「追憶」【詩】
タバコの煙が目に沁みる
田舎の雨がやんだあとで
灰色の雲をしぼっても
もう雫は漏れませぬ
静まりかえったプラットフォームで
帰らぬ人を待っている
錆びた鉄の匂いがこみあげて
ダイヤグラムは乱れない
友だちよ
二人で部活の練習をさぼってかよった あの商店街はいま
小さな畑になったとさ
時間の旅路をかけぬけて
なにもかもが朽ちてゆく
悲しさだけが残された…… この町に
いまも暮らす
あいつも あのこも
空をいだいて
土に還る
(2022金澤詩人賞 入選作)
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