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シリーズ本当の強さとは?④”身体が大きい・力があることは、本当の強さか?”

剣豪・宮本武蔵が世に遺した『五輪書』の水之巻・第4節の”太刀の持様の事”を以下の通り引用いたします。

「太刀のとりやうは大ゆび人指ひとさしを浮ける心にもち、丈高指(中指)はしめずゆるまず、くすし指小指をしむる心にして持つ也。手の内にはくつろぎの有る事あ(悪)しし。敵をきるものなりとおもひて、太刀をとるべし。敵を切時も手のうちに変りなく、手のすくまざるやうに持べし。若し敵の太刀をはる事、受る事、あたる事、おさゆる事ありとも、大ゆび人さし指ばかりを少し替わる心にして、兎にも角にも、きると思ひて太刀を取るべし。ためしものなどきる時の手の内も、兵法にしてきる時の手の内も、人を切るといふ手の内に替わる事なし、総じて、太刀にても、手にても、いつくと云事を嫌ふ。いつくはしぬる手なり。いつかざるはいきる手也。能く心得べきもの也」

の末節で”いつく”という件があります。

いつく=居着くです。

居着くとは、「外から来たものがそのままそこに住むようになる。住みつく。落ち着いてそこに居る」という解釈になります。

他方、武道では少し意味が異なります。

居着くとは、身体のどこかに”力みや硬さ”もしくは”たるみ”が存在し、次即座に相対する時に正しい動作・所作ができない状態のことを示します。つまり、刀を持っている掌や腕そのものに力が入り過ぎあるいは無力の状態になっているのです。諸説ありますが、”重心を自在に意識して正しいポジションに持っていられるかどうか”とされております。

では、居着いていない状態とは?それは、身体に余計な力みや硬さが一切なく程よく”脱力”され、重心が臍下三寸の箇所に持っていける(意識できる)心身のコントロール下にある体勢です。これを理解している競技者や指導者は、身体と心について相当研究・探究している方々です。その道の一流・超一流そして名人に到達する方々は、必ず”居着いていない”状態に持っていくことができます。

『強さとは、身体が大きい・力があることが全て』とする競技者や指導者も多数存在いたします。否定はしませんが、残念ながらそれらに依存し固執していると、いつか限界が見えてきます。

本当の強さは、居着いていない状態を体現できる方々であります。そこには、身体の大小や力の数値など関与しません。(つづく)

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