二人だけの小さな小さな世界。

07:00に鳴るスマートフォンのアラーム。
電子音が二人を眠りからこの世界へと呼び戻す。
寝ぼけたままベッドから冷たく冷えたフローリングへと足をおろす彼女。あくびをしながらそんな彼女を見つめる僕は五分程ぐうたらと布団に潜り込む。
彼女と僕のお気に入りの曲が入ったアルバムがリビングにあるプレーヤーから流れる。僕は半開きの目を擦り寝室のカーテンを開けて十二月のカラリと乾いた朝日を浴びる。
コーヒーと
彼女の優しい声。
足を貫く冬を感じながらリビングへと向かう。
二人には少し大きすぎるテーブルに並んで座り電子ストーブにあたる。冷えた足先が徐々に感覚を取り戻し最後のあくびをする。音楽プレーヤーはアルバムの四曲目を流し終える
コーヒーもほどほどに二人はそれぞれの役割を果たす。
彼女は朝食を僕は洗濯をする。
洗濯物をここに住み始めてから共に過ごしてきた洗濯機に放り込む。彼女の好みの柔軟剤と僕の好みの洗剤をいれ後は彼任せだ。そして僕は前日に干した洋服たちを寒い外の世界から引き上げる。乾いた空気と冷たい風にさらされた彼らは今にも凍ってしまいそうなほど冷たかった。その間彼女は前日の残りの味噌汁を温めなおし卵とハムをフライパンに落とす。
油の跳ねる音と換気扇の回る音。そしてあついと彼女が小さな小さな声を出す。洗濯物を畳み終えた僕は彼女のもとへ行き冷えた僕の大きな手で彼女の繊細でか弱くて小さな手を包む。
微笑む彼女そして音楽プレーヤーはアルバムの七曲目を流し終える。僕はテーブルに食器を並べて猫柄のカップとトランプ柄のコップを出し彼女には温かいお茶を僕は冷たいお茶をそれぞれのカップに注ぐ。
布団もう少し暖かいのにしたいねと彼女が言うが
僕が暑がりなことを思いだし毛布で我慢すると強がる。
僕も最近は寒いからとその日の午後に二人で買いに行くことにする。
それから他愛もない話をした。そんな話もこの小さな小さな世界の言葉で二人だけの時間だ。
僕は大抵聞き手に回る彼女が楽しそうに話していたり少し怒って話していたり悲しそうに話しているのを見るのがとても好きだからだ。彼女も僕に話してほしいときはそうやって伝える。
ねぇ話して?と。簡潔でいてとても優しく僕の目を見て。
僕のつまらない話しでも彼女はちゃんと聞いてくれる可愛い猫がいたとか洗剤が無くなりそうだとか。
そうやってゆったりと流れる日曜日の朝の時間を過ごす。
音楽プレーヤーはアルバムの最後の曲を流し終える。
僕はCDを変えて音楽プレーヤーは再び曲を流し始める。
そして二人で洗い物をしながら今日の予定をたてる。
午後は布団を買いに行くと既に決まっていたからその前の予定の話をした。
彼女はう~んと少し考えてからおうちでゴロゴロしてるのもいいかもと言う。
僕はそれも悪くないねと。
けれど僕は前々から今日の行く先を決めていた。彼女がテレビのコマーシャルでみたクリスマス仕様の水族館だ。
だから僕は二人でドライブをしないかと誘った。二人の最近好きになった曲を流しながらさと。
彼女は首を大きく縦にふりながら行きたい!と言った。
僕はそんな楽しそうな彼女をみて小さく微笑んだ。
そして彼女はメイクを僕は洋服を選びも早々に終わらせ軽く家の掃除を始めた。三十分後とびきり綺麗になった彼女が洗面所が出てくる。僕が恥ずかしさから小さな声で綺麗だよと言うと彼女も小さな声でありがとと言った。スマートフォンの時計は09:00を表示していた。僕たちは二人だけの小さな小さな世界から大きな大きな世界に飛び出した。温かい日差しとカラリと乾いた冷たい空気が僕らを迎える。僕は寒いと顔にシワを寄せる彼女の手を取り歩き出す。
音楽プレーヤーは二枚目のアルバムの曲を流し終える。
そして電源は落ちる。

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