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ゲームの紹介テキストを濃く短くする方法 〜例文を添えて〜
個人でゲームを開発しています。少人数で開発しているため書面で誰かと企画を共有する必要がほとんどなく、小汚いメモ書きで済ませてたんですが、最近新しく始めたお仕事で企画書を作る機会が増えました。
企画書制作において難題は色々ありますが、中でも「いかに簡潔に(かつ魅力的に)伝わるテキストを書くか」は悩みどころです。センスがあれば何とかなるのかも知れません、しかし特にセンスがない私は小技を色々アレして何とかしているので、その方法をまとめておきます。
まずは言葉の解像度を上げたい
漫画「鋼の錬金術師」で、めちゃくちゃ寒い地方にいるキャラクターが、温暖な地方から来た女の子に「ピアスをしているとそこから凍傷になるから外せ」というセリフがあったとtwitterで見たことがあります。
温度が低い、吹雪がすごい、などは「寒い地方ってこうなんでしょ?」と、何となく想像できますが「金属を身につけているから凍傷になる」という知識を書けるのは、雪国ご出身の作者ならではと言えるでしょう。雪国在住の読み手には「あるある」と共感を呼び、雪国在住じゃない読み手には「そんなにすごい寒さなのか」と驚きをもって伝わります。
解像度の低い画像がぼんやりしてしまうように、言葉にも「粒度」や「解像度」があり、意識的に上げることで、より魅力的に状況を伝えられたり、面白さが説得力を持ったりするのでしょう。
では実際に、ゲームの企画説明でありそうな「どんなプレイヤーが楽しめるか」を表現するテキストで置き換え、言葉の解像度を上げてみます。
誰でも楽しめる
↓
大人から子供まで楽しめる
↓
僕のおじいちゃん(88歳)が毎日遊んでる
だいぶ鮮やかになったかと思います。
他の例として「どんな風に楽しめるか」を表現するテキストで置き換え、言葉の解像度を上げてみます。
いつでも楽しめる
↓
空き時間で手軽に楽しめる
↓
1マッチ3分でサクッと対戦
解像度を上げれば何でもいいというものではなく、例えば「九州に住んでる母方の祖母が楽しめる」「僕の通学時間なら10回遊べる」とかは逆に伝わりにくくなり、あんまり意味がないですね。
文章の解像度を上げると長くなりがち…短くするには?
上述のように、文章の解像度を上げれば伝わりやすくなるかも知れませんが、修飾語が増え長くなってしまいがちです。頑張って書いたのに、長くなればなるほど読んでもらえなくなる可能性は増え、ジレンマが生まれます。極端な例ですが、同じ内容の企画書があるとして、文章量が少ない方が読んでもらえる確率が上がるでしょう。
「同じ内容で文章の長さを変えることなんてできる?」…と思われるかも知れませんが、頑張って語彙を探して小技を使って何とかすればできなくはない、と私は考えます。以下に例を挙げましょう。
たくさんいる敵の群衆にたった1人で戦いを挑むゲーム。武器を振り回し大技を繰り出し、一気に形勢逆転できる爽快感がある。
↓
一騎当千のハクスラアクション
「ハクスラ」と言えば「ゲーム」という言葉すら省いても伝わってしまいます。利害関係がないなら「無双系」と言い切っちゃうのもありかも知れません。既存のゲーム概念がモデルだと説明しやすいのは強いですね。
他にも「ステルス」「FPS」「ガチャ」など、ゲームの仕組みやジャンルには単独で短くても通じる言葉がたくさんあります。脳内逆引きゲーム用語辞典が充実していればいるほど、短いながらも濃厚な企画書を仕上げることが出来そうです。
以下の例は、私が自作ゲームのストーリーをそれっぽく紹介したくて考えたものです。
幻想的で童話(ただし、お子さん向けではなくややダークな)っぽく、現代とファンタジーの世界を行き来する物語
↓
寓話的ロー・ファンタジー
物語のジャンルについて詳しくなかったため「ファンタジー」という用語について何度も調べまくり、「ファンタジーではなく、現代的な概念も混ざる」世界観のものは「ロー・ファンタジー」と呼ばれるっぽい(実際の定義は割と曖昧だそうです)、と突き止め、マイナーな言葉かと思ったんですが、普通のファンタジーとはちょっと違うんだなということは伝わると考え選びました。
「一騎当千」や「寓話的」といった、短くても言い得て妙な「それだ」という表現は、元々語彙が豊富でなくても、日々考え続けたり調べたりすると何とか絞り出せることがあります。
思い切って削る! でも、どの情報を?
最近読んで、その凄さに圧倒されたのが「New ポケモンスナップ」の紹介文です。丸々引用するのはアレなのでちょっと上記を読んでいただきたいのですが、ここには私の知っている「ポケモンスナップ」の説明がほぼ書かれていません。
私の知っているポケモンスナップとは、「モンスターの素敵な写真を撮るためにはタイミングよく物を投げたり音楽を鳴らしたり、場合によっては何度も同じマップに挑戦する」、どちらかというとアクションや周回などのやり込み要素が濃く見て取れるものです。しかし紹介文、あるいは記事には、それらの要素は書かれておらず、のんびり美しい景色を眺めながら優雅にポケモンを撮影できるゲームっぽく見えます。
めちゃくちゃ売れることが約束された有名なソフトだからどんなテキストでも大丈夫…そんな穿った見方もできますが、
・旧作からのファンはおそらく買ってくれる
・つまり新規参入を促すのが大事=難しいゲームに見えない方が良い
・詳しく知りたい人は公式サイトとか見るんで、ここに書かなくても良い
…などの観点から、ストアの紹介文は商業的に正しいのだと感じました。それにしてもここまで思い切って簡潔にできるものかと舌を巻いています。
文章を短くする「技術」も大切ですが、そもそも「誰に向けたテキストなのか」を精査すると、削るべき箇所が見えてくるのでしょう。
例えば「刀剣乱舞無双」の「ボタン連打で操作できる簡単モード」は、わざわざメディアでも取り上げて推していたようです。これは、ターゲットの多くがソシャゲからの流入であると予想できたため「自分でも操作できるのか?」というファンの不安を和らげるために必要ですね。仮にこの紹介をしなかった場合は売上にまで影響を及ぼしそうで、マーケティング的な理由でも刀剣無双を語る上での必須テキストであると言えるでしょう。
メディアのツイッターが参考になるよ
メディア系のツイートには面白ポイントがぎゅっと詰め込まれていることが多いので、記事自体もさることながら見出しが参考になります。
【ニュース】キリストとなるオープンワールド『I Am Jesus Christ』ベータテスト参加者募集開始。今なら無料で神になれるhttps://t.co/vxPtyMjWGy pic.twitter.com/lRwrsTiAwq
— AUTOMATON(オートマトン) (@AUTOMATONJapan) March 9, 2022
火山の噴火が迫るなか、象形文字を使った未知の言語でなんとか会話を成功させて進むADV『Eloquence』プレビュー。SOWN大賞の最終選考まで残った注目の一作 https://t.co/ibfm4ByMp3 pic.twitter.com/4Eml7bZUia
— IGN Japan (@IGNJapan) October 13, 2021
平凡な男子校生が小さな集落に迷い込む2Dアドベンチャー『春と修羅』が6月24日発売、現在体験版を配信中https://t.co/lG14R33XoV
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) June 16, 2021
柔和な印象のピクセルアートとは裏腹にSteamストアページには「暴力、血、自殺、遺体、殺人、犬状の生き物の死」の文字。本編の発売と同日にサウンドトラックも発売予定 pic.twitter.com/KJOzGOW4iw
こちらは記事自体が参考になります。
文章を書くときは、意識的に「形容詞や副詞」を減らし、動詞で説明するといい
— アプリマーケティング研究所 (@appmarkelabo) December 28, 2021
🙂「ライティングがとにかく楽しい」
↓
😊💻「いつも笑顔でタイピングしてしまう。指が足りないくらい、ライティングが楽しい」
動詞で説明すると脳内に情景がイメージされて伝わる文章になるhttps://t.co/r4ysulBD9S pic.twitter.com/ihRKa4LeYp
その紹介文は、誰の・何のために書くのか?
大手さんのリリースPVなんかを拝見すると、神絵師が描いた美麗キャラ、セリフを声優さんが読み上げ、ド派手なエフェクトの戦闘シーン、壮大な世界観…みたいなやつが多いので、アピールポイントなのだと錯覚してしまいがちですが、個人が企画するゲームや、企画書に書く紹介テキストが同様である必要はないと考えます。
丹精込めて作り上げた大切なキャラクターや世界観をつい企画内容に含めたくなる気持ちも分かります。しかし、いかんせん情報が膨らみがちな項目を、紙面数ページのうち1〜2ページを割いたところで読み手に魅力が全て伝えられるかというと、どうでしょうか。
私も企画書につい仕様的なことを書いてしまうことがありますし、実際に仕様を多く含んだ企画書も見かけますが、現場で用いる「上司に魅力を伝え、通すための企画書」と、個人開発で用いる「チームメンバーと面白さを共有する企画書」、そして就活などに用いる「とにかく読んでもらって会う機会を作る」ための企画書に書くテキストは違って当たり前です。開発現場で必要なのは「現実的であり設計可能な企画である」なのに対し、就活用は「これ書いた人はこういう仕事してくれそう」と伝えるものであるはずです。
企画書とはどんな場合も、面白さを伝えるためのものであることに変わりはありませんが、いずれも読む相手は人間であり、冗長なテキストは相手の時間を奪ってしまう危険性を孕んでいるわけですから、最短距離で心を打てる方法を常に模索しています。
そんな「短くしよう」と呼びかけるはずの記事が3000文字を超えたので、終わります。
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