長い長い夜に始まった冬の終わり

その次の日は年末の深夜にしては珍しく寒さがなく過ごしやすかった。風は吹いていたがどこか暖かさを含んでいた。
そんな夜に僕は感傷的になり独り公園のベンチに腰を掛け煙草を吸っていた。新しい道が決まってこれから軌道に乗ってくるはずだった。心が軽くなりやっと本当の自分自身と向き合うことができると考えていた。けれど僕の中にいる彼らは最後の足掻きを見せていた。あの日あの夜に彼らを解放したはずなのに。僕はお気に入りの音楽を聴きながら都会の公園のベンチから見える小さい夜空を見上げた。雲が邪魔をして星が見えない。しかし月はその存在を隠されることなく輝いていた。雲はきっと僕の将来で月は彼らで。僕はまだまだ長い道の途中だ。雲の下に隠れる星と僕とで。きっと同じことの繰り返しで僕だけがその事実に気付かないふりをしていて。僕以外の人はとっくの昔にそこに気付き歩きだしていたのかもしれない。僕はベンチから立ち上がり公園を後にした。何者でもない僕になるために。

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