チャラカの食卓

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アーユルヴェーダという言葉は知っていてもその時代の食事、アーユルヴェーダの食事について注目していなかった。そして、2000年前のインド料理ではターメリックも唐辛子も使用されていなかった。代わりにロングペッパー(ヒハツ)がつかわれていた。ヒハツは他のスパイスとけんかするので、使われなくなったのかもしれない。玉ねぎ、トマトもない。唐辛子を使うようになったのはムガル時代の後半


アーユルヴェーダの医学書「チャラカサンヒター(チャラカ本集)」の一巻二十七章に登場する料理名を元に同時代の医学書や参考文献から推測し、復元。


古代アーリヤ人の主食はムギ

ダーナー→精白して炒る

マンダ→粉からかゆ


アムリタと同一視されるソーマという飲み物は幻覚キノコを使っていた説が有力。


昔のインドで酒は広く飲まれていたので当時は酢もある。バラモン的な浄不浄の概念によって表向けには淘汰されていったようだが、どぶろくなどの形で今も残っている。

サンバルの原型、ビンダルーの原型のような料理も登場する。インド料理は長年の変遷を経て今の形になっており、背景にはガンジスのように壮大な歴史が存在する。


かつて油は白いごま油が広く使われていたが、次第にマスタードオイルに取って代わられた。そのマスタードオイルもオリッサ、ベンガル、ビハール、ネパールなどの東部に一部残るだけになっている。


再現お品書き

~飲み物~
・ラサーラー(マドゥパルカ)→蜜入りドリンク→ソーマの幻覚植物が手に入りにくくなり作られた代用品

→ミルクを沸かして浮いてくるクリームをとり、ヨーグルト、ハチミツ、砂糖を混ぜる。


・お酒各種→アーユルヴェーダでは酒は禁止していない。84種類の酒が書かれている。

→乳酒、ソーマ、スラー(儀式用で飲まない)、マイレーヤ
~ご飯もの~
・ペーヤー(サラサラとした米のツブ粥)
・ラージャペーヤー(生米を炒ってから炊いたツブ粥)
・ヴィレーピー(ボテッと濃厚なアラビキ粥)
・ラージャマンダ(米の炒り粉でつくるコナ粥)
・ダーナー・キッチャーッチー(炒り米でつくる混ぜ粥)
・クシーラウダナ(乳粥)
~カレー~
・クックタユーシャ(鶏の醍醐煮)
・マツィヤラ(魚カレー)二種
・アムリカースーパ(野菜の酸味スープ)
~軽食/お菓子~
・サクトゥ(はったい粉のダンゴ)
・シャシュクリー(米粉ドーナツ)
・モーダガ(歓喜団)
・マドゥクローダ(乳菓子の蜜漬)
~チャトニ~
・ラーガシャーダヴァ(マンゴーの甘煮)
~その他~
・シンダキー(発酵性の液体調味料)
・アースタ(薬味入り水飯)
・カーラームラ(おしんこ)
マヤカルカ(魔法のソース)

→①少量の油で唐辛子を焦げるまで焼く

②タマリンドペーストに油ごと入れ、トウガラシを手指で細かくつぶし、ペーストに混ぜる

③塩で味を調える。



古代インドのカレー

◆クックタユーシャ(鶏の醍醐煮)
→鶏肉、ギー、長胡椒、ブラックペッパー

◆マツィヤラ(魚カレー)その1
→タマリンドでチャトニを作り、それをまぶして火を通した料理。魚、タマリンド、マスタードオイル、砂糖、スパイスはパンチホロン。


◆マツィヤラ(魚カレー)その2
→マスタードを水でふやかしペーストにしたもの、マスタードオイル、パンチホロン、ブラックペッパーパウダー、フェンネルパウダー、クミンパウダーで仕上げた料理。


◆アムリカースーパ(野菜の酸味スープ)
→野菜、玉ねぎ、にんにく、タマリンド、砂糖などが材料で、ベサンでトロミをつける。スパイスはブラックペッパー、ヒング、マスタードシード。



再現された古代カレーで使われているスパイスはブラックペッパー、マスタード、フェンネル、クミン、ヒング、長胡椒(ヒハツ)などで、『チャラカ本集』と同時代に原形が成立したとされる『カウティリヤ実利論』によると 他にも以下のスパイスが使われていた。
◆チャラカ本集→長胡椒(ヒハツ)、胡椒、ショウガ、ヒング、コリアンダー、クミン、アジョワン、カロンジ、フユザンショウ

◆カウティリヤ実利論→長胡椒(ヒハツ)、胡椒、ショウガ、ヒマラヤセンブリ、マスタード、コリアンダー、クミン、フェンネル、マジョラム、ワサビノキの茎、フェネグリーク


スパイスの扱い方

チュールナ→粉にする
カルカ→ペーストにする
クワーンタ→水で煮る
カンダパーカ→糖蜜で煮る
クシーラパーカ→乳で煮る
タイラ/グリタパーカ→油/ギーで煮る


チャラカ本集のスパイスリストから現在も使用される最重要な胡椒やショウガの類を除き、現在はあまり使われない長胡椒(ヒハツ)、ヒマラヤセンブリ、マジョラム、ワサビノキの茎、フユザンショウを除くと、今日のビハールやベンガル、ネパール(カトマンドゥ)の料理で使うミックススパイス、パンチホロンと同じ、つまり、具体的にはカロンジ、クミン、フェンネル、フェネグリーク、マスタードないし、アジョワン。つまり、チャラカ時代のスパイスの組成が現在の東インドの伝統料理に名残をとどめている。


ピュアガエーギ

→牝牛のギー


醍醐

→発酵させたクリームチーズの乳脂肪を取り出したもの

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