ドラマ日記『17才の帝国』(初回)
近未来の没落した日本で、AIを活用した実験都市プロジェクト、通称UA(ウーア)構想が始動。AIが都市の首相に選んだ17才の少年・真木亜蘭(神尾楓珠さん)らが、AIを駆使して改革を進めていく『17才の帝国』の初回。低迷する春ドラマの中、今期一番の作品の予感。
202X年。日本経済は没落していた。総理大臣の鷲田(柄本明さん)は、内閣官房副長官・平(星野源さん)に命じ、「ウーア」を立ち上げる。AIに選ばれた閣僚は、高校生“総理”の真木亜蘭ほか、若者たちばかりだった。3か月後、真木に憧れる茶川サチ(山田杏奈さん)らも移住してくる。
閣僚発表で記者(松本まりかさん)から「経験のない若者に行政ができるのか?」の質問に、「経験はAIに蓄積されています。それに、経験は人を臆病にしたり、人を腐らせることもあります」と切り返し。若者らしい、真っ直ぐなセリフが、目力の強い神尾さんによく似合います。
初閣議。スピード感も印象的。まずは閣議や執務室の様子をライブ配信することを決定。さらに、真木は市議会廃止を提案。平の危惧に対し、AIは支持率30%を切ったら、総理を罷免できること制度を提示。真木もこれを了承し、市議会の廃止が決定。
そして最後は真木の就任演説。「間違っていることを、間違っていると言わない大人になりたくない。自分と自分の周りしか守らない大人になりたくない」「僕が目指すのは、癒着やしがらみを排した透明な政治。人々の声を聞き、受け止める謙虚な政治。助けを求める人々に、手を差し伸べ 救う政治」。支持率急上昇しました。
近未来SF×AI×青春×政治といったところでしょうか。吉田玲子さんの脚本に一気に引き込まれましたし、神尾さんをはじめとした俳優陣も適役。映像や編集も凝っていて、映画風。
制作統括は『あまちゃん』『いだてん』『今ここにある危機とぼくの好感度について』の訓覇圭さん。プロデューサーは民放から佐野亜裕美さん。TBS時代は『カルテット』、関テレに移ってからは『大豆田とわ子と三人の元夫』などを手掛けています。
『17才の帝国』のタイトルには、直接民主制の危うさ=独裁制の危険をはらんでいるってことなのでしょう。希望ある未来となるのか、それともディストピアが描かれるのか、放送は全5回。
難点があるとすれば、今期掛け持ち出演俳優の多さ。神尾さんは『ナンバMG5』、山田さんと柄本さんは『未来への10カウント』、望月歩さんは『元彼の遺言状』、西田尚美さんは「俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』、杉本哲太さんと田中泯さんは『鎌倉殿の13人』…ふぅ。
余談:橋本環奈さんと上白石萌音さんのWキャストが話題を呼んだ舞台の裏側に迫ったドキュメンタリー『ふたりのディスタンス 千と千尋の神隠しスペシャル』が放送されました。全く正反対の性格の二人の役へのアプローチが、実に興味深く。「NHKプラス」で12日まで配信中。