相撲映画『シコふんじゃった。』回想
大相撲春場所は4日目を終えて、白鵬&鶴竜の両横綱はいつものように休場。貴景勝・正代・朝乃山の3大関にも、全員土が付くという残念な序盤。ここは気晴らしに、相撲映画の傑作『シコふんじゃった。』(1992年)を振り返りましょう。
監督は『Shall we ダンス?』(1998年)の周防正行さん。多くの才能を輩出したピンク映画出身で、デビュー作の『変態家族 兄貴の嫁さん』(1984年)は、名匠・小津安二郎監督へのオマージュで、そのカメラワークを再現。『晩春』(1949年)の続編のつもりで制作したという才人。
そんな周防監督の一般映画第一作は、禅寺コメディ『ファンシイダンス』(1989年)で、本作でも主演を務める本木雅弘さんを大抜擢。本木さんはアイドルグループ・シブがき隊を解散、ジャニーズを辞めたばかりでしたから、名監督とは目利きでもあるなと。
卒業が危ぶまれている大学4年生の秋平(本木雅弘)は、卒論指導教授(柄本明)から単位習得の変わりに、彼が顧問を勤める弱小相撲部の試合に出場することに。しかし、そこで惨敗し、OBに罵倒された彼は勝利宣言をしてしまい、そのまま相撲部に残ることになってしまう……。
弱小チームが奮闘し、勝利を勝ち取るという、青春スポーツものの王道ではありますが、相撲という伝統(=古くさい)の世界に、現代っ子の主人公が飛び込む際の違和感から始まり、やがて本気になっていく脚本の流れが上手い。
共演キャストも絶妙で、下痢気味のキャプテン役・竹中直人さんがコメディ担当のほか、デブで小心者の部員に田口浩正さん、お尻を出すことを拒否する英国人留学生や、女性ながら試合に出ることになるマネージャーなど個性的なキャラ揃い。ヒロイン役の清水美砂さんも輝いてましたね。
興行収入的にはさほどではなかったものの、日本アカデミー賞ほか、その年の映画賞を総なめにした傑作。なお、挿入歌とエンディング曲は、おおたか静流さんの「悲しくてやりきれない」と「林檎の木の下で」でした。他のアーティストバージョンでどうぞ。
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