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「星の王子さま」が読めない

このところ、自身の"読む才能"のなさを痛感する出来事が続いている。

読む対象は人のこころであったり、小説であったり、仕事のマニュアルであったり、まぁいろいろだ。
人付き合いやら大学での勉強やらをサボりまくったツケがばっちり回ってきている。

そんな自分がふと実家の本棚から手に取ったのが、「星の王子さま」だった。

2,3年ほど前だろうか。参加した読書会の課題本になって、購入して読んだものだった。
なんとなーくピピッとくるものがあって、このたび再読した。

王子さまがキツネから教わったこと、そして彼と"僕"との最後のやりとりに、常になく心が波立った。ざわざわした。

「大切なことは、目に見えない」らしいのだ。
心でしか見えないらしいのだ。

私が高価な時計を身につけて心満たされるのは、きっと時計が高価だからではなく、それが父からのプレゼントだからだ。
私がアクセサリーや化粧で自分を飾り立てても強くなれないのは、それらが思い入れのない表面的な武装でしかないからだ。

本の1ページ目をめくるときにどうしようもなく気分が昂揚するのは、物語というものに付随して、私が大切ななにかを持っているからだ。

躁鬱的な性質を持ち、コントロールできない感情のせいでたびたび仕事や友人を失ってきた私は、ずっと心なんかいらないと思っていた。
咲き始めた梅を愛でる気持ちがなくなってもかまわないから、もう一生つらく惨めな気分が訪れることのないよう、機械みたいに平坦に生きていきたいと思った。

でも、そうやってずっと自分の心と向き合うことを避けてきたから、"読む才能"が芽吹かないのではないか。
心でしか見えない「大切なこと」が、わからなくなってしまったのではないか。
こんなに本が好きなのに。人と話すことも、嫌いじゃないのに。

いまの私が「星の王子さま」を読んで読み取れたのはそのくらいだ。浅い。悔しい。
「星の王子さま」はいま教えてくれた。このままじゃ、どんどんつまらない大人になるぞって。

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