上級生の恋
小学生高学年の頃好きな子がいた。
その子はとても頭がよく、明るく人気者だった。
サッカーや空手を習っていたことも好印象であったのだが、体育の時間に50mを走る際にはなぜかあまり速くないところも、完璧すぎない感じが好きだった。
テストの直しがあれば、わからないと頭を悩ましている友達をみると、すぐに近づいてきてくれて「どこがわからないの?あ、これはね・・・」などと優しく丁寧に教えてくれたのだ。これが、自分だけでなくほかの男女関係なく優しいから人気の秘訣なのだ。
クラスは3学期になり席替えをすることになった。
席替えになるとみんなそわそわする。次は誰と一緒の班になれるかな。
あの子と一緒の班になれないかな。と前日の夜は浮かれてなかなか寝付けないものだった。
前日にしたくじ引きの結果は、翌朝先生が黒板に書いておくね。というもんだから、みんないつもより早めに張り切って登校したものだ。私だって、ドキドキと胸が高鳴り、いつもより断然早く行きたかったがあまりに気負いすぎているのを見られるのも恥ずかしくて・・・いつもより3分早く行くことにした。
クラスに入ると黒板の前で数人が集まっている。
私もみんなにいつも通りに「おはよう」とあいさつをしながら緊張した面持ちで黒板を見上げる。
すると、なんと大好きな男の子の名前と自分の名前が斜めであった。
班も同じだ。
やったぁぁあ!!!こんな嬉しい出来事があっていいのかな。
ニヤニヤがとまらない。でもこの喜びは自分の胸の中だけで・・・
なんと、一番後ろの端の席になった。好きな子は斜め前なのだ。ベストポジション!!黒板を自然に見ながら視界に好きな子がいるのだ。授業を集中して聞いているように見せながら、あの子の斜め横からの真剣な表情もはにかんだ笑顔もすべて眺めることができる。あぁ、神様ありがとうございます!!
そして、班ごとで話し合いをしましょう。という先生の促しにも毎回ドキドキとわくわくの波が押し寄せてくるではないか。
授業中も休み時間もなにもかもが楽しくて仕方がないのだ。
隣はクラスで一番かわいい女の子。しかもその子も私の推しメンのことが好きだと以前聞かされていた。
しかし、クラスイチかわいいあの子は自分が可愛いということを認識していてかまってアピールが激しい子であった。
最近はそのアピールが自爆ネタになっているところもある。
ある日、私のセーターの毛糸がほつれていてそれを見た前の席の男子が「ハサミで切ってあげようか」と申し出てくれた。突然のことに「あ、うん。ありがとう。」とされるがまま。
そうすると、大好きな男の子や、他の班の男子までもが「どうしたの?」と覗き込んで集まってきたのだ。なんてことなさすぎるこの現状になぜ人が集まってきたのか、恥ずかしくなる私。「え、大したことじゃないよ。」といったもののみんなが一部始終を見守ってくれた。
それを見ていた美女は次の休み時間に自分のスカートのボタンがとれた~どうしよう!!ねぇ!どうすればいい???と大げさに男子に猛アピールをしているではないか!!!
そこで、男子の(大好きな推しメンも含む)反応ったら。。。。(笑)
全員で「へえぇ~そうなんだぁ~」って。
しかも棒読み。全く興味ないですよって感じで。(笑)
「もう!!!なんなのよ!!!」とぷりぷり怒っている美女。
ある日は、残りの体育授業は皆さんがしたいことをやるようにしますので、話し合いで何をするのか決めてくださいね。と先生から言われたので、クラスで話し合いをしていた時のこと。
誰かが、「サッカー!」という案を出した。クラスのほとんどの男子がサッカーを習っていたので、賛成されようとした時だった。
「ねぇ!!今私歯の治療していて球技禁止。って歯医者さんにいわれているんだけど、○○ちゃんは球技ができません。って言ってよぉ~」と推しメンに甘えた声でかまちょする美女。
それに対して、ほぼ薄い反応をし、まぁ俗にいうスルーというような態度をとった推しメン。
その後、いろいろな案が出きったと思われる時に先生が、「他の意見はありませんか?」と先生に言われた。
その際に推しメンがスッと手を挙げた。
そして言った言葉に思わず噴き出した。
「先生、ドッヂボールがしたいです。」
「ねぇ!!!今さっき私が言ったこと聞こえてた??」と美女の叫び声!!!(笑)
サッカーよりも顔面にボールが飛んできそうな球技をあえて申し出る推しメン。
心の中で腹がよじれるかと思うくらい大笑いしたのであった。
まだまだ面白エピソードはあるのだが、ここらへんにしておこう。
言わずもがな、クラスイチの美女と私の大好きな推しメンとの恋が結ばれることはなかったのであった。
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