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0906 虹を探して見つけたもの

虹が出ているような気がして、探しに北へ向かって歩いた。電器店の建物が邪魔をして、虹が出ているだろう方角はよく見えない。これは出ていたとしても見つけられないなと思ってあきらめた。電器店の隣の公園にムクゲが咲いていたので、それを見に行こうと思った。

道路の西側は田んぼになっていて、少し歩くとツユクサがたくさん咲いていた。田んぼと道路の間に群れをなしている。群生しているのを見るのは久しぶりだったから、わたしはしゃがんで眺めた。ついさっき降った雨のしずくが、花びらや葉にきらきらとしていた。ツユクサと雨はお似合いだ。雨の名残りもまたすてき。しっとりと水気を含んだあお色の美しさは言葉にならない。ツユクサの奥にはタデの花があって、その奥には稲穂が揺れている。すっかり晴れた強い日差しがそれらすべてを明るく照らす。

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立ちあがって、なんとなく空を見上げた。太陽にうすい雲がかかっていて色を帯びていた。肉眼でも虹のような色合いだとわかった。虹はここにあったと思った。夢中で撮っているうちに、雲は流れて虹色も消えた。

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ようやく公園にたどり着いて、真っ白なムクゲを写真に収めた。ムクゲのはかない白色が好き。大きなアゲハチョウがひらひらと飛んでいた。ここでも下生えには、雨露がそこここに光っている。

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普段は、こういうことのすべてを一言ですませたくなくて、セレンディピティだとはみじんも思わないのだけれど、今日は違った。セレンディピティだなと思ったのだった。虹を探したけれど結局見つからずに、でも探しに歩いたからこそ、思いもかけないツユクサや彩雲やムクゲに出会えた。探しものって、その時本当に手にしたいものとは限らないのかもしれない。わたしは虹を見たいと思ったけれど、本当に求めていたのは、虹を見たときの自分のときめきだった。だから虹は見れなくとも、ときめきは得られた、いくつもいくつも。求めれば世界は応えてくれる。でも本心に応えてくれるから、一見望みと違ったように見えるだけなのだ。ただときめきたかった、そういう自分の本当の望みを、虹を探して知った日。


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