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0706 鳥たち

カモが上下しないでまっすぐに飛んでいく。首を伸ばして、身体もまっすぐ。窓の向こうを一直線に横切っていった。カモが飛ぶ姿を見ると、ニルスを乗せていたモルテンを思い出す。モルテンはガチョウだし、たぶん飛び方も全然違うはずだけれど、わたしの脳内回路はカモからモルテンに直通している。ニルスとモルテンがついていったのは雁たちで、雁の飛ぶ姿を思い出すのだと思う。雁とカモは似ているから、もしかしたらわたしの見たのはカモじゃなかったかもしれない。

ムクドリは電線に止まるのに、よいしょ、というかんじで身体を持ち上げた。もちろん、羽ばたいて飛んでいる。でも重そうだった。自分で座るのには、ちょっとだけ高い椅子に、なんとかよじのぼって座ろうとする、小さな子どもみたいな、そんな止まり方。

ツバメも飛んでいた。朝は鳥たちの時間だ。ツバメの滑空速度は、カモやムクドリと比較にならない。一羽のあとを追うように、もう一羽が同じ飛行ラインをたどっている。ふと、先頭をいくツバメがわたしのいる窓に向かってきた。ぶつかる、と思ってひやひやしたけれど、近寄りすぎないところで急カーブ、というよりUターンに近い角度で遠ざかっていった。もう一羽も同じように突進してきて、ひらりと身をかわしていった。遊んでいるのだ、そしてわたしへのあいさつだ。思わず、おはよう、と口をついて出た。

ツバメをそのあとも、見ていた。羽ばたきが、蝶々のようだと思った。蝶々より重みがあって、速さもあるけれど、その羽の動かし具合は、優雅で軽くてひらひらしている。そうだ、夢の中で、黄金色に発光する蝶を見ていた。そう思い出した。


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