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異常者が東京を練り歩く

私が考えた日本の行ってはいけない場所が3つある。
1つめは休日の東京駅、駅地下も含めて。とにかく人が混んで疲れる。
2つめは休日の秋葉原。混んでる上にオタクどもが発した瘴気的なものが癪に障る。
3つめは京都市全体。まさにヘル・オン・アースだった。魅力的ではあるがもう一回行くかと聞かれたら躊躇してしまう。

しかしあろうことか私が土曜日の午後、東京駅一番街のプリズムストーンの前に来ていた。

時刻は13時ちょうど。私は気を引き締めて備えていた。この日のために色々準備してきた。リュックに色んな道具を仕込んで、服も気合いが入っている。ピンクの献血キャップ、ピンクのキン肉マンビッグボティTシャツにスカイブルーのショートパンツでアイドル性(アイドルコンテンツにヘアカラーがピンクとスカイブルーのキャラが必ず一人いるぐらいポピュラーなんだ)と動きやすさを両立させたコーデだ。だめ押しに午前は浅草の漢方屋でヤツメ鰻の春巻きを食べてバフをかけた。

滋養のある味だった

通常の相手ならもはや圧勝も当然だが、これから会う相手は一筋縄に行かない。俺はいい歳して女児向けアニメやアーケードゲームに熱心の異常者だが、彼は私以上に広く深く女児向けコンテンツに愛し、たまに情緒も崩壊したりする。いわばグレーター異常者だ。一瞬の油断も許されないだろう。

「もしかしてアクズメさんですか?」

いきなり話しかけられた。こんな感じの男に。

すぐ彼だと分かった。事前に互いの格好を共有したからだ。概ねアイコンに描かれた通り優しい雰囲気の男であった。その名は小林白菜、プロのライターであり異常者だ。

「お初目にかかります、白菜さん。アクズメです。ではさっそくプリズムストーン見に行きましょうか」
「はい」

彼とは何回スペースで交流したことがある。世間話を省いて今や唯一残っているプリティシリーズの公式ショップであるプリズムストーン東京駅店に侵入。

「わあ、色んなグッズが揃っていますね。アクズメさんはなにか目当てのものがありますか?」
「いや、私は現役でプリチャンアイドルをやっているので、ここに映っているキャラたちが全員敵として認識していいるんですよ。わざと敵に貢ぐことはないでしょう」
「そこまで敵愾心を燃やさなくても……」

プリズムストーン堪能した後はプリティストアに侵攻するつもりだったが、残念ながら店舗はリニュアル工事のため営業しておらず、プリズムストーンの付近にカートを出して小規模のグッズ販売を行っていた。

「これは……BANDAIが私にプリキュアのグッズを買わせないための作戦なのでは?」
「あり得ますね。だったらここで買えるだけでたくさん買わないとですね」

白菜さんがこむぎぬいぐるみとかアクスタとかたくさん買った。私はノートブック1冊だけを購入した。最近はアクスタ買っても飾ることなく引き出しに寝かせるばかりなので自制している。

「しかも東京駅は人が多すぎですね。そろそろどこか静かなな場所に行って異常雑談会にしませんか?」
「そうですね。とりあえずなんかよさそうなカフェとかでも行きましょう」

そしてふたりは徒歩に神田やってきた。ここはうなぎ専門店が多数存在して対イール聖戦の前線だと聞くが、今回の目的は聖戦ではない。

「ここがよさそうですね。行きましょう」
「はい」

白菜さんの提案でチェーンのコーヒーショプに入るが、店はそれなりに混んでおり二人が座れるテーブル席は残り1つしかなかった。しかも隣に女子の学生さんが教科を広げて勉強に励んでいる。

「さすがにとなりで異常会話をすると邪魔になっちゃうかな……」

と白菜さんが着席に躊躇した。優しいね。しかし他に選択肢もないので結局その席に座った。外でお勉強すると他人の会話で集中力が切れるリスクは常にある。異常者がふたりも隣にいたことは学生さんの不運でしかなかった。

それぞれドリンクを入手して席の使用権を得て、ふたりは体制を整った。

「それでは始めていきましょうか」
「始めましょう、異常雑談会 IN TOKYO!まず私から白菜さんにプレゼントがあります。はいどうぞ」
「これは……!」
「我が国の国宝、翠玉白菜のミニモデルを取り付けたティースプーンです」
「わぁ、ありがとうございます~」
「職場で活用してください」

二枚目の写真の下の方のやつだ。

「僕もアイプリのカードを持ってきましたけど、良かったらどうぞ」
「へー、これがアイプリのカードかぁ」

白菜から渡されたのはいかにもプリティなガールのイラストが描かれた樹脂製のカードであった。

「バーコードもQRコードも見当たらないですね……これはどうやって遊ぶんですか?」
「カードを筐体にバっとおいて、スライドしで遊ぶんですよ」

スライド?そういえば仮面ライダーやドラゴンボールのデータカードダスでプレイヤーが狂ったかのようにカードを筐体に擦り付けるの見たことあるけど、あんな感じか?

「やはりよくわかりませんね、謎です」
「実際にやってみた方がいいですね。ちょうど秋葉原が近いんで、あそこなら筐体置いてると思いますよ」
「秋葉原ね……」

先述した通り、私は休日の秋葉原を行ってはいけない場所だと思っている。そしてそれと別に今
私がに秋葉原に行きたくない理由が私にあった。

BANDAI魔殿・アトレ秋葉原

アイカツ!オフィシャルストアが5月16日アトレ秋葉原にオープンしたことはご存知でしょうか?新しいアニメも出さずグッズだけ周期的に新しい物を出してすでに残りかす同然のコンテンツからさらに利益を絞り尽くそう利益を出そうとするBANDAIのことが不毛と思いながらも白菜さんに熱烈に誘われた上に店内でいにしえの筐体がプレイできることを知り、「しょうがねえなぁ一瞥だけでもしてやろうか~」とクローゼットの最深部からいにしえのカードを引っ張り出して白菜さんと一戦交えたいと思ったが、店がオーブンして早々全国、ひいては全世界から異常者が集まって現場は混雑となると予想されるため入店には事前に整理券を予約する必要がある。その整理券の予にはSMSで送信する必要がある。これには珍しく海外の携帯番号も受け付けるようだが、この状況を知ったのは2日前、すでに私が日本に来ていた。そして今回はモバイル通信のみで電話とSMSの受送信ができないプリペイドSIM使用しているため最初から詰んでいた。

「整理券入手できなくて残念でしたね。なんなら僕のスマホを持たせてアクズメさん一人店に行く手もありますが」
「いいんです。別にそこまでして行きたい訳でもないので。白菜さんこそ整理券もらったのに行かなくて大丈夫ですか?BANDAIからなんかペナルティかかりません?」
「それは特にないそうです」
「ならよかった。じゃ秋葉原に行かなくていいですよね」
「いいや、やっぱ行きませんか?まわりたい場所があるんで」

そうなんだ。正直言って後でとこか行くと言われても明確な目標はないし、彼とは良好な異常交友関係を維持したい。しゃーない、行くか。

見知らぬ、作品

「この場所は?」
「ステラマップというコラボ専門のカフェですね。ただいま僕が大好きなスキップとロファーという作品のコラボカフェやっているそうです」
「へーそうなんだ」

そういえば前にXで結構言ってたような。いかに少女漫画チックな絵風だしキャラが景気よく暴力して人が面白く死ななさそうで明らかに私は向けの作品ではない。まあ付き合ってやるけどよ。

「で、ここに入るおつもりで?予約しました?」
「予約はしてないです。なのでちょっと聞いてきます」

白菜さんはそう言ってカウンターへ向かった。この手のコラボカフェは大体厳格の完全予約制を敷いているので入店は厳しいそうだが上手く行くか?しかしフロアに入ってから英語や中国語の話し声が聞こえてくる。世界各地から客が来ているってことかよ?すごい人気だなスキップとロファー。ちなみにメニューはこんな感じ。

「とりあえず登録しておきました。45分にもう一度来いとのことです」
「それじゃ隣のHeyで時間を潰します?」

ゲーセンHey、それは異常者に友好的なゲーセンである。ずらりと並んでいるひみつのアイプリ筐体からその傾向を窺える。

「じゃ、やってみます。白菜さんにレクチャーを頼みます」
「任してください」

コインを筐体に入れてゲームスタートと共にカード1枚が筐体から排出された。今回はリズムゲーム前に排出するタイプか。

「おっ、結構いいカードではないか?」
「そのカードを長方形のスペースに設置してください」
「こうか?おっ?おっおっ?」

カードのデータは読み取られ、カードに描かれたキャラクターが服装そのままモニターに出現!

「ちなみにカード1枚あればゲームは成立しますが、2枚があるとより楽しめる仕様になっています」
「なるほど。ではカードを貸してくださいなるべく強いやつで」
「はい」

カード2名置いたものの、登場キャラは特に増えなかった。またまたわからないことが多いがとりあえず先に進もう。

「うん?プレイする曲を選ばせてくれない感じですけど?」
「カードによって曲が固定されているので」

たくさんカードをゲットして遊ぶ幅を広げてねってことか。

そしてリズムゲームはモニターに表示された枠と線に従ってカードを動かすというこどもちゃれんじのミニゲームみたいな仕様だが、これは大変面白かった。両腕と上半身を使ってカードを動かすことで画面の中で歌い踊るキャラクターとの一体感が強まる。プレイ中は横長モニターから目を離せないので3Dアニメーションを存分に楽しめて没入感じを高める。私はやはり全体を見渡せる横長モニターが好きなんだよね。

残念だが満点に至らなかった。初回だしこれで上手くやったとも言えよう。

プリティーシリーズ名物・謎造語

「いやぁ、めちゃくちゃに面白かったですねアイプリは。早く日本でサ終してみなみの国に来ないかな?」
「また数年間日本のプレイヤーにやらせてくださいお願いします」

またまたやりたいところだが時間なのでステラマップに戻ることにした。しかし時間通りにカウンターに伺ってもすぐ席に案内してもらえなかった。

「少々お持ちくださいですって」
「これはオタクを舐めてるんじゃないですかね?」
「正直そうなんじゃないかと思いますよね……」

入り口でしばらく立ち尽くしていて、やっとスタッフが来て席に案内してくれた。物販エリアの近く、落ち着きのない席だった。

「アクズメさんが好きなものを注文してください。僕が奢りますんで」
「わかりました。ではコースターなどは白菜さんにあげます」
「ありがとうございます」

夕食の時が近いんで、とりあえずデザートとドリンク各1点を注文した。

1000円の割にあまり大きくないプリン。食前だしこれぐらい丁度いいか。ストローベリーは鶏に内臓に見える。

なかなかかわいくできてるじゃねえか

知らないキャラクターのラテ・アート。味は普通。こんなもんか。

「楽しんでますか?白菜さん」
「はい、めちゃくちゃ楽しいですね」
「ならよかった」

鳥KILL族

Arrrrgh……Hunger……やはりチャラチャラとしたコラボカフェは俺と似合わないぜ!体がタンパク質を!塩分を!アルコールを求める!

というわけで鳥貴族に決行。店に入るなり店員が「えっとただいま席が……」と何色を示して場所を移す覚悟ができていたがすぐに「あ、大丈夫です。こちらへどうぞ」と窓際の席に案内された。なんか今日はこんな展開が多いな。ビューがなかなかよくて気分がいい。

焼き鳥はなかなかでかい。

偽ビールもジョッキが大きくてお得な感じ。

肉、酒、異常話題で盛り上がる異常者。なんて充実なんだ。

実は鳥貴族は今度みなみの国で出店するらしい。食レポの需要を感じるので開店して2月ぐらい経って落ち着いてから行こうかね。その時は記事の購読をよろしく。

グッド・バイ

「それじゃ今日はこれでお別れですね。気を付けてお帰りください」
「今日はアクズメさんのあかげで楽しかったです。もしまた東京に来ることがあれば声をかけてください。次こそアトレ秋葉原に行きましょう!」
「いやそれはどうですかねぇ……」

白菜さんと駅前でおさらばした。時間はまた早いが今日はこれまで14時間活動し続けて疲労が溜まったので寄り道せずそのままJRでホテルに戻った。

それでは恒例にアレをやるか。

人間VS.酒、酒の勝利。



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