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コロナショックの今はM&Aのチャンスなのか

コロナショックで軒並み株価が下落している昨今。業界によって、地域によってまだら模様ではありますが、楽観悲観が入り混じる混とんとした状況です。安くなった今が、安く買えるチャンスだ!と考える方も多いかとは思いますが、なかなかそう簡単な話ではありません。コロナショックでのM&Aの現状についてお話しします。

M&Aプロセス自体が進まない

このコロナショックの状況下では、M&Aのプロセスを進めること自体に困難が伴います。今やM&Aのプロセスの多くはオンラインでできるようになりましたが、買い手にとって重要な部分、対象会社のマネジメントや働く人たち、生産現場や開発現場の状況などは、直接現地に赴き、現場・現物・現実を見極める必要があるからです。コロナ下で出張や移動もままならない状況では、それらの重要な部分がクリアできません。

もちろん、コロナショック前からM&Aの交渉を進めていたり、クロージング間近の場合など、先延ばしをすると尚更困難となる、あるいはお互い損をする場合などは気合でクロージングまで行ってしまうパターンはあります。

が、M&Aプロセスの初期~中盤の段階では、いったん見合わせるか、コロナ後のプロセス再開を見据えて、できることを粛々とやっておくぐらいです。実際、特に海外のM&Aでは以前からプロセスのオンライン化が進んでおり、デューディリジェンスの開示情報は全てバーチャルデータルームというサーバー上にアップされたり、マネジメントインタビューなども電話会議等で完了できたりします。直接会ったり、現場を訪問するなどのプロセスを除き、コロナ下でもできることは多いです。

価格で合意できない

加えて、価格で折り合いがつかない場合は多いです。上場企業の場合、株価は目に見えて下がっているので、買い手側はそれを見て安く買える、今が買い時だと思うのでしょうが、売り手側はそんな安い価格では売りたくない、損をしてまで売りたいとは思いません。これは、個人で株式投資をしている場合と同様で、今、含み損を抱えている株式は、何とか耐え忍んで再び株価が上がるまで持っておこうという人の方が多いと思います。

企業の価格を決める要素である、足元の数字や将来の成長率・利益率につき、買い手側はコロナで当面需要は戻らない、苦しい時期が続くから、と安い価格を提示しますが、売り手側は、コロナ後は回復して再び成長軌道にのる、だから高い価格でないと売らない、となります。いつのタイミングでも、売り手と買い手では想定する将来像やそれに基づき算出される価格にギャップがあり、その間で折り合えるかがイシューとなりますが、コロナ下ではそのギャップが大きく広がっている(将来の不確実性が高まっており、将来の見立てが大きく分かれる)、というところです。

火事場泥棒感がある

コロナウィルスは人類にとって大きな脅威で、国、政府、企業、大学等が一体となって取り組むべき課題です。それにもかかわらず、コロナショックで安く買えそうだから、と「おたくの会社も大変でしょう。うちが(安く)買いますんでどうですか?」とアプローチすると、「この非常時にけしからん、二度とうちの敷居をまたぐな!」となりかねません。上場している会社であれば、そのような感情で買収提案の受け入れ可否は判断できないので、拒否するとしても合理的な理由が必要ですが、非上場の会社であれば、絶対にイヤ!と感情で拒否され、二度とM&Aできない危険性があります。

救済するM&Aはある

もちろん、売り手側が困って助けを求める場合もありますし、廃業を検討している場合もあるので、そのような機会をとらえて救済するM&Aはアリと思います。売却可能性の情報、特に救済を求めているとか、廃業を検討しているなどといった状況はあけっぴろげにしない場合が多いので、取引のある銀行や証券会社経由で情報を入手したりアンテナを高く持っておく必要があります。ただ、このような場合も、厳しい状況にある会社をM&Aして、それで何が得られるのか、業績悪化がコロナでの一時的な影響によるものなのか構造的なものなのか、精査しなければなりません。

それでは今何をすべきか

それでは、今このタイミングで何をすべきでしょうか。既にM&Aのプロセスが走っているものについては、進められるところだけ進めておくか、いったん中止とするなど判断しなければなりませんが、まだ始めていない段階では、コロナショックで動きが少ない今こそ、お勉強すべきタイミングです。コロナ後の世の中はどう変わっていくのか、想定される変化に対応するために自社で何をすべきか、成長を実現するためにM&Aを行うとすればどのような領域か、などなど、在宅勤務でもできるリサーチやディスカッションを重ねておくことが大事です。M&Aのプロセス自体は、動き出すとあっという間に進んでいくものなので、そのプロセスで一番ボトルネックとなる、そもそもの自社の戦略や方針決定の部分の議論を進めておくことが、コロナ後にいち早くM&Aを再開する上で大切なことです。


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