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婦人科医のシズ先生:バジリスクの章2

「は?」ダビーは守るようにピーコックを抱えた。ニワトリは驚いて「ゴゲッ」と鳴いた。

「だめでしょう!何言ってるんですか!?」

「だって私ヴェットじゃないですしー。ニワトリの中絶なんて知りませんしー」

 シズ更にチェアに沈み込んだ。もはやダビーとピーコックに目を向けていない。

「というか、なぜここに来られたんですか?受付所に愛鳥を見せて予約を取ったんですか?作業員を探し出してきつく締める必要がありますね。ねえジャックさん」

 横に控えていたジスの助手、ナースのジャック(28歳、女性)は難色を示し、躊躇して口を開けた。

「それは……バジリスク案件なので、当院では対抗できる戦力は先生しかいないと院長のご判断を元に手配されましたと」

「あーそうですか。たく私はハンターではなくドクターですけれどぉ」

 もはやシズの目は完全に天井に向けるほどチェアに背を持たれている。

「私は中絶において地球上右に出る者がいないと自慢ですが、ニワトリの中絶は無理ですよ。それでもやると言うのなら殺処分……」

「駄目だ!」ダビーが声を荒げた。「ピーコックは私がチキンコンテストに向けて毎日ドジョウを与えている。見ろこの羽毛の艶!今年は絶対に優勝を取るからここで死なせるわけにはいかない!」

「落ち着いてください。まずは状況を整理しましょう」

 シズは背を丸めて、肘を膝に置いて思考の姿勢を取った。

「なぜピーコックがバジリスクを産むという考えに至りましたか?」
「それは……鶏舎が蛇に侵入されて、そしてピーコックから雌のフェロモンがしたから」
「ほんとうですか?ピーコックが他の雌とよろしくやったんじゃありませんでしたか?」
「あり得ません。喧嘩とストレスを避けるため、ピーコックは快適の選手ケージで単独飼育してます」
「そうでしたか。ピーコックは他のニワトリと接触する機会はないと。しかしピーコックは雄です。仮に蛇にレイプされたらことは本当だとしても、ピーコックは受精しないはず」
「でもエサを食べなくなったですよ。何があったのは確実ですよ!」
「だとしたら考え得る可能性は以下です。貴方が目撃した黒蛇、実は蛇に化けた魔術師、あるいは進化して人間と同等の知能を持つ蛇族の魔術師です。そいつ魔法でピーコックに卵巣を生やし、レイプしたのです」
「「えっ」」

 ダビ―とジャックは同時に声を発した。ピーコックは飼い主の気を知らずに、彼の手の農作業で出来た分厚いタコを熱心につついていた。

(続く)

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