見出し画像

この契約書、サインして大丈夫? 〜個人ゲーム開発者が弁護士さんに相談してみた〜

個人でゲームを開発しています。最近、某社さんと契約を締結するにあたり不安要素があったため、思い切って弁護士さんに相談してみました。経緯と結果を書き留めておきます。

守秘義務もあるので時期や規模など内容をぼかして書きますが、ご参考になれば幸いです。

弁護士さんを頼ろうと思ったきっかけは「お金」問題

2022年、私は某Z社さんから受託する形でゲームを開発していました。業務開始時点でいただいた発注書に金額も明示されており粛々と開発を進めていたのですが、途中で「支払われると思っていたお金が振り込まれていない」事案が発生。

ちょうど同時期、遅れて受け取った契約書の内容を改めて読み返してみたところ、「支払われる条件」には開発の出来不出来に由来する項目もあり、なんというか「解釈によってはどうとでもとれる部分」がなくはない。

まさか、サインしたら支払われなくなる可能性があったりしない?

発注書はもらってるし金額も記載されてるから大丈夫なのでは? とネットで検索してみるも情報が少なく、中には私が受理した内容では法的根拠にならない、とする記述も見つかりました。

経過を考えると「払えません」なんてことをZ社さんや担当者さんが主張するとは思えない。しかし、実は払ってもらえると思ってたのは私だけだったみたいな壮大な勘違いもありうるのでは? 

Z社さんにしれっと聞けばいいんですけど、この頃色々あって疲れていた私は頭が回らず、もしこれがこうならこうだがこうだとしたらこう、みたいなif条件分岐にマイナス思考が重なり、精神状態があまりよろしくなくなってきたので、弁護士さんを頼ることに決めました。

面談までの経緯と流れ

希望条件を整理する

-早めに相談したい
-直接相談したくなった時のため、近場に事務所があるところがよい
-だが私は出不精なので基本はオンラインで相談したい
-一等地にある事務所だと維持費用が高くて相談料に反映されそうなので町外れがいいかも
-お1人じゃなくて何人かいそうなところ(連絡がつきやすそう、適任を紹介してもらえそう)
-金額の目安が事前にある程度わかるところ
-できれば契約や著作権に詳しいところ

弁護士さんの探し方が分からない

Facebookでどなたかいい弁護士さん知りませんかと発信してみたんですが、特に反応もなく終わったため、弁護士さんをソートで検索できるサイトで探すことにしました。

希望条件のうち「契約や著作権に詳しいところ」に関してのみ、該当する弁護士さんを近場で探すことができなかったため、それ以外の条件を優先してA弁護士事務所さんに決定し、フォームから連絡。

翌日、ご所属のB弁護士から返信がありました。

相談料の提示

相談内容を事前に概ね伝えておいたところ、初回のメールで「1時間/11,000円」「内容にもよるが、おそらく1時間半〜3時間程度で済む」とはっきり提示がありました。お金の話で困っているときにお金の交渉をせずに済むの助かる。

もしかしたらよそと相見積もりなどするべきかも知れませんが、ネットで調べた限りどこも概ねこんな感じの値段だったのと、迷うとさらに疲れるので即決で相談を進めることにしました。

相談したい内容を整理、まずメールで質問

1.支払いを請求する権利がある発注書・契約書か
2.著作権等の取扱いについて私に不利なことが書かれていないか確認
3.その他、細々したこと

当時は連休を挟んでおり相談日は数日後になりそうだったので、一番の心配ごとだった「未払い」について、先んじて契約書と発注書を添付し、相談したい内容と併せて「支払いを請求する権利について教えて欲しい」旨メールしたところ、"結論から申しますと(主に発注書から判断して)請求する権利はあります"と言い切り型の返信をいただきあっもう頼んでよかったとこの時点で思いました。

さらに「弁護士さんに相談中なので返事を待って欲しい」等、Z社さんに言っても構わないか、B弁護士にメールで尋ねたところ、

"問題ありません。場合によっては、事務所名や私の名前を出していただいても大丈夫です"

……カッケェー!!

安心してZ社さんに支払いの件どうなってますか?  とメールします。この時点でよろしくなかった精神状態はかなり回復しました。

支払いの返信を待つ間に面談日程を決定

その後メールで数回やりとりし、面談日を確定。事前にB弁護士から「相談したいポイントがまとまっていれば相談時間は短くなる」とアドバイスいただいていたこともあり、打ち合わせ当日朝に相談したいことをまとめ改めてメールします。

そうこうする間にZ社さんから「未払いは事務ミスであった」ことと「振り込み日が確定した」旨メールでお詫びがありました。つまり面談直前に一番の心配ごとであった「未払い」に関しては概ね解決してしまったことになります。

ともあれ、弁護士さんには契約書についてお聞きしたいこともあるのでzoom面談に入りました。

面談は30分弱でさくっと終了

今回は対応いただく時間に応じて料金が加算されるとあってか、面談開始してお互い名乗るやちょっぱやで要件に入り、事前にメールしていた「懸念点」と「こうしたいと思うがどうか」という私の質問にサクサクお答えいただけて、アドバイスもわかりやすく、かといって厳しくもなく的確で、主要な話は20分くらいで終わってしまい、プラス4〜5分で料金とお支払いについてお聞きしました。

B弁護士「ここまでで(メール対応も含めて)◯分、◯分、◯分、ですから1時間40分ですね」 

早い! 私なんて発注書と契約書読んでネットで調べて「何も分からん」とぷるぷる震えてるだけで数時間費やしたのに、やっぱプロは違います。

考えてみれば司法試験って国家資格ですから弁護士さんである以上、仕事できない人である確率は限りなく低いのかも知れませんが、B弁護士みたいな人がごろごろいるのだとしたら改めてすごい世界だなと思いました。

結局どうだったのか、その後どうなったか

-未払いについては本当にシンプルな事務処理ミスだったっぽく、ちゃんと全額振り込まれた
-契約書の送付が遅かったことを弁護士さんは「何か思惑があってのことか」と気にされていたが、シンプルに遅れていただけっぽいと後に判明
-契約書については、弁護士さんが「契約書はこのままで、覚書を先方にお願いしましょう」とテキストを用意してくださった
-それを先方に送りご了承いただき即締結完了した

安寧と時間がお金で買える、リーガルチェック

今回弁護士さんに頼まずとも、私が勇気を持ってZ社さんにしれっと問い合わせしていれば問題は早々に解決していたかも知れません。しかし、「なーんだ、じゃあ弁護士さんに頼まなくてもよかったのになあ」とは少しも思いません。

自分の場合「Z社さん/担当者さんに限ってそんなことはないはず」といった会社の知名度や人情的な思い込みもありおろおろしていたのですが、弁護士さんは「法的に正しいかどうか」で判断されており、今回改めて「そもそもビジネスとは、誠意や記憶ではなく書面のやりとりで成立するもの」と認識できました。

料金的には決してお安いと言えないかも知れませんが「大丈夫」というプロの後ろ盾と後押しをお金で買える効果は大きい。今後も機会があれば、具体的な問題はなくとも不安を払拭するため、いわば「健康だけど人間ドック受けておこう」みたいな感覚でお願いする予定です。


この記事が参加している募集

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?