した。やがて5千円で購入したマガジン2個分を消耗しきった。俺はヒット16にキル0の情けない成績に対し、タイラダはヒット45でキル11だ。佐賀じゃこれが普通ってマジ?恐ろしすぎるな。あまりイキらないように心しておこう。
「そろそろ行きましょうかね」
「ですね」
僕はマットから体を起こし、薬莢を集めてボーチに詰めて、梯子で堤防に増設した射撃台から降りた。マガジンとボーチ、防弾チョッキを射的業者に返済した。
「ここら辺はですね、11月になるとシチメンソウの葉が赤くなって、当たり一面全部赤色に染まりますよ」
駐車場に向かう途中に、タイラダは沿岸に生えている今は特に変哲もない草むらを指して言った。
「へぇー、11月か……待ち遠しいね。しかしそん時はアレが獲れないでしょう?」
「アレは6月から10月までが旬ですからね」
2人分のライフルをトランクに詰めて、助手席にケツを落とした。豹頭男なのでその愛車はもちろんJAGUAR、しかもJAGUAR XJRだ。周りがおもちゃみたいな軽自動車ばかりの駐車場の中で強烈な存在感を放っている。まるで羊の中に紛れ込んだ肉食獣だ。乗客でしかない僕まで少々優越感を覚えた。
「ディナーがまた早いんで、佐賀に戻ってカフェとかでプリキュアを語りませんか?」
「アー、いいですね。そうしましょう」
「OK、じゃあ行きましょう!」
豹頭男はアクセスを踏んでエンジンを唸らせ、片手でハンドルを切った。ギィーッと痕を残し、JUAGAR XJRが駐車場を後にした。スマホとBluetooth同期した車載スピーカーから『Viva!Spark!トロピカジュ~ル!プリキュア』が爆音で流れ始めた!
『Let's Spark ハッチャケちゃえ!Viva プリキュア!』
「「光を追いかけ YEAH~!!!」」
熱唱!ふたりはプリオタ!
僕の名はアクズメ、日本が大好きなKAI-GAI人だ。日本の佐賀県に観光に来ている。
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