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自分が感覚的に知っていることを、きちんとした定義や理論で説明してもらうと、そうだこういうことだったんだ、とまさに膝を打つようなかんじになります。我が意を得たり!というような。そうそうそうそう、そうなのよーって、手首にスナップをきかせてバタバタと振りながら言っちゃうような。山田悠介『反復のレトリック』の話です。言語学の領域から、物語るということの根幹にきり込んでいく(とわたしには思われる)、そのひたひたと迫る着実さ、真摯さにぞくぞくします。副題にもなっている梨木香歩、石牟礼道子両氏の分析に入る前の段階でこんなにノックアウトされるとは。梨木さんについて書かれた文章が読みたくて手を出してみたのですが、思った以上に受け取るものが大きいです。必要なことがジャストなかたちで提示されている気がしました。

それからちょっと不思議なこともありました。本文中に引用されているリチャード・ネルソン氏の英語の原文を読んでいたら、なぜだか涙があふれてきたのでした。英語は字面を追うだけでなく、声に出して読むと理解が進むので、音読していたのですが、自分がそれと認知する前に声が震えてのどが詰まって泣き始めたのです。何かはっきりとした感情があって泣くというのではなく、本当になぜだかわからないけれどその文章に触れるだけで涙が出ちゃうというか。そのネルソン氏の文章に何が書かれていたのかというと、ある種の気づき、自分と自然との関係についての深い洞察でした。美しい文章だった。

ほとんどの時間を『反復のレトリック』を読んで書き写すことに費やした一日。深い充足感でいっぱいです。

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