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疎遠になっていく女の友情。15年振りの旧友と友情復活できたワケ

「女友達はライフステージの違いで疎遠になる。」とはよく聞く話だ。

現在2児のワーママとなったわたしも、似たカテゴリー(既婚・子ども有・仕事有)の友人に囲まれて日々を送っている。

ある日、高校時代の友人が移住している地方都市に出張することになったわたしは、久しぶりに彼女に連絡をとった。15年近く疎遠になっていた、高校時代の友だちだ。

「彼女の現在のライフステージは?」
「彼女はどのように変わったのだろう」

出張先に向かう移動中、仕事をよそにそんな不安がよぎる。

けれど、そんな心配は杞憂に終わった。わたし達は友だちとして復縁できたのだ。それどころか、一生の友を得たような気さえする再会となった。

そんな友情復活劇を果たした夜を振り返りながら、オトナの友情について、考えてみた。


ライフステージで分断されるオトナ女子

「女友達はライフステージの違いで疎遠になる。」とはよく聞く話だ。

わたしは大学院進学などで25歳でようやく社会に出た。他の友人に比べ、就活、婚活、結婚、妊活、出産のステージに至るのが自然と遅くなった。

ライフステージが変わるごとに、友人関係は流動的に変化した。疎遠になったり、また連絡を取り合ったり。ライフステージが近いゆえに仲がグッと深まる友人もいた。

2児のワーママとなった現在、連絡をマメにとりあう友人は、近所に住む、似たカテゴリー(既婚・子ども有・仕事有)のワーママ達だ。

わたしはライフステージで変わりゆく女性の友情に対して、諦めに似た感情を抱いていた。旧友と15年ぶりに再会を果たした、あの夜までは.….。

女性同士を分断するものの正体

女性はライフステージの変化をきっかけに分断されていく。それは仕方のないこととして、ライフステージの違う女性同士を隔ているものは何だろうか。

「スケジュールと予算と価値観の合う友達がいない
。」

女性同士を分断する正体を的確に言い表した、この言葉。タレントの眞鍋かをりさんが「アメトーーク!」の「ひとり旅芸人」の回で語った、ひとり旅をする理由についての発言だ。

結婚の有無。子どもの有無。仕事の有無。介護の有無。それぞれの違いは、人それぞれの時間やお金の使い方、優先順位や考え方を少しずつ、けれど確実に、変えてゆく。

ライフステージの違いによって生じる、「スケジュール・予算・価値観」の違いこそが、ライフステージの違う女性達を分断するものの正体なのではないか。

共感し合う女性たち

女性は共感を大切にするという点でも、ライフステージによる分断を加速させているのではないかと思う。

男性は結論、女性はストーリーで語る生き物と言われる。
「男性脳」は、会話の中で結論を重視し、ものごとを論理的思考で判断するらしい。一方、「女性脳」はプロセスを重視し、ストーリーに共感したり感情で判断するというのだ。

女性は、より深く共感し合える仲間を求めて、より多くの共通する関心ごと、悩みを抱える同じライフステージの友だちと集まるのではないか。

そしてライフステージの違う友だちに対しては、「スケジュール・予算・価値観」の違いから心のなかにざわつきやザラつきを感じたり、時には嫉妬や妬み、劣等感といった負の感情を抱いてしまうこともあるかもしれない。

旧友の本質に触れた夜更け

再会を果たした当初、まさにわたしも、15年ぶりに再会した彼女に対して、ライフステージの違いから生じる負の感情を多少なりとも抱いてしまった。

昔の話題で過去を懐かしみ合い、会わなかった15年分のそれぞれのライフストーリーを語り合ったわたしたちは、会話を通して、彼女は「既婚・子なし・仕事あり(お店を複数もつ経営者)」、わたしは「既婚・子あり・仕事あり(会社員)」という現状をなんとなく理解した。2人のライフステージ、社会や家庭での役割は少し違っていた。わたしは、複数の店をもつ経営者の彼女に対し、会社員が経営者に対して抱く、尊敬と少しの劣等感を内心で感じた。

気持ちの変化のきっかけは「本」だった。「地方都市だと大型書店が近くになくて不便だよね」という話題から、お互いがとても読書好きということがわかったのだ。

それから彼女とは、本を軸に話がどんどん盛り上がった。幼少時代に好きだった児童書。お互いのおすすめ本ベスト10。自分の本棚を見せ合うのって頭の中を見せるようで恥ずかしいよね、とか言いながら、お互いに好きな本を紹介し合った。

そのうち、「実は今の仕事や人生の選択には、この本に影響を受けた」とか、「今こんな仕事の悩みやアイデアがあって。」「なら、この本がオススメだよ。」といったように、自分の地肉となっている本もお互いに紹介しあった。

わたしが大人になってから出逢い、人生の教訓にするほど気に入っている、児童文学の『モモ』(ミヒャエル・エンデ著、岩波少年文庫)。彼女は幼少期に『モモ』を読み、今の仕事のモットーにしていると知った。

『モモ』を知らない方向けに簡単に説明すると、この本のテーマは「時間」だ。主人公の女の子、モモは小さな女の子。モモにできることは、相手の話を聞くこと、ただそれだけ。けれどモモに話を聞いてもらうと、不思議といい考えが浮かんできたり、悩みが解決する。だから街のみんなは何かあったらこう言う。「モモのところに行ってごらん!」と。モモはその街にとって、なくてはならない存在なのだ。

今では複数のお店を経営する彼女は、この『モモ』が大好きだという。人が話をしたいときに話せる相手、行きたい場所づくりを大切にしているそうだ。

高校時代から変わらない彼女の魅力のひとつは、聞き上手なことだ。その彼女の変わらない軸というか、深い部分にある価値観に触れた気がした。

15年ぶりの語り合いは、夜更けまで続いた。

旧友のまなざしが眩しい、夜明け

翌朝。まだ薄暗い早朝から彼女と再び待ち合わせ、帰りの新幹線までの時間、彼女の住む街を車で案内してもらった。

彼女は準備中の新店舗を案内してくれ、それから頭のなかにあるたくさんのビジネスアイデアを教えてくれた。どのビジネスアイデアも、悩める人々が彼女に語ったり相談した悩みが、アイデアの種になっているらしい。

それから、彼女のお店へ行き、お店のカウンターで彼女と彼女のお客さんを交えて談笑したりもした。

「モモのところに行ってごらん!」とばかりに、その街の人が彼女のもとに駆け込み、今では彼女はその街になくてはならない存在になっている。そのことをよく実感する一日だった。そして、モモより彼女が凄いことは、悩みを現実のカタチで解決できる力を持っているということ。

彼女の経営者という肩書きや、それに対する自分自身の引け目のような感情は、彼女と話すうちに気にならなくなっていた。

なぜなら、彼女自身に目を向ければ、彼女の魅力はライフステージがどう変化しようと変わっていないし、その魅力の源泉は内面から滲み出る、本質的なものなのだ。

肩書きや職業、社会や家庭での役割なんて、彼女の一面に過ぎない。とても表層的で、これからも変わってゆく可能性の高い一時的ものだ。

互いのことをもっと深く知りたい、と思えたら、共通するライフステージや環境の話題がなくとも、語り合いたいことはたくさんある。

帰り際。お互い今は忙しくて、また当分会えなくなるだろう、と感じていた。けれど、また必ず逢える。そんな確信を抱きながら、笑顔で手を振る彼女と別れた。

「環境」の友だち、「ライフステージ」の友だち

彼女との再会を果たしたわたしは、
『女の友情でも、お互いの本質的な部分で繋がり合えることができたら、環境やライフステージを超えた「一生モノ」の友情関係は作れる』
ということに気づいた。

女性はむしろ、環境やライフステージの変化とともに変わりゆく友情を刹那的に楽しみながら、いつか「人生の友」がほんの数人でも見つかればいいのではないか、と思う。

「環境が作る友だち」とは、学校やバイト、職場で出逢った友人だ。同じ「場所」と「時間」を共有するから、恋愛、就職、人間関係といった同様の悩みや興味を共有し合える。

けれど同じ環境から卒業すれば共通の話題も自然と減っていき、最後には共有できるものが「思い出」くらいしか残らない。再会するたびに使い回しの「思い出」話ばかりなら、新鮮さも刺激もなくなり、マンネリになってしまう。

「ライフステージの友だち」は、受験、就活、婚活、妊活、育児、介護、趣味といった共通の「テーマ」で繋がっている友人だ。情報収集したり、今の悩みを共有できる。

ライフステージの友だちは、ライフステージが変わってしまえば、自然と疎遠になっていくことが多い。

本質で繋がる「人生の友」

環境が作る友だちもライフステージの友だちも、どちらも「一時的」で「表層的」な話題で最初は繋がる、という点で似ている。

「人生の友」は、もっと深い繋がりだ。人と人として恒久的で本質的な部分で繋がる友

ジャイアンは、たまたま身近にいたのび太が「人生の友」だった(のび太はジャイアンを人生の友と思っているかは分からない。)。現実社会ではなかなか簡単に見つからない。

時の流れに身を任せ、人生の友を探す

寄せては返す波のように、女性の人間関係は刻々と変化する。けれど、恐れすぎず、憂うことはない、と昔のわたしに伝えたい。

時の流れに身を任せ、その時々の新しい出逢い、様々な価値観、生き方に触れ、いま周りにいる友だちと楽しく過ごす。ライフステージの変化が大きい女性は、むしろこの変化をどれだけ楽しめるかが、人生を楽しむコツかもしれない。

変わりゆく友だちのなかから、いつか人生の友が見つかればラッキーだ。これから出逢うかも知れないし、これまでの環境やライフステージで出逢ってきた友だちの中にいるかもしれない。

人と深い関係を築くことが苦手なわたしは、ずっと共通の話題から踏み込めなかったから、そんなことに気づくのが遅くなってしまった。

「あの子元気かな?」と、今でも気になる子たち。今度ご飯に誘って、会いにいってみようと思う。いつもの思い出話や共通の話題だけではなく、彼女の人となりに触れられるような、そんな話が聞けたらいいな、と思う。


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