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「ちからある手」【詩】

まだちからあるその手のちからを
だれもしらなかった わたしだけがしっていた
その手のちからはとくべつだから
たとえばすべてのおとなたちが
とうにあきらめたかんどうをにぎりしめ
その手のなかにはにじがある

ぬくいんや とあなたはいった
そうなんだ にじってあたたかいんだ
おさないわたしはおもったものだ
じめんになんねんものあいだ つきささったにじを
ひっこぬくしごとをつづけてきたから
そんなにも その手はつよいのか
その手にみちびかれたこともあるから
のこっていた わたしにだけ そのちからが

まだなにものでもないわたしには
そのぬくもりがひつようでした
ありがとうございました
たとえばその手は どれだけのちいさないのちをうばおうとも
びくともしなかった
いきてゆくには そういうことが
必要なのかもしれませんね

こんなにも耳をすましている
わたしにもきこえぬほどしずかに
しんでゆく そのふたつの手よ
このからだのどこかに残酷なぬくもりをのこして

 そうだ
 あくしゅしませんか

このすばらしい窓辺には
けさからにじがたっています

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