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お肉仮面vs.タコ

2023年1月25日、日本全土が10以来最強の寒波に見舞われていた。東京は気温が氷点下まで下がり、九州南部までが白銀に染め上げた。

そんなこと関係なしに、暖房が効いた家の中で焼き肉を楽しんでいる人たちがいた。

「お肉仮面さん、こちらは焼き上がりましたよ」

地雷メイクの可愛らしい男、電楽がトングでサイコロステーキを摘んで皿に乗せた。

「ありがとう電楽。頂きます」

顔に生のステーキを被った男、お肉仮面が素早くサイコロステーキを口に運んで、咀嚼した。

「うん、おいしい!やっぱ電楽が肉を焼くの上手いね!」
「うふふ、どういたしまして」
「しかしタコ焼き器をこんな風に使うとはね、さすがクリエイターと言うべきか」

いつもの鉄板や七輪ではなく、今日はタコ焼き器でやっているそうだ。

「はい、買ってから一回しか使わなかったので、サイコロステーキならよく焼けるんじゃないかなと思って」
「なるほど、いいこと思いついたね!まるで祭り来た気分で食欲が上がるぁ」
「うふふ、どんどん食べてくださいね」

お肉仮面がサイコロステーキを貪る様子を見て、電楽もモチベーションが上がってタコ焼き器の窪みに次々とサイコロステーキを投入していく。肉は熱を受けてジューと心躍らせる声をあげる。ダイニングルームは牛脂のにおいと幸せで充満する空間となっていた。

しかしそんな幸せの空間に、招かざる客が訪れた。パーン!ドアが勢いよく開けれ、成人男性ほど身長のあるタコが闖入!

「パズズズズッ!オレ様はタコの悪魔、オクトパズズだ!タコ焼き機の使い方を誤るやつを許さないパズ!」
「え」
「お肉仮面さん、危ないッ!」
「おわっ!」

電楽は要人を護衛するSPのようにお肉仮面を押し倒し、身体でお肉仮面を覆いかぶさった。

「警戒しなくてよいバズ、危害を加える気はないパズよ」
「人んちに侵入しておいて警戒せずにいられるか……ていうか何なんだお前は!?」
「タコの悪魔、オクトパズズ、さっきも言ったパズ」
「そうじゃない!なんでタコが直立して人語で話していると聞いているんだ!」
「オレ様はタコである以前に悪魔パズ」
「会話に意味を見出せないな。よしぶっ殺そう」

電楽はベルトに挟んでいる自家製パイプボムに手を伸ばす。

「まあ、待て電楽」お肉仮面が電楽を阻止した。「本当に何もしてこないそうだし、まずは話を聞いてみようじゃ」
「……お肉仮面さんがそう言うのなら」
「ありがとう。で、タコの悪魔さんよ、タコ焼き機の間違った使い方を許さないと言ってたっけ?」
「そうパズ、それを正すために参ったパズ」
「こんな極寒の中?ご苦労様だねぇ」
「どうでことない、オレ様は使命感に燃えているパズ。具材は来る途中に買い揃えたパズ」

よく見たらオクトパズズタコ足の一本はマイバッグを持っていた。中にキャペツ、ネギ、紅しょうが、タコ焼き粉、鰹節、のり粉末、オタフクソースが入っていた。

「さぁ、タコ焼き機を温めろ!オレ様が本当のタコ焼き機の使い方と本当のタコ焼きを教えてやるバズ!」

とオクトパズズは意気揚々とタコ足で食材を取り出し、テーブルに並ぶ、そこで彼はとあることに気づき、動きが止まる。

「しまった……マヨネーズがないパズ!」

(続く)





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