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灰汁詰めのナヴォー

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小説っぽいなにかがあります
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2024年1月の記事一覧

炊飯天尊比羅夫

アジア中部某所、比羅夫の寺院は今日、ただならぬ気配が漂っていました。

宝殿の中に、皮膚が熟したカイエンペッパーのように赤く、背中の筋肉が沸騰した麻辣スープのように漲っている女と、背中に太陽のごとく輝く金色の翼と顔に猛禽類めいたクチバシを備えた男が比羅夫の前に跪いていました。

「アシュラ族の勇士、毘漓。師尊の召喚に応じて参上いたしました」
「ガルダ族の勇士、彌迩。師尊様にお仕え申し上げます」

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ひとんかつ 2

ひとんかつ 2

「お待たせいたしました、とんかつ定食です」
「あっ、どうも」

年齢が大学生ぐらいの男性客がスマホを皿の横に置き、前方に置かれているブルドック中濃ソースを手に取った。とんかつの上に横線を描くようにソースをかけて、キャベツにも少しかける。箸でかつのひと切れをつまみ、口に運ぶ。サクッ、歯がほどよい硬さの衣を破る。ジュワッ、肉繊維がちぎられ、肉汁が溢れる。咀嚼が進むにつれて衣の香ばしさと肉の旨み、そして

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