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名刺代わりの小説3選

ツイッターに、「#名刺代わりの小説10選」というハッシュタグがあるのをご存じでしょうか。
いわゆる読書アカウント、とりわけ小説を多く読む人のアカウントが、固定ツイートとして掲げていることの多いタグです。

このハッシュタグは、ひとりの人間の成長記録といえると私は思っています。「名刺代わり」とはよく言ったものです。

* * *

ところで、去る11月20日。
私は自分のnoteにて、このような記述をしています。

(noteを)また少しずつ再開していきます。
毎日はさすがに死んでしまうので、週3日くらいで。

本日は12月7日。
noteの更新はと言えば、上記と文フリに行ったという記事の2つのみ。
週3どころか、半月に2回の頻度です。

そもそも、なぜnoteを書くのかといえば、自分が「書ける」人間になりたいから。
決して書きたくなかったわけではないのです。ただひたすら、書くネタを探しに探していたのでした。

しかしながら、ろくに文章を書いたことのない、クリエイティビティのかけらもない人間が、パッとネタだしできると思ったら大間違いです。

うんうん唸っていたところ、ふとしたタイミングでフォロワーさんの「名刺代わりの~」を拝見しました。
これだ!!とひらめいた次第です。

……とはいえいきなり10冊掘り下げるのは無理すぎるので、いったん3冊で手を打たせてください……。

1.『対岸の彼女』角田光代

いきなりのド名作で失礼します。

結婚する女、しない女。子供を持つ女、持たない女。それだけのことで、どうして女どうし、わかりあえなくなるんだろう。ベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めた専業主婦の小夜子。二人の出会いと友情は、些細なことから亀裂を生じていくが……。
ーーAmazon 商品ページより抜粋

この本の中で私がいちばん大好きなのは、概要には載っていない、女社長・葵の過去のストーリーです。
中学時代にいじめを受けて、母の実家のある栃木の高校に通うことになる葵。浮かないようにとびくびくしながら過ごす中、天真爛漫な魚子(ななこ)と少しずつ距離の縮まっていくさまは胸があたたまります。

やがて、ふたりの関係にはひとつのピリオドが打たれるのですがーー。
全然泣く準備をしていなかったのに、ぼろぼろに泣けて泣けて仕方なかったことを覚えています。

学生時代特有の、親友との密な関係を築いた経験のある女性ならば、ぜひ読んでみてほしい一冊です。

2.『私の男』桜庭一樹

ものすごーく好みが分かれると思います。私は好きでした。

落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった10歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から2人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く。
ーーAmazon 商品ページより抜粋

改めて読むと、とても的確で秀逸なあらすじですね……。

「落ちぶれた貴族のように」という表現は、本編でも実際に出てきます。これがなんとも、大好きでした。
ごくたまにいるよなぁそういう人、という感じで。

そしてこの小説の最高に最悪なところは、世間からしたら被害者に見えるかもしれない花も、けっして良い人間とは呼べないところです。
かといって別に悪女なわけでもないのですが。
どんなに幸せな瞬間があろうとも、絆で結ばれていようとも、淳悟と花のふたりは「共犯」でした。

男女の混ぜるな危険を限界まで混ぜたらこうなるのかな、といった味わいの物語です。

『キノの旅』時雨沢恵一

最後は突然のラノベです。

世界は美しくなんかない。
「キノはどうして旅を続けているの?」 「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ……でもそんな時は必ず、それ以外のもの、例えば世界とか、他の人間の生き方とかが、全て美しく、素敵なものの様に感じるんだ。とても、愛しく思えるんだよ……。ボクは、それらをもっともっと知りたくて、そのために旅をしている様な気がする」 ―――短編連作の形で綴られる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。
ーーAmazon 商品ページより抜粋

なにを隠そう、オタクとしても読書人間としても、私の人生はここから始まっています。当時小学2年生でした。ライトノベルを青い鳥文庫かなにかと勘違いしていたんですね。

とはいえ、個人的には大人も子供も楽しめるシリーズだと思っています。ファンタジー好きは特に。

寓話調の章もあれば、長編アニメのような趣きのストーリーもあり。時系列に沿っていないのがいい味を出しています。
特に、キノが旅人になるに至った一連の物語。幼心ながらに苦々しい思いをしながらも、ページを捲る手が止まりませんでした。

あぁ、また読みたくなってきた。

* * *

ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
つくづく「書くために」書いた文章ですが、なんとかひとつの記事にはなりました。

ゆくゆくは「書きたいから」書く文章、「伝えたいから」書く文章がつくれるようになりたい所存です。

名刺はきっといくらでも更新されていくはずなので、そのときにまたまとめて書こうと思います。
では、また。

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