見出し画像

応募者目線で考える、講談社ゲームクリエイターズラボと集英社GAME BBQとの違い

個人でゲームを開発しています。個人開発者を雑に分類すると「多人数すぎて果たして個人開発なのか謎勢」「なんでも1人でこなす無頼派」、ふたつの中間に位置する「できれば誰かのちからを借りて作りたい」勢の3つにわかれ、私はその中間勢で、講談社「ゲームクリエイターズラボ」や集英社「ゲームクリエイターズキャンプ」の動きはありがたく、注目してきました。

2021年9月に集英社ゲームクリエイターズキャンプの「GAME BBQ vol.1」(以下BBQ)、2021年10月に講談社ゲームクリエイターズラボ第2期(以下GCL)に応募して両社とも最終面談まで進み、それぞれ異なった企画で「優秀賞」と「優秀企画賞」に選出いただきました。

応募する前に「どっちがどう違うの?」と自分なりに色々調べたり、受賞された方のコメントなどを拝見した上で、何となく見えてきたことを個人的な感想としてまとめておきます。

すでに次期募集の話もちらほら出始めたことですし「自分が応募するならどっち向きだろう?」と考えている方のご参考になれば幸いです。ただ、いずれもあくまでネット上にあった情報を拾い集めた私の予想や分析で、合っているかはわかりませんし、次年度は変わることもあるのでご参考までに。

賞金額には大きな違い、でも、ちょっと待てよ

GCLで目に付く特徴といえば、やはり「1000万の支援金」。

公式サイトには「半年で500万、最大2000万円」と書かれているため、金額はあくまで目安なのかも知れません。受賞後、もしゲームが2年で完成しなかったらどうなるのか? 逆に半年で完成した場合は? など、気になるところです。「年間」という「期間」で区切られているということは、例えば専業と副業の人を比べると開発期間が長くかかる人の方がお得になる計算??

ぱっと見、BBQよりGCLの方が賞金がデカイ……と思いがちですが、BBQの方は「開発費全額支援」と書かれています。「年間1000万円では足りなさそう」や「チーム人数や外注が多くなりそう」なプロジェクトなら、もしかするとBBQの方が向いているかも知れません。

気になったのは、BBQの「開発費」に自分の開発費=生活費は含まれるのか? という点。外注費についても、毎回請求書出さないと認められないのかとか、そのあたり事前に知りたかったです。

両方に言えることですが「もうほとんど出来上がったゲームで開発期間半年で出せちゃう」場合はどうなるのかも謎で、この辺りについて私は面接で聞くのをすっかり忘れてたんですが、おそらくリリース後のレベニューシェアなどで調整されるのだと思います。

BBQ:プロジェクトごとに調整され、出資される費用が異なる様子。大きなプロジェクトや複数人チーム向けかも。

GCL:明朗会計でわかりやすく、会計について細かな手続きがなさそう。配当が大きくなる少人数チームや無頼派向きかも。

誰かの力を借りたいか、無頼派か

BBQには優秀賞に「希望者に個別メンターンシップ」と記載されており、「開発にアドバイスをする」という前提で挑んでいるのが分かります。またゲームクリエイターズキャンプの公式Twitterでも「支援タイトルにダメ出しした」といった公式漫画が紹介されており「一緒に作る」という姿勢がうかがえます。

GCLでは「個別に担当がつく」と明記されています。どんな風にちからを貸してくださるかについては、以下のインタビューがわかりやすいかもしれません。

"「刑務所の中の写真を明日までに撮ってこい」と言われると僕らは撮ってこられます。" かっこよ……

なお昨年度の支援者の一人が「色々と注文もあるかと思えばそんな事は無かった」と発言されています。

BBQ:頑張ってくださいより「一緒に頑張りましょう」のスタンス? 相談相手や意見が欲しいという方向けかも。

GCL:一人で何でもこなすが、肝心な時は力を貸して欲しいという無頼派に向いてるかも。

企画書のみか、プレイアブルやモックがあるか?

さてBBQとGCLの明確な違いのひとつに「選考メンバーが誰かはっきりしているかどうか」があります。

BBQは選考メンバーがそれぞれTwitterで「選考メンバーである」と明かしている人が多く見つけやすいのと、CEDECでは顔出しで登壇されていました。

GCLのメンバーではっきり選考メンバーだと知られているのは、編集長の鈴木さん他2〜3名で、いずれも出版業務関連のご出身だったと記憶しております。

私が調べきれてないだけかも知れませんが、以上のことから自分が応募する段階では「GCLの選考メンバーは出版関係者が多い」という認識でおり、GCLは「ゲームが専門ではない人に見せる」という前提で、企画書だけでなくプレイアブルなどがあった方が伝わりやすいかも? と考えました。

一方BBQでは、うろ覚えなんですがどこかで「応募した企画書は選考が終わるまで、結果に影響する可能性があるからSNS等で公開しないで」と書かれており、このことから「世の中に知れ渡っていない企画が向いているのでは?」と考えていました。

BBQ:ゲーム業界出身の担当者が多いと判明しており、企画書のみでも伝わりやすそう。企画で勝負したい人向けかも。

GCL:企画書だけでなくPVやモック、プレイアブルがある方がプラスに働くかもしれない。作るのが得意な人向けかも。

選考で重視される点は何か?

BBQの場合はすべて「キャッチーなワンアイディアがある、斬新なゲーム」が受賞しているように思えました。また、応募要項に「個人または少数チームで完成できると想定される企画」と記載されていたことから、めちゃくちゃ壮大な企画よりも完成を見据えた現実的な内容であることが大切なのでは、と推察されます。

一方Twitterとかでみなさんの分析を拝見すると、GCLは「面白さがわかりやすい企画」が重視されているらしい、とのこと。ただ受賞作品を拝見してみたものの、私の審美眼と分析力は微妙なので「面白そう」以外の共通点や特色を見出すことはできませんでした。

BBQ:キャッチーなワンアイディアがある斬新なゲームであり、完成を前提とした企画が良さそう。

GCL:巷の噂によると、面白さがわかりやすい企画が重視される? (応募された企画書を拝見してみないとなんとも申せません)

間に合うなら両方出した方がいい……?

企画書やモックアップを作るならいっそ両方出しちゃえばいいのでは? と思う方もいらっしゃるでしょう。実際、私以外にも「両方出した」とTwitterで発信されている方をちらほらお見かけしました。確かに、駄目元で両方出して見る、というのは悪くないと思います。

デメリットがあるとすれば、「両方最終選考まで残った場合、どちらかを辞退しなければならない可能性がある」ことです。そんなこと滅多にないから心配しなくてもいいんじゃない、と思われるかも知れません。でも私もそう思っていました。私の場合は両社でそれぞれ異なる企画が通ったことで、結果発表まで一体何から手をつけていいのかわからない状態が数週間続き、ゲーム開発そのものが一時的にスタックしてしまったと言っても過言ではありません。また実際にBBQで大賞に選考されたチームはGCLの二次選考までお名前があったので、GCLを辞退されたのではないかと推察されます。

場合によっては最終的に断腸の思いをすることになる可能性がある、のですが、そんなこと心配せず両方思い切って出しちゃおう、心配するのはそれからでいいじゃない、と言えるのか……私は辛かったので、何とも言えません。

そして両社とも(次回コンテストも応募締め切りに変わりがなければおそらく)最終結果発表は3月頃なので、生活環境や仕事が変わる可能性のある方は注意が必要です。

応募するならどっち?

支援金や賞金額に目が行きがちですが、ゲーム制作は大抵先が長いものなので、受賞のその先、支援体制がどのようなもので自分に合っているか、どういう姿勢で接してもらえそうなのか両社の実績や発言からある程度推察しておく必要があります。どんなに物件がよくて安くても管理会社ク◯だったらその後の生活ク◯(私が今住んでるマンション)みたいな「こんなはずじゃなかった」ミスマッチは避けたいところ。

粗大ゴミシール貼らずに出されたベッドマットが数ヶ月放置されてんよ

両社いずれのメンバーも、個人開発業界の片隅でプルプル震えているような私が多少頑張ったところで本来お会いすることすら叶わない人たちです。ご縁ができる可能性があるだけでもありがたい流れで、ぎりぎりそういう時代に自分が間に合ってよかったです。

おまけ:両社の決算

2社のインディー支援計画が発表された当初、業界事情に詳しくない私は「出版業会は紙媒体が斜陽だし、違法アップロードされたりで経営が芳しくないから、インディーゲームがお金になると思って始めたのかなぁ〜?」などと失礼ながら思っていました。

ちなみに、講談社さんと集英社さんの決算一覧は上下逆に並んでおり、講談社さんが旧→新、集英社さんが新→旧の並びになっています

……すんませんでした!!

あのー近年アニメも好調で、世界への進出も盛ん、紙媒体の印刷費が逆に節約できたりしてますし、何より長年蓄積されてきた底力で業績を伸ばされてるんでしょうねきっと!

数百万数千万とは開発にとってはした金だ、という人もいますが、わざわざ部署を作りこれだけのお金と貴重な人材を割いているわけです。ビジネスの対象として見てもらえるのは本当ありがたいので、これからも末永く続いて個人開発を盛り上げていただけるととても嬉しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?