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ワークハード、ライトハード、リヴハード3 #ppslgr

 まずいぜ。このままでは自信回復ところか、逆に再度自信喪失して人生についていろいろ考えてしまうッ!予定よりたいぶ早くなるが、イチかバチかだ。今日のために温存しておいた最強筋肉で圧倒してもらうぞレイヴン!

「上半身のトレーニングは一旦ここまで。次は下半身をやろう。足は第二の心臓と言われるほど血液のなんかに重要は役割があると、レイヴンもエッセイで書いたね?それも一度や二度ではない、何度も!」
「ああ、足を動かすのはとにかく重要だからな。一日一万歩あるくようにしている」
「ウォーキングもいいんだが、所詮なにもしないで座っているだけと比べてまたマシのレベル!俺からして全ッ、然ッ、足りてない!足がポンプなら、当然回転数の高いモーターをつけたポンプの方がいい!同意?」
「うん、まあ、たしかに、モーターが強くて困ることはねえな。調節機能があればなお良し」
「そのような高性能モーター身につけるため、まさかにこのLEGS PRESSがある!」

 シャープな斜面、左右2本のレールに踏み板、斜めに設置しているシートはまるで上昇中のジェットコースター、或いは小型のマスドライバーの様相だ。

「こいつは優れものだぜ。大腿二頭筋、四頭筋、そして大臀筋を同時に鍛えられる」
「ほぇー凄そう」
「そう、実際俺はこれがすごいのだ!さっきと同じくまず俺がやってみせる」

 25kgプレート12枚+20kgプレート2枚、総重量340kgをセット。背もたれの角度を100°に調整し、シートに座る。

「足はやや外股で踏む。留め具を外す同時に足で押し上げる。フーンッ!こうだ!戻すはゆっくり!両手は基本使わないけど胸の前に腕を組めばクッションになってくれてよりやり易いぞフーンッ!」
「クッションをつけるのちょっとずるくない?」
「フーンッ!競技だったら反則だろうフーンッ!しかしトレーニングならありだフーンッ!レッグスプレスはフーンッ!重りが体より上にあるフーンッ!無理するとフーンッ!足に負担かけすぎて怪我しちゃうぜフンハーッ!!」

 10レップス終了。おびただしい汗が噴き出してシャツを濡らしていく。ふぅ……我ながらいいプレスだ。

「次はレイヴンの番だ。重量はどうする?」
「うーん、このままでいっか」

 やはりそう来たか。背筋と胸筋いい気になりやがっているなレイヴン?

「いやいやいや、やめといたほうがいいぜ。俺だって5年かけてやっとここまで来たんだ。初心者のあんたには荷が重すぎるって。膝が壊れちゃうぜ?」
「忠告ありがとう。でも一回はやらせてくれ。ダメだったら減らすから」
「知らないぞ~」

 レイヴンはシートに座り、踏板に足を当てて留め具を外した。さ、どうなる?

「ホッ……ンンンッ!キッッチィ!ンンーッッ!」

 言わんこっちゃない。素人がいきなり340kgプレスできるわけがないっしょ。

「ンン……ヌゥーンッ!」

 ほう、一回はやりきったか?でもこれでかなり筋力を消耗したと見た。これでは明日の朝は両足が満足に歩けないぜ。

「ヌンンァッ!フゥーンッ!」

 また続くのか?おいおいおいもういいって、そろそろ膝はヤバいんじゃないの?

「だいたいわかったぞ……。フゥーン……ハッ!フゥーン……ハッ!フゥーン……ハッ!フゥーン……」

 おい、おい待て、何が起きている?340kgの負担がかかったレイヴンの両足は曲げては伸ばし、曲げては伸ばし、回数を重ねていくのではないか!8、9、10回を超えて、力尽く様子が見れぬ!俺は腹の中に20㎏のバーベルが沈んでいく感覚を覚えた。13、14……

「ンヌゥ……ナァアアッ!」

 16回!筋トレシャウトを放ち、レイヴンは足を踏み切って留め具をかける。

「シャァッ!ふぅーキツかった!おやじが力石を持たせて山を何往復する修業を思い出すぜ!」

 痛快そうなライヴンに対し、俺のテンションはダンベルラックの隅に置かれている30kgダンベル*のように冷たくなっていた。力石を持って山を歩くだと?力石は現代のような筋トレ器具がない時代に力試しに使う重たい石のことだ。昔の人間はそれを使って筋トレに励んでいた。

 皆さんは荷物を手に持って運ぶことがありますか?数キロしかない物でも、時間が経過につれて腕の筋肉が疲労してくるせいでとてつもなく重く感じませんか?そしたら持ち方など変えて負担を減らそうとしますよね?そんな感じで山道を歩いてたら?全身の筋肉を均衡に使ったハードワークができてしまう。そんな野蛮なトレーニングをこなしたら徹頭徹尾の筋肉お化けになるわ!

「ホイズゥ、おれはエンジンがかかったぜ!次は何やる?」
「あ?おう。続いてこれをやって。目指す3セット。俺は……ちょっとトイレ行ってくるわ」
「わかった」

 トイレの鏡の中にクリス・エヴァンス似のハンサム顔がしわ寄せている。俺だ。

「ハァー……」

 おっかしいなぁ、そんなはずじゃなかったけどなぁ。自信回復計画大失敗だ。嗚呼、ホイズゥよホイズゥ、小説がヘタクソ、先頭の置いては戦力外、自慢だった筋肉まで寝不足でベストコンディションではない筋トレ初心者に及ばない。お前は何一つ成し遂げていない、虚無で無価値の人生だ。今すぐここジムを出て酒を買って、家に帰ってソファー沈んで堕落したい。

 よし決めた。あと項目2つぐらいレイヴンに教えたら帰ろう。誘ったのは俺だし、最低限の接待はやっとおこう。

 顔を洗って、頬を叩いて気合を入れる。あと少しだけ耐えてくれ、砕ける寸前の俺のプライド!あとで肝臓が固まるほど酒を浴びせるからな!

「レイヴンお待た、レッグプレスは順調……あっ」

 トイレから出た俺が目にしたのは、三人のマッチョに囲まれているレイヴンであった。

「YOお兄さん、見ない顔だね?新規会員?」
「体細せえなぁ。ちゃんとプロテインとってる?」
「暑そうな格好してるじゃないか。貧相すぎて肉体を見せるのが恥ずかしいか?うぅん?」

 げっ、アイツら!この時間帯に来ないはずじゃなかったのかよ!?

(続く)

*30kgダンベル:市販品ダンベルにおける最大重量。重すぎる上に馬鹿でかいのでできるトレーニングがかなり限られて扱いにくい。


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