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【エッセイ】ターゲットとマーケティング

夏アニメでリコリス・リコイルが話題になっていますが、
本来、百合(ガールズラブ)というジャンルは
市場規模が小さいと言われました。
(今日の話題はリコリス・リコイルの話題ではありません)

リコリス・リコイル

14年前に電撃文庫に私が拾われた時の作品は、
百合もの(女の子同士の友情もの)だったのですが、
出版社と編集者が難色を示して、出版するにあたって、
ふたりの女の子のうち、どちらか片方の性別を変えてほしい、
と言われたものの、うまく変更できなくて、
別作品の『騎條エリ』の方になりました。

今も百合というジャンルは、
市場が小さいと思われていて、
百合を前面に出した作品を企画すると、
クライアントに難色を示されます。

だから、主役が女の子しか出てこない作品でも、

ラブライブ!はアイドルもの、
ウマ娘はスポ根もの、
まどか☆マギカは魔法少女もの、

と作中に百合要素はあっても、
百合と宣言してしまうと、購買層が小さくなるので、
別ジャンルのようにカモフラージュしている
のです。

週刊少年ジャンプのマンガで、
BLっぽい要素があっても、
週刊少年ジャンプの作品は少年マンガ!
と言い張るようなものです。

そんなわけで、
自作「ゆりごはん!」はタイトルを付けるときに
かなり迷いました。

上記のような理由から、
「百合」と明確に宣言してしまうと、
市場規模が小さくなるので、
当初はタイトルに「ゆり」という言葉を
あまり入れたくなかったのです。

だから、「新米姉妹のふたりごはん」みたいな、
あくまでも百合を匂わせるぐらいの、
タイトルにしたかったわけです。

新米姉妹のふたりごはん

ただ、これも問題があって、
よほどセンスがいいタイトルではないと、
なかなか買い手に伝わらないという弱点があります。

「新米姉妹のふたりごはん」も、

「姉妹」「ふたり」

と「百合」を妄想させるキーワードが入っています。
実にうまいタイトルです。

そんなわけで、
いろいろと悩んで編集さんとも相談した結果、
逆に、新興レーベルということもあり、
まずは、百合好きの人たちに確実に届けよう、
ということになって、「ゆりごはん!」という、
タイトルに決定しました。

ゆりごはん!

売り手が届けたい層に、
届かない作品ほど悲劇はありません。

例えば、中華を食べたい人に、
和食を提供したら評価が下がります。

同人誌でも「イチャラブ」だと思って期待して読んだら、
「寝取られ」だったと読者から激怒したコメントが
ついたなんて話があります。

なので、この商品を誰に届けるべきか、
明確にしなければいけません。

リコリス・リコイルも、
当初は『ガンスリンガーガール』のように、
ハードな世界観の物語の予定が、
今の視聴者には、ハードな作品は求められていない、
ということで、明るい作品に方向転換したそうです。

ガンスリンガーガール

これもまた、視聴者が何を求めているのかを明確にして、
そこに向けて作品を提供している
わけです。

ゆりごはん!も同じように、
どういった読者に向けて読んでもらうかを
意識しながら書きました。

・ライトな百合が好きな人たち
(友達以上恋人未満くらいの関係)
・電書なので気楽に読みたい人たち向け
(なるべく作中でストレスを与えない)
・ごはんものなので頑張って読みたくない
(一人称でひらがな多めで、ライトに読める)

それ以外にも細かい工夫をたくさんしました。

逆に『アサルトリリィ~電撃新潟奪還戦』は、
情報をこれでもかというくらい詰め込んでいます。

それは「アサルトリリィ~電撃新潟奪還戦」は、
そもそもアサルトリリィファンしか読まないし、
アサルトリリィファンの方々の多くは、
情報が多いほど喜んでくれる
からです。

アサルトリリィファン以外の方が読んでも、
たぶん情報が多すぎて理解できずに、
置いてけぼりでつまらなく感じると思います。

アニメも相当内容を詰め込んでいますが、
それはアサルトリリィファンに向けての作品なら、
正解なのです。

昔のように自分が描きたいものを
優先するのではなく、
自分が届けたい人たちが、
何を求めているのか、
どうすれば喜んでくれるか、
どうすれば届けられるかを、
意識しながら書きました。

この考えがマーケティングです。

私も勘違いしていましたが、
つくった作品をどう売るかだけが、
マーケティングではありません。

作品をつくる段階で、
すでにどういった層に向けてつくるか、
その層が何を求めているかを、
明確にしていく必要性があります。

逆を言えば、私のゆりごはん!は、
大人っぽい読み応えのある話や、
昼ドラのようにドロドロした恋愛を、
読みたい人たちからしたら、
全く面白くなく見えるでしょう。

ただ、そういった人たちに向けては、
売っていないし、
ゆりごはん!の表紙やタイトルを見て、
そういった層が買うことはないでしょう。

一方、たくさんのお客さんに売ろうとすると、
いろんな要素を入れなければいけなくなります。

アクション要素・ミステリー要素・恋愛要素などなど、
いろいろとごちゃごちゃした結果、
全てが中途半端な作品になることもあります。

あるいは、中身はライトな百合ものなのに、
あたかも肉体関係まであるような
ハードな百合ものっぽい表紙だったら、
買い手が変わってしまいます。

そんなわけで、
ターゲット層を明確にして、
その人たちが何を求めているかを、
明確にすることって大切だなと思いました。

過去にラノベ作家として挫折して以来、
今は売れるものをつくろうという意識は、
強くあります。

5年以内にリコリスのような大ヒット作品を
つくるべく精進と挑戦を重ねます。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。






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