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新卒一年目にチョコパイを一個30円で売っていた

スーパーの棚にチョコパイが並んでいると、買うつもりはなくても、ついつい値段を確認してしまいます。大体6個パックか9個パックで売っているので、一つ当たりの値段を瞬時に計算し「買い時」「買い時じゃない」と脳内で処理します。そしてその度に、多摩センターで過ごしたベネッセでの新卒一年目を思い出します。

社会人一年目のとき、私は「オフィスグリコ」的なものを自力で運営し始めました。

オフィスに設置されているBOXにお菓子が入っていて、小銭を入れてそれを買う、福利厚生サービス。

ベネッセの東京本部があった多摩地域は、オフィスグリコのサービスエリア外。それでもオフィスグリコに憧れた先輩方が、インターネットでオフィスグリコの箱(お金入れるところがカエルになっていてカワイイ)を入手したらしく、フロアには空BOXだけが転がっていました。

「早朝に来て赤鉛筆を削っていた」部長の話

話は突然入社時の新卒研修に遡ります。研修中、いろんな偉い人の話を聞いたのですが、すごく印象に残っているのがこのエピソードです。

「もう数十年も前になるけど、自分が新卒一年目の時には、何も役に立てるスキルがなかったから、とにかく朝早く来て、赤鉛筆を削って並べていた」

当時はPCなど使わず、紙で制作作業や編集作業をされていたんだと思います。先輩社員が制作や編集で使う赤鉛筆を、彼女は毎朝一番に出社し、きれいに削って並べていたとのこと。

そんな雑用、自慢げに話すことなの?とか
いや、みんな自分で削ればよくない?とか
そんなことするより本でも読んだ方が業務に生きるのでは?とか

いろんな意見はあると思いますが、今の自分にできて、確実に誰かの役に立てることを、毎朝やり続けた姿勢は少なくとも当時の私には刺さったんだろうなと。

しかも、そのエピソードを、何十年経っても、自分がすっごく偉くなっても、一年目の社員に伝えるということは、彼女なりの仕事の流儀として深く根付いていて、彼女自身がこれまでいい仕事ができた理由はここにあると思っていることに他ならず、すごくエッセンスが詰まったエピソードだと思いました。

(もしかしたら「そんな地味なこと求められたら嫌だなぁ」と強く思ったから覚えている説もあるのですが、もはや記憶が曖昧です...)

私がグリコ役やればいいじゃん

私がお菓子を大量に買って、ボックスに詰めて、貯金箱に集まったお金を貰えば成立するんじゃないか?コンビニまで行かなくても、オフィスで気軽にお菓子買えたらみんな喜んでくれるかな?

赤鉛筆を削るとまでいかなくても、みんなの役に立てたら嬉しいな、と、気軽な気持ちで自己流お菓子ボックスを運営し始めました。

お昼休憩のついでに、近くのドラックストアを数軒巡り、セール価格のお菓子を買い込み、ボックスに詰める。カエルがお金を飲み込まなくなったら、小銭を回収する。

もちろん利益を出そうなんて思ってなくて、自分が仕掛けたお菓子ボックスに、人が集まったら嬉しいな、ぐらいの気持ちでした。小さい頃、きれいな石とか、カワイイシールとか集めて、みんなでお店屋さんごっこしていた時の、あのワクワク感です。

チョコパイ30円の難易度

最初に買ったチョコパイが、9個パック298円だったので、一個30円の値付けをしました。じゃがりこは安い時は98円で売っているので、100円の値付けです。

予想外だったのは、チョコパイ9個パック298円は、結構安い時の価格だったこと...そして、チョコパイが予想外に売れることでした。在庫切れを起こさないか、常にヒヤヒヤする日々。

ちょっとぐらい高く買っても、たかだか数十円の世界。全然自分が被ってもいいのですが、擬似店舗オーナーとしてのプライドなのか、それは負けな気がするというか、仕入れ値はちゃんとコントロールしたい!みたいな謎のこだわりで、ドラッグストアやスーパーを見かけると、必ずチョコパイの値段を確認する癖がつきました。自宅周辺のスーパーでも、チョコパイが安かったら迷わず買い、通勤に一時間半もかけて会社に持っていっていました。

コミュニケーションが生まれる

私の座席がある島の、端のキャビネットの上にボックスを設置していたのですが、ボックスのおかげでいろいろな人とのコミュニケーションが生まれました。実はこれが、私の日々の密かな楽しみでした。

夜も更けてきた頃にお菓子を買いにくる先輩と、「今日は頑張る感じですか?」「いやー、メイン訴求がひっくり返りそうだから大変ですよ」みたいな感じで気軽にお話しできたり

「このお菓子●●味も美味しいよね」「じゃあ今度入れておきますね」みたいなやりとりだったり。

バレンタインデーは、みんなでお金を出しあい、ボックスを可愛くデコレーションして、中身をチョコ菓子でいっぱいにしたりもしました。

ちなみにすごくどうでもいいのですが、よく売れたのは、チョコパイ、うまい棒、ブラックサンダー、ぬれ煎餅、歌舞伎揚、じゃがりこでした。

結局どれくらい売れたの?

1年目の途中から始めて、退職する3年目の夏まで継続していたので、約2年間、運営していました。ずっと無造作に封筒に詰め込んでいた売り上げの小銭を、退職にあたってデスクを片付けるときに、一気にデスクにぶちまけ、一枚一枚数えていきました。

正確な金額は覚えていないのですが、多分2万円ぐらいあった記憶です。

1年250営業日として、2年で500営業日だとすると、一日あたり40円の売り上げ。客単価を40円だとすると(ぬれ煎餅2枚)、のべ500人がこのお菓子ボックスを利用してくれた!!

・・・

そんなこんなで、今でもスーパーでチョコパイを見ると、一個あたり30円を下回っていたら衝動的に買い込みたくなります。でも、最近は夫婦でお腹周りのお肉とカロリーを気にしているので、実際に買うことは少なく、とても損した気分になります。

と言いつつ久々にチョコパイを買ったので、ウキウキでタイトルの絵は模写してみました。冷蔵庫で冷やして食べるのがお気に入りです。

Twitterもゆるゆるやっています(@akuchaaan)


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