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鷹見くんと幸山厘という求道者について考えている

 ミョングミラーデチーター。(ナーサシス地方のあいさつ)

 またふつうの軽音部について考えています。この作品いくら考えても細かい所作からいろんな想像ができて面白いです。
 26話でバンドの名前決めるのにファミレスでウダウダしてるのがとてもいいなって思いましたね。藤井さんが胸襟を開いて楽しそうに話してるのも素晴らしいけどはとっちや厘ちゃんが積極的に話に参加してるのもイイな~って思います。どこかしら相性がいいメンバーと話をしてるから、ヨンスくんたちとバンド名決めてるときとかなり食いつき方が違うんですよね、はとちゃん。

 さて、最新話の感想はさておき今回のこの記事なのですが、頭の中で出てくる考えをとりあえず出しとくかという程度で書いています。ここでおれがダラダラ考えていることはもはや感想ではなく幻覚なので、あんまり読む必要はないというかなんの裏付けもない記事です。妄言として流してください。
 ちなみに単行本2巻までのネタバレがありますので、未読の方は避けてくださいますようお願い申し上げます。ジャンプラアプリで全話初回無料だし単行本買って読んでもいいよ♡(販促)


鷹見くんについて

 前に25話がすごく良かった!という話の中で藤井さんについて触れたんですが、ここのところ元カレの鷹見くんのことを考えています。

 鷹見くんって、はとちゃんからすると女遊びの激しいかな~り嫌な奴として認識されているんですけど、作中でどうも鷹見くんははとちゃんが考える人物像とはズレがあるぞというのを何度か示唆されてて、そのことについてずっとぐるぐる考えてしまっていますね。


 結論から言うと鷹見くんは相当の音楽バカなんだと思いますね。
 単純なたとえをしてしまうならジョン・レノンというか、バスケで言う赤木剛憲、げんしけんで言うコーサカみたいなヤツではないかと思います。性格が悪いとかどうとか以前に音楽のこと以外どうでもよすぎて価値基準が世間と違う人間なのではないかという気がしますね。妖精に育てられたゴドーワードとか戯言遣いのいーちゃんとかあのレベルで他人に興味ないんちゃうかな…。

 鷹見くんは藤井さんとファミレスで表参道26時してしまうのですが、決定的だったのはまあやっぱりそれより前の水族館でのこのシーンですよね。




 鷹見くんのやっちまってる感あふれる、かつ藤井さんのやっちまってる感もマックスの回でしたねぇ。あ、お互い地雷踏んだな……ってのが誰の目にもわかる回だった。ブスッと刺した言葉のナイフで見事に黒ひげが宙を舞いましたね。
 ここ本当にたったの数ページなんですけど、鷹見くんの人となりがグワーッ!と深まるやりとりでした。ジャンプラ版でルーキー版より掘り下げて濃いやりとりを込めたクワハリ先生と、出内先生の手掛けたギュギュッと感情を詰め込んだ鷹見くんの表情がおでんの大根くらい味染みてます。


このシーンで鷹見くんについてわかること

 まあまず鷹見くんは彼女の前でほかの女の子を大げさに褒めるというやっちまってるムーヴをしてしまうのですが、そこに自分で気づかないところが鷹見くんらしさが出てますね。
 ただここで鷹見くんが単なる無神経かというとなんとも言えないところがあって、付き合い始めたときの経緯から藤井さんのことを「付き合ってるとかそうじゃないとかにこだわらない自由な(度量の大きい)女の子」だと思ってたので、これくらいの話ならセーフやろ…と思ってたっぽい気がします。
 藤井さんも優良誤認とは言わないけど自身の性格をかな~~り誤魔化して本心を隠しながら鷹見くんに言い寄っているので、おれはちょっと鷹見くんに同情してしまいますね。別れ話のシーンでわかるのですが、鷹見くん的には「えっ、自分であんなこと言ってたのにこれくらいで機嫌悪くなるんだ…」ってちょっと引いてたんでしょうね、このへんで。
 いきなり別れ話を切り出すのはよくなかったにしても、鷹見くん的にはちゃんと理由と順序があってちょっとずつ「あ、この子と会話してると辛ェな~~…」と思ってたんだなぁというのがわかります。

 次に特徴的なのが厘ちゃんをすごく素直に褒めていることですね。
 厘ちゃんのベースが上手いことを「あれは相当練習してると思う」ときちんと本人の努力にまで踏み込んで褒めているし、プロになりたいという意志を一切バカにしていない。鷹見くんは実力や才能だけではなく音楽に向き合う態度・本人の頑張りもしっかりと評価するものさしを持っているんだなぁと窺えます。
 たぶん鷹見くんが単純にめちゃめちゃ嫌なヤツだったら藤井さんに言われる前に「まぁオレより上手くないけどな(笑)」って自分で言っちゃってそうな気がしますね。言わないんですよねぇ鷹見くん……。えっ幸山さんすごいやん!?いいじゃんプロ目指しなよ!!くらいの勢いで褒めてますからね。
 こういうところから察するに、鷹見くんはわりと音楽について頑張ってる人を笑わない人っぽいんですよね。はとっちのセミ事件も単純にセミが面白すぎて真人・宿儺ばりに死ぬほど笑ったってだけで、演奏については「声出てへんかったけどまあええんちゃう?」程度に考えてそうで…。はとっちの考える鷹見くん像と見事にすれ違ってる気配がします。
 はとっちが頑張っているところを知らないからあんな感じなだけで、むしろ公園で弾き語りやってるはとっちを見かけたら感心したりじっと腕組んで毎日聞きに来そうな気すらするんですよね。ストイックにロックを愛して向き合ってるはとっちを知ったら結構好感を持つんじゃないかなぁ…。仮に口説かれてもはとっちからは「生理的に無理」で秒殺されるだろうけど。


鷹見くんのいいところ

 ほかにも鷹見くんの言動を振り返ってくると見えてくるものがあります。

 鷹見くんは水尾くんをバンドに誘っているのですが、はとっちとの会話でわかるとおり水尾くんは会話が不器用で誤解されがちな人。そんな水尾くんと懇意にしているなど、わりと辛抱強く相手の話を聞ける一面がわかります。
 振り返ってみれば藤井さんもprotocol.結成当初あたりはものすご~~くキツい性格だったわけで、鷹見くんはそれでも一緒にやろう!と声をかけていたのでかなりおおらかな部分があるんじゃないかとすら思えます。あのタイミングの藤井さんに話しかけるの、相当勇気要るで……。
 つまり鷹見くんは「その人の性格どうこうよりまず楽器がうまいかどうか、バンドをやる気があるかどうかで判断する」ということができる人で、これはなかなか得がたい素質なんじゃないかなぁと思います。別れた彼女をバンドに引き止めるなどコミュニケーションド下手いまひとつ情緒的なところは不得意なのですが、相手を好き嫌いでなく実力で評価できるのは鷹見くんのいいところなんじゃないかと思いますね。


 この辺を総合すると、記事の頭で述べたとおり鷹見くんは価値基準が音楽中心にある人なんじゃないかと思います。
 他人に興味がないというよりは、音楽というチャンネルを介してしか他人を理解できないんじゃないかなぁ?という感じ。他の人とズレすぎているだけで、彼のルールや理屈を理解していればそう悪人というわけでもない気がしています。ただストイックに音楽を求めすぎてそのほかがどうでもよくなっちゃってるだけですね。
 たぶん鷹見くんは音楽に関してはむしろいい人なんじゃないかな?「ちょっとベースでわからないとこあんだけど一瞬教えてくんねえか!」と頼めばわりと快諾してくれるんじゃないでしょうかね。藤井さんも水族館デートというチョイスが合わなすぎただけで、梅田のタワレコ連れてって「いまこの曲がアツい!選手権」とかやったら超イキイキしておすすめのアーティストについて語ってくれると思いますよ。これは完全におれの勘なんですけど、この人は百回連れて行っても百回ともキラキラの笑顔で違うCD教えてくれると思いますね。


アナザー鷹見くん・幸山厘

 というわけで鷹見くんについて想像を膨らませていろいろ書いてきたんですけど、これらの鷹見くんの性格について付き合ってる彼女よりも正確に見抜いたうえで破局に向け爆弾を投げた怪僧ラスプーチンみたいな女が一番怖いと思います。オマエ本当になんなんだよ幸山厘。軽音部はロマノフ家じゃないんだぞ。

 さて、ところでなんですが、厘ちゃんといえば皆さんは彼女の言動がかなり鷹見くんと似ていることにお気づきでしょうか。


ふたりの求道者

 鷹見くんは劇中においてかな~~~りヒトの心を無視してバンドメンバーを集めています。それはおそらくですが、純粋にいい音楽を作りたいがために楽器が上手い相手を探しているからではないかと思われますし、逆に言えば、人間関係の少々のトラブルは飲み込んでバンドに集中できるひたむきさも持ち合わせてもいます。

 これ、我らが異常ベーシストにもほぼそのまま同じことが言えるんじゃないでしょうか。
 まずもって厘ちゃんが厘ちゃんしはじめた最初の事件は、あのヨンス脱退。ヨンスの距離感が悪かったとはいえ、踊らせるだけ踊らせてからちょうどいいタイミングでバッサリ切るというとんでもない悪女っぷりを発揮します。これ…ちょっと鷹見くんのこと言えんのとちゃうかな……(ドン引き)
 その後も桃ちゃんや藤井さんのところにみそボンの如くフィールド外から爆弾を投げつけまくりますが、その動機の根っこにあるのは「はとちゃんのバンドを作りたい」という熱烈な信仰。その信仰のためには手段を選ばないという執念を見せます。たまたま厘ちゃんが掲げている†はとっち神†が、まあ厘ちゃんが言う通り確かにポール・マッカートニー級に性格がいいミュージシャンだったので周りが救われてますけどね。信仰の対象を間違ってたら恐ろしいことになってましたよ。やっぱ高校入学時点で遠藤周作読んでる奴は覚悟キマりすぎててこわいょ……。

 このふたり、対象は違えども見出した道をストイックに目指しているという点ではかなり似ていますし、倫理的なところを無視しがちというところも近いんですよね。
 これ、クワハリ先生が意図していたら本当にすごいなと思うんですが、鷹見くんを悪人と言うならばはとちゃんチームにいる厘ちゃんも断罪せざるを得なくなるんですよね。ふたりともかなりグレーな人間ではあるのですが、「美しい至上の芸術」を求めている真摯さは本物なので、完全に理解できない悪とも言えない。


人間は多面的な生き物

 他作品を引き合いに出してしまうのもアレなのですが、おれの好きなニセモノの錬金術師にもこのへんは共通していて、「単純にイヤなだけのやつは(主要人物には)出てこない」というのがふつうの軽音部の良さかなと思います。

 どの人物も悪い一面は持っているけど、かといってふとしたときに他人を助けないでもない、そういうひとりの人間の多面的な性格を大事にしてるマンガだよなぁと思うんですね。
 藤井さんも他人の悪口をズケズケ言うけどはとちゃんを助けたりするし、水尾くんもバイトに入ったりして手助けしてくれる。鷹見くんが女の子とうまく付き合えないながらも熱心に音楽に向き合うし、厘ちゃんがディザスタームービーの如く部内バンドを破壊しながらもはとちゃんによる救いを与えている。正義と悪役が両極端、っていうお話ではないんですよね。
 どのキャラクターもどことなく好きになれる部分があるし、ちょっとやだなと思わせるところもある。現実の人間でもこれは全くその通りなので、こういう描き方が作中の人間ドラマを描くうえで深みを与えていていいなぁ、と思っています。



 ふう、考えてたこと書けてスッキリした。そんなわけで長々と書いてきましたが、わりとおれは鷹見くん、嫌いじゃないですね。単純に人との関わり方がアレなだけで、彼の考え方とか取り巻く環境を踏まえるとわからなくもないやつというか。まあ確実女性関係で常時荒れてそうなんでちょっと友達にはなりたくないかもしれないけど……。
 たぶんこの先どっかで鷹見くんのお話がありそうだなぁ~~…というのをちょっと楽しみにしつつ、今後の展開を見守りたいと思います。



<おわり>



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