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お肉仮面vs.タコ Ⅱ

「あっ、マヨネーズならうちの冷蔵庫にあるんで、ちょっと取ってくるね」
「助かる。かたじけないパス」
「いいのいいの」
「私が取ってこようか、お肉仮面さん」
「いいのいいの。電楽はここにいてくれ」

お肉仮面さんはそう言ってダイニングルームを出た。しかし一分経っても、彼は帰ってこなかった。

「遅いパズね」
「……」
「様子を見に行かなくていいパスか?」
「お前の口車には乗らないぞ、タコ。お肉仮面さんは私にお前を監視させるために一人でマヨネーズを取りに行った。妙な真似をしたら即爆殺できるようにな」
「パズズズ……すさまじい敵意よ。よいパズ、オレ様は急いでいない、いくらでも待とうパズ」

さらに2分が過ぎた。気まずいに耐えかね、電楽は話題を切り出す。

「聞きたいことがあるけど」
「なにパス?」
「どうやってここに入ったの?この家の半径10メートルは地雷を埋めてキルゾーンにしたはずなんだけど」
「気になるパズか、ならば教えよう。オレ様の触手は運動するための器官のみならず、極めて鋭敏な感覚接収器でもあるパズ!土の表面を触るだけでどこに地雷が埋まっている丸わかりパズ!」
「そんなことが……!じゃ、玄関と廊下のワイヤートラップはどうやって回避したんだ?」
「それも簡単パス、見てろ、バーーズッ!」

オクトパズズは垂直に跳躍し、タコ足を広げる。タコ足がぴたっと天井に貼りつく。

「オレ様のタコ筋肉は強靭かつある程度なら伸縮自在!そして吸盤の吸着力をもってすれば立体的に移動が可能!地面を歩く動物しか対応できない地雷は最早脅威ではないパズ!」
「くっ、浮遊機雷を用意すべきだったか……あっ、せっかく天井に行ったし、ついでにあそこクモの巣を取ってくれない?」
「安い御用パズ」

オクトパズズはぬちゃあ、ぬちゃあと粘っこい音を立てて天井を移動し、タコ足でクモの巣を取った。

「お待たせー、いやぁマヨネーズを探してたらシャウエッセンが目に入ってね、ついつまみ食いしちゃった……ああ!天井に!天井になんで!?」

両手それぞれマヨネーズのチューブを持って帰ってきたお肉仮面は天井に貼りつているオクトパズズを目撃して腰が抜けそうになった。

「おっとすまない、驚かせるつもりじゃなかったパズ」

オクトパズズは天井から降り、四本のタコ足を合わせて奥ゆかしく詫びた。

「本当だよ……危うく心臓がハツになるところだった」
「それは大変!お肉仮面さん、今すぐ病院に行って検査を!」
「オーバーリアクションだよ電楽、僕が大丈夫だ。それよりーー」

お肉仮面は手に持っている2本のチューブをテーブルに置いた。

「キューピーと味の素があったけど、どれにする?」
「ふむ、日本産マヨネーズ開祖であり、卵黄のみ使用する日本マヨネーズ体表格のキューピーさんと、全卵使用でフードロスを抑える精神が尊い味の素さん。どっちも捨てがたいパズが、味に関しては正直ねぇ」
「うん、言いたいことはわかるぜ」

お肉仮面はラーメン屋のシェフみたいに手を込み、頷いた。

「電楽も分っているよな?」
「もちろんです。私はお肉仮面の腸に棲むカイチュウみたいなものなんで」
「例え方が悪いね……ではせーので皆で言いましょうか。せーのー」

「「「味の差がよく分からない」」」

と三人が口を揃えた。

(続く)

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