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夏じゃないみたいな空

夕方のまだ明るい空を見上げたら
思っていたよりも一段高いところに雲があって
夏じゃないみたいに空が高かった。

夕方の空気はまだ熱くて湿気ていて
暦の上でも体感としても
いまははっきり夏なのに
空だけが夏じゃなかった。

夏じゃないみたいな空を見て
でも不思議と新鮮で
裏切られたようなかんじが心地よかった。

季節の記憶は降り積もる。
わたしの頭に
わたしの心に
わたしの身体に。
そして形作るのだ、
夏の空はこういう空、と。

けれど世界は
わたしの記憶を
あっさりとかわして
夏じゃないみたいな空を見せる。
記憶の枠にはめられていない
こんな空もあるのだと。

心地よかったのは
枠から外へ出してもらったから。

夏じゃないみたいな空の高さに
自由を教わる夏の夕方。

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