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スーパーパワーにご用心

 日夜問わず、24時間賑わっているnoteの整然としたエメラルドグリーンの大通り、俺は黒い馬掛と縁のない丸い帽子を被って、清末と民国初期のチャイニーズといった格好で歩み進む。道沿いの店に小難しい哲学的文章、挿絵つき育児日記、啓蒙的漫画が展示され、道行く人々がそれらを賛賞し、ハートを投げる。嫌味に聞こえるかもしれないが、正直大通りで飾れられるような洒落た作品にあまり興味がない。noteに来る度は大体あそこにしか用が無いのだ。

 路地に入り、ごみが散乱し、室外機のモーター音が轟く道を少し歩き、さらに狭いに道に回りこむ。向こうから来ているガラス瓶ケースを載せた台車を引いている長身の爺さんに会釈した。ケースの中はライムの切れ端をねじ込んだコロナビールの瓶ばかりだ。目的地近い。

 路地の終着点、ビルとビルに囲まれた空間に時代錯誤の18世紀北米開拓時代風の木造建築が佇んでいる。ここはBar『メキシコ』、パルプスリンガーズと呼ばれる暴力、人死、アウトロー、胡乱、暴力の文章を書いている連中の溜まり場だ。俺はここの雰囲気が好きで週に何回来て、書きあげた作品を見せている。今日もそのために来た。店の前で懐に納めている大事な原稿を上着越しに触り、スキがたくさんもらえるように祈ると、おれはスウィングドアを押した。

「ぐわああああ!」「うおっ!?」

 店に入った途端、目の前に広い男の背中がぶつかってきて、危うく顛倒しながらも俺が両手で受け止めた。俺も知っているプロレスラーめいた豪壮な男だ。彼の肩越しに、モーニングスターを回しながら迫りくるはだけたアロハシャツと天狗面の男が目に入った。

「よおし、そのまま動くなよォー!」

 血走った天狗の目に射止められ、俺は失禁しかけて、動きたくても動けない。周囲の連中は手に握っているコロナの瓶を振りながら「ファイ!ファイ!ファイ!」とリズミカルに叫んでいる。まるでファイトクラブだ。

「ウォオリャァァー!」

 天狗がモーニングスターを振り下ろし、遠心力をかけられた棘付き鉄球が流星の如く軌道を描き、プロレスラーの頭蓋骨を砕いた。脳漿と血液がプッシャァァァ!と吹き出し天狗の顔、もといお面を汚した。

「ムン」プロレスラーは地面にバウンドし、数度痙攣した後にお動かなくなった。

「WARハーッハッハ!おれはすごい!」

 天狗はエンションが上がり、戦いに勝利した剣闘士みたいに両手を広げて完成を受けた。

「75万ゲットだぜ!次はだれだぁ!」

 天狗は天井近くにあるLED看板に指差しした。看板に「人類を損させないための天狗への送金」が225/500000000と表示している。

「私がやる」

 観戦者の中から、頭にモーターを被り、全身に冷機を漂わせる冷蔵庫人間が進み出た。その右手に知らない人から送ってきたアサシンブレートが装着され、カッチャン、カッチャンと威嚇的出入りしている。

「ひひぇ……」

 観衆の注意力が冷蔵庫人間に向かっている隙を見て、俺は店の隅へ逃げこんでテーブルにもたれた。

「なんて日だ……」「いつものことだろ」「あっ」

 このテーブルに先客がいた。橙色の僧服を着た筋骨隆々の修行者風の男、ジュクゴマスターだ。この騒がしいバーの中で広げた分厚い熟語辞典を見ながら書道している、奥ゆかしい。

「こんにちは、師傅。ちょっと状況が飲み込めないのですが……」

「天狗の奴は自分を労働させることは人類の損失とはしゃいでいたら、いつの間に天狗に負けた奴は75万払うルールの死闘になった。いつも通りさ」

「ほえー、そんなんすか」

「きみは参加しないのかい?合法に天狗をぶちのめすチャンスだぞ?」

「いや、荒事は得意じゃないんで……今日は新しいnoteを貼りに来ただけです」俺はそう言い、懐から原稿を取り出し、壁の空いたところに押し付けてピンを刺した。「でもこの様子じゃ、だれも読んでくれないでしょうね……はは……あっ」

 貼り終わってから数秒も経っていない内すでにスキが1付いた。他でもなく後ろにいるジュクゴマスターからだ。

「早っ、ちゃんと読みましたか!?」「ああ、五千次の小説ぐらい数秒で読み終わる。今回も面白かったぞ」「マジすか!ありがとうございます!」「こちらこそいつも楽しいストーリーを提供してくれて礼を言いたい」「マスターさん……」

 俺は泣きそうになった。ジュクゴマスターは俺が認めるnote聖人君子の一人で、ほぼすべてのnoteを呼んでくれた上でスキを押してくれる。なのに俺は彼の大作をほとんど読んでいない。貰ってばかりだ。自分が恥ずかしい。

「ところで、R・Vは見当たらないですね?どこにいるんです?」

「彼なら今朝冒険に出かけたぞ。なんか怪獣が出たと噂あって、その調査を」

「冒険か……いいなぁ、いつになったら連れて行ってもらえるだろう」

 R・Vはここ最近毎日冒険に出かけて生活が充実している、まるでアドベンチャータイムだ。

「そんなに冒険がしたいならわたしと組まないか?沼地にデジタルアフリカマイマイが大繁殖で塩撒きの人手を一人でも多く必要だそうだ」

「ごめん、陸生軟体動物は苦手なのでパス」

「そうか、残念だ」

 と言いながら、ジュクゴマスターの顔に残念な顔色が見れず、視線を筆と用紙に落として書道を続けた。

「WARハーッハッハ!「ブシューーーン!」

 ファイトクラブの方に、天狗は床に倒れている冷蔵庫人間に連続ヤクザキックを見舞い、モーターヘッドがひしゃげて、冷気が溢れだす!

「うわっ、このままでは本当に5億集まるかもしれないぞ」

 俺はその暴力光景をみて呟いた。

「よし、できた」一方ジュクゴマスターは満足に書道用紙を持ち上げた、薄い用紙に墨汁が染み込んで、背面に透け通っている。書道教養のない俺でもわかる見事な隷書体で書かれた『雷、霆、万、鈞』の四字熟語。

 ジュクゴマスターは僧服をはだけると、空に浮かぶ四つの機械腕を備えたソウルアバターを召喚した。FalloutシリーズのMr.Handyに似ていたあれの実体は個人用高速タトゥー彫り機、ジュクゴマスターがその神の力を発揮するには不可欠な存在だ。

『ごきげんよう、マスター。今日のジュクゴは決めましたか?』「ああ、これを入れてくれ」『かしこまりました』

 ジュクゴマスターは用紙を掲げ、機会SAがそれをスキャンした。

「師傅、なにをしているんです?」

「見て分かるだろ、戦う準備だ」

 ジュクゴマスターの背中に、彫り機が高速に四本の腕を動かし、タトゥーを彫っていく。

「こんな熱い戦場を用意してくれたん。戦わないと損だろ」

「そんな!天狗は倫理のないサイコパスですよ!負けたら75万もむし取られ……」

「心配ない。このジュクゴがあれば」彫り機が毛布で残ったインクと血液を拭き取り、タトゥーを仕上げた。『雷、霆、万、鈞』の四字が白く輝き、ジュクゴマスターの背筋の動きにつられてで蠢いている。「負ける気がしない」

 そこまで言うのなら俺はもう引き留めはしない。ジュクゴマスターは立ち上がり、ファイト場へ向かった。

「天狗よ!次は拙僧が相手だ!」「WARハーッハッハ!次のカモが来たぜ!

 動かなくなった冷蔵庫人間をダメ押しにモーニングスターを振り下ろし、モーターヘッドを完全に破壊した天狗は獰猛に笑った。お面をかぶっているにも関わらず、その下のサイコ顔が容易に想像できる。

 天狗は手中のモーニングスターをぶん回して加速!それに対し、ジュクゴマスターは背中のタトゥーを輝かせ、ジュクゴの力を汲み取る!

「いいね!どうやらここがクライマックスだ!」天狗がモーニングスター左右に交錯に振って∞の軌跡を描く。「だが勝つのはおれだ!おれはすごい!ウォオリャアアアアー!!」遠心力を乗せた鉄球がジュクゴマスターを襲う!

「ぬおおおおおおー!!」ジュクゴマスターが咆哮!雷、霆、万、鈞!背中から生じた雷電は両腕に集い、握りしまた双拳が膨大なエネルギーを込めて青白く発光!そして。

DDOOOOOOOM!

 ジュクゴマスターは左右の拳をぶつけ合い、圧縮エネルギーが爆発し、光と熱は半径5メートル内の物を蒸発し、20メートル内の物を吹き飛ばした。

 結果的に言えば、Bar『メキシコ』とその中にいる者が、跡形もなく破壊された。無事でいられるのはジュクゴ力に守られてた爆心地であるジュクゴマスターだけだった。

「Oops」自分のやらかしたことにジュクゴマスターは両手で口元を覆った。「ちょっとやり過ぎてしまった」

 8時間後、システム復旧によりBarと中にいる連中が無事再構築され、天狗にやられた者も蘇生できた。Bar『メキシコ』は今後、店内乱闘をする際にスーパーパワーの使用を禁止しとルールに登録したとさ。

このnoteはフィクションです。実在するnoteユーザーに一さ関係ありません


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